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それでも、やっぱりチェンが好き

「やっぱり猫が好き」というドラマをご存じない世代の方も多いのではないかと思う。若き日の三谷幸喜も手掛けた一話完結のショートコメディ。ポップで明るくテンポがいい名作ドラマだったのだけど、その空気感に近い雰囲気をもった選手…それは、マリーンズで言えば、チェン・グァンユウだと思う。厳しい勝負のプロ野球選手だもの、いろいろと大変なことは日々起きるし、今年の立場もなかなかに大変。そもそも意外と、いや、かなりの苦労人で激動の野球選手生活を送っているけど、そんなことは感じさせない、関係ない。いつもニコニコ、チェンチェン大丈夫。どれだけの挫折があっても笑顔を絶やさない。

僕はそんなチェン選手が大好きで、マリーンズに来て以来ずっとファンだ。トップ画像にしたチェン選手から直接いただいたサインボールは本当に大切な宝物。各種人気投票はチェンに投票し続けているし、個人的にはファンや首脳陣からやや過小評価されている選手の一人だと思っている。去年だって、中継ぎ登板に限れば防御率は3点台前半に収めていたし、勝ち負け問わず、ロングリリーフも先発も行けることを考えると、もっと評価されて良い選手だと思っている。マリーンズに足りない左腕でもあるし。

プレイヤーとしてのチェン・グァンユウ

あまり語られることがないけど、投げっぷりもいい。ランディ・ジョンソンばりに…というと大げさだけど、膝を高く上げて一気に沈み込み、左打者の外角、右打者のインコースにストレートやスライダーをクロスファイア気味に投げ込む姿は、かなりカッコいいと思っている。

ただ、素晴らしく高い評価を受けられないときがある理由も、理解できないわけではない。どちらかといえば、コンロトールが悪い部類に入ると思うし、ピンチの時に動揺していることが顔に出てしまっていることも、たまに見かける。そして、残念ながら外国人枠の縛りも受ける。チェンに任せればチェンチェン大丈夫!…というわけにはいかない展開になる時もたしかにあるし、たくさん良い補強ができた時は、「中々良い選手」では外国人枠を使うには物足りない…と言われるのも、まあ、わかる。わかる…。

それだけわかっていながら、そもそも僕はなぜ、チェン選手のファンになったのだろう。なんで僕はこの選手をこんなにも好きなのだろうな…と考えると、結局のところ僕は、「チェンの物語」が好きなのだと思う。

波乱万丈な「チェンの物語」

冒頭にも書いたけれど、チェン・グァンユウという選手は、いつも笑顔でニコニコしている半面、実はかなりの苦労人で、そしてチャレンジャーだ。台湾でのチェンはまさに英雄。国際代表のエースでもあるし、ラミゴとの交流戦に行けば必ず前面に出して取材を受けている。ただ、NPBでのチェンの野球人生はまさに波乱万丈。

そもそもNPBに来た経緯から、当時まだ台湾の国立体育大学生であったところ、シーズン中は休学するという形でベイスターズに入団している。そんなチャレンジをしたチェンを待ち受けていたのは、翌年の戦力外通告からの育成落ち。しかも、そのシーズンにトミー・ジョン手術を受けなければならなくなってしまった。この年もまた戦力外になり、なんとか再契約を結んでもらうも、実績のない怪我持ちの選手を何年も見てもらえるはずもなく、結局自由契約に。2011年に大学を休学してまで日本に来たあと、2012年、2013年、2014年と、実に3年連続3回にわたり戦力外通告を受けたわけだ。

そこで気持ちが折れてもおかしくないと思うのだけど、チェンがすごいのはここから。何度挫折しても、チェンチェン大丈夫…とばかりに、千葉ロッテマリーンズの秋季キャンプで入団テストを受け、見事契約を勝ち取る。

もう、この経緯をしった時から興味津々だった僕だけれど、実際に写真で、そして動いている映像を見た時に、一発でこの選手は応援したい!となってしまった。これだけ波乱万丈な中NPBを選び続けているからには、よほど強い気持ちの持ち主で、苦労した分落ち着いた選手なのだろう…と思いきや、あのベビーフェイスに、あの笑顔、そしてあの底抜けに明るく人懐こいキャラクター。今ではかなり日本語を話すチェンだけど、それでも最初は全く知らない国だったはず。異国の地で、何度も何度も挫折して、それでもあんな風に、楽しそうに野球をしていられるものだろうか。

そしてマリーンズへ

日本に来てからも、ほとんど日本人選手に近い扱いの中頑張っている。母国台湾のラミゴと秋に試合をしている兼ね合いもあるけれど、他の外国人選手と違いシーズンが終わっても秋季練習に参加している。春キャンプも、初日から日本人同様仕上げてきている。ファンサービスにもニコニコしながら参加するし、なんと前向きにNPBに取り組んでくれているのだろうと思う。ついでにいうと、2015年のシーズンオフに、元々休学して日本に来ていた大学も無事卒業している。立派だ。

マリーンズに来てからの活躍は皆さんご存じの通りで、1,2軍を行き来することが多い選手だけど、腐ることなく、勝ちパターンでも負けパターンでも、先発でも中継ぎでも、いつでも登板する。先ほども書いたけれど、確かに、何か決定的な長所がある選手ではないし、ちょっと頼りない部分もある選手だ。でも、こんなにも成功してほしいと思う選手を僕はしらない。職場や、周りにもいると思う。いつも笑顔で朗らかな人は、人気者である反面、あまり頑張っていないように見えたり、大した苦労をしていないように思われてしまうことがある。でも、みんな、何かを抱えて生きている。誰だって楽をしてここまでこられたわけではないと思う。苦しくても笑っている人は魅力的だ。表は笑顔だけど、裏では本当に努力をしている。

今年は近年になく積極的に外国人を補強したので、全員がかみ合ったときは、チェンの出番はかなり限られてくるかもしれない。それでも、ずっと逆風を笑顔で歩き続けてきたチェンのこと。左腕であることも含めて、長いシーズンを戦っていれば絶対にチェンの力は必要になる時がくるし、その時まで今年も笑顔を絶やさず頑張ってくれると信じてる。

そう、いろいろあっても、やっぱり、やっぱりチェンが好き。


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