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悩める隼、ちはやふれ

まずはこのマリーンズ公式動画の2分36秒くらいから見ていただきたい。佐々木千隼選手の登場シーン。

注目していただきたいのは登場曲だ。多くの方がご存知かと思うけれども、千隼は、少なくとも直近で登板していたシーズンまで、パフュームのFLASHを登場曲に使っていた。

https://youtu.be/q6T0wOMsNrI

この曲である。これから復活したシーズンも同曲を使うかはわからないけれども、この曲を使っていた理由はわかる。この曲は、映画「ちはやふる」の主題歌として使われ、「ちはやふる」というフレーズも何度もでてくる。ちょうど千隼が入団した頃に映画がはやっていた事もあって、本人なのか、広報なのかの発信で決まったことと思う。(なお、最初は涌井が選んだSMAPの「オレンジ」を使用。投手が「さよなら」が連呼される歌をバックに出てくるのはどうかと思っていました…)

前置きが非常に長くなってしまったけれど、千隼には、この曲が本当に似合うような、象徴するような選手になって欲しいなと心から願っている。

悩める隼、佐々木千隼

桜美林大学のエースとして、外れ1位という形ではあるが5球団競合の末ドラフト1位でマリーンズに入団した佐々木千隼。彼の苦悩は、初めて参加した春のキャンプから既に始まっていた。キャンプで、となりのブルペンで投げていた投手のストレートをみて、自分との質の違いに驚き、何かを変えなければ通用しないと考え少しずつ模索を始めていたという。(となりで投げていたのは内竜也という噂も)

大学生の頃からそうだったのだけど、千隼のストレートは、少しシュート回転する。目に見てもわかるくらい、ギュっと少し右に曲がる。それもあって、左打者のインコースを突き切れないことにも悩んだようだ。

実際には、ルーキーイヤーの開幕と同時にローテ入りし、初勝利をあげるも、その後しばらく負けが続き一度2軍落ち。秋頃に上がったあとは、負けなしの登板を続け、4勝7敗 防御率4.22でシーズンを終えた。評価が分かれる微妙なところではあるけれど、大卒の1年目として、まあまあの結果なのではないかと僕などは思ってしまった。2017年というシーズンはマリーンズが極端な貧打にあえぎ、泥沼の連敗を続けた年でもあったし、なかなか投手が勝ち星で上回るのは難しかったと思う。

ただ、本人はそうではなかったようで、謙遜のし過ぎなのか性格なのか、比較的ネガティヴなコメントが多く、またストレートについてはずっと悩み続けていたように思う。

隼の苦悩、その先に

更に2年目となった昨シーズン、千隼は右肘痛になやまされ、それでも我慢しながら投球を続けていたが、結局手術を行い、2018年シーズンは一軍登板機会がなかった。2019年の開幕を控えた今も、少しずつ状態を上げつつあるがまだ実戦登板はできていない。

この期間、僕は何度か浦和で千隼の姿を見かけてきた。手術を終えた直後くらいは、本当に見ていてもしんどそうだな、というか、暗い表情が目立ったように思う。地道に下半身強化や体力づくりに取り組みながら、忸怩たる思いもあったのではないかと思う。

ただ、見ていてそんな姿が変わったと思うのが、昨年の夏の終わりから秋頃ろうか。キャッチボールを再開することができるようになってから、みるみる嬉しそうな表情を見られるようになったと思う。膝立ちの状態での短いキャッチボールから始めていたのだが、ボールを持っているだけでうれしい、投げられることが本当に嬉しい、というような表情を見せていた。

きっと、いろいろと思い悩むタイプなのだと思う。経歴的にも、投手に専念したのは大学に入ってからだったと記憶しているし、高い評価を受け始めたのは大学3年生頃からだったと思う。例えば清宮くんのように若いころからずっと注目されていたわけではなかったと思うので、急に周りの環境が変わって自信を失っていた部分もあったのだと思う。

ただ、2018年が1年間上で投げられなかったことは、千隼にとって良かったのではないか…というか、それが良かったことにしていってほしいなあ、と思っている。とにかく野球ができる喜び、そちらにフォーカスできるようになっていたら嬉しい。

佐々木千隼、ちはやふれ

ただの感想文みたいになってしまったけれど、基本的に千隼は、考えすぎてしまう選手なのではないかな…と、なんとなく感じる。

頭を使って野球をすることは良いことだと思う。ただ、けがを経た時、投げられなかった時のしんどさを思えば、これから投げられるようになる過程はきっと前を向きやすいと思う。もちろん、焦らないでほしいし、いくらでもじっくり時間をかけて復活してほしい。思うのは、復活するにあたって、野球ができる喜びを感じて、とにかく楽しんで、楽しんで、思い切り投げてほしいと心から思っている。

「ちはやふる」という言葉は、「荒々しい」様を表す枕詞だ。もっと、ちはやふる佐々木千隼を見てみたい。いろいろと頭を使うことは良いことだけれど、もっと、自由に、楽しく、荒々しく。

せっかくプロに入れたのだ、そして、素質は誰もが認めるところなのだ。フォームもカッコいいし、シンカーもスライダーもいい時の球はほれぼれする。あとはもう、いちファンとして、粗削りでいいので、野球を楽しむ千隼が見たい。

キャッチボールを再開できた時のあのニコニコとした笑顔で、マリンのマウンドに隼が再び降り立つ日を、ずっと待っています。

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