父親から昨日電話が掛かってきて、
　「お前が昔してくれた話を、
　　今頃感心して頼もしく思っている」
　とか言われて驚いたんだけどさ。

　すっかり忘れてたけど、
　確かに人生の要所要所で私が口にしそうな言葉だったし、
　せっかく思い出させてもらったから記録しておく。

　今心配しているような事は大抵起きないから、
　心配するだけ無駄だよ。
　本当に困る事は思いがけない角度からやってくるし、
　驚こうが困り果てようがその場で対処するしかない。

　ああホンマに。

　父親が一週間失踪しようが、
　戻ってからアルコール依存症になろうが、
　その結果失業を繰り返そうが、
　その結果母親が宗教にハマろうが、

　そう呟いてきたってか、
　ざっくり並べ上げた時点でもはや、
　恐れるものなどほとんど残ってない。

　と言うより両親からは、
　自分たちの言動に所業そっちのけで、
　私がまともに見えないしクズにしか思えない事こそ、
　心配され続けて、
　私自身も私が誰より恐ろしかった、
　という事実が、

　無駄と言い切っちまうのも切ないが、
　無駄だったよな明らかに。残念ながら。

　あと今頃頼もしく思われたからって、
　許さないし忘れないから。
　そこはお互いが人間である事に対する、
　基本的な礼儀だから。

　配偶者を元気付けられないかと思って、
　上の話をひと通りしてみたが、
　「俺が心配している事はほぼ高確率で起こるけれど、
　　それに対応できる余裕が無くて何も出来ないから、
　　ストレスで心身が壊れるばかりなんだ」

　と逆に悲しげな暗い顔になられた。
　残念だな。そりゃ処置無しだよ。私には。

　ってかすげぇな先読み能力。神様かよ。
　いや。神様なんだな。そりゃ生きづれぇや。

　人間の不確定性、つまり希望が無い。