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要はおっさんの妄想だよ(映画『NINE』)

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 「ミュージカル好き」
 「ミュージカル映画好き」
 だと名乗り合い、
 お互いを仲間のように思い合っていても、

 系統が全く異なる場合があるから気をつけろ。

(文字数:約1800文字)



どの出演者も省けない

  『NINE』
    2009年 アメリカ
    (原案:フェデリコ・フェリー二
        『8 1/2』)
    ロブ・マーシャル監督
    ダニエル・デイ=ルイス、
    マリオン・コティヤール、
    ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、
    ファーギー、ニコール・キッドマン、
    ケイト・ハドソン、ソフィア・ローレン

  一緒に映画館に観に行った友人たちも、
  私蔵のDVDを貸し合った人たちも、

  私の周りの女性陣からは、
  えらいこと評価が低い作品で悲しい。

  「歌やダンスシーンはすごかったけど……」

  それで良いんですよ。
  それが全てですよ。
  私もそこにしかハマってはいませんよ。
  ってかそこだけにどハマりしたんですよ。

  「話はちょっと難しいっていうか……、
   意味が分からない。
   結局この人何がやりたかったの?」

  内容なんかどうだっていいんだよ!
  要はおっさんの妄想なんだから!


ざっくりまとめます

  スランプに陥った映画監督の、
  脳内に結ばれそうで定まってくれない、
  映画の断片です。

  妻に愛人に、
  長年勤めてくれる美術監督に、
  友人であり大女優、
  それぞれを脳内で華やかに、
  歌い踊らせるのですが、
 
  現実の女性たちはそれぞれに、
  もちろん人間です。

  監督の妄想通りになど、
  振る舞ってくれないし、
  そもそも他人の妄想になんか、
  付き合っていられない。


だからとにかくミュージカルだよ

  出色なのは、
  ブラック・アイド・ピーズのボーカル、
  ファーギーが演じる海辺の娼婦。

  悪ガキたちで小銭を出し合って、
  彼女からストリップを見せてもらった、
  当時の年齢が、
  タイトルの『NINE』(9歳)であり、
  フェリーニ監督の『8 1/2』(8歳半)なわけです。

ガキのくせにイタリアな野郎ども
愛を知りたいってのかい?
サラギーナが教えてやろう
女を幸せにしたいんなら
お前らが生まれてきた場所を拝むんだよ

サラギーナ(ファーギー)『Be Italian』歌詞を偏光訳

  そりゃあもう彼女の姿が、
  少年だった日の監督の心に脳髄に、
  これでもかってほど突き刺さったんでしょうよ。

  愛人には彼女と同じ位置のホクロをつけるし、
  妻には最終的に脳内でストリップさせている。

  あと映画版だけに登場する、
  ケイト・ハドソン演じる、
  アメリカ娘が面白い。

  映画の内容や、
  監督が込めた思いなんざ、
  さっぱり気にしちゃいない。

  ただイタリアンスタイルに惹かれて、
  陽気な憧れで近付いてくる。

  彼女が歌う『Cinema Italiano』は、
  とにかくイタリア映画が大好き!
  ってナンバーで、

  予告編でも流されまくってたから、
  彼女がメインに思ってる方も多いでしょうが、
  何せイタリア人ですのでね。
  脳内で皮肉った明るさ華やかさなんですよ。

  そんなことよりケイト・ハドソンが素敵。
  鑑賞後の私はこの曲が、
  どうにか歌えたくて踊れたくてしょうがない。


もちろんバチが当たるよ

  決まってんだろ。
  
  目の前の人の気持ちなんぞ思いやらず、
  好き勝手に妄想し続けた野郎の末路なんぞ。

私から、
全てを奪って、貪って、食らい尽くして
それであんたに何が残ったの? 
笑っちゃうわ 何にも無いじゃない!

ルイザ(マリオン・コティヤール)『Take it all』歌詞を偏光意訳


  男性には底冷えするほど怖かろうし、
  女性には小気味良いと思ったんだがなぁ……。

  女性なら、とか、
  ミュージカル好き、だからと言って、
  誰もが同じようにハマるとも、
  限りはしない事を実感した。

  まぁ私も小説家として、
  この監督とは、

  社会的評価や地位は別として、
  それほど大きな差が無い人間のように、
  感じているので、

  この映画をより心に沁み入らせるのは、
  もしかするとそうした、
  創作者的要素なのかもしれない。

以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。

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