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1週目:まずはカンニング防止策

 この記事は無料マガジン
 『偏光点字技術』中の
 「偏光触読まとめ」に添付します。

(文字数:約2000文字)



日本語の特性

  実は国語学者も小説家も、
  視覚障害者も点訳ボランティアも、
  日本語を扱う誰しもが、
  日頃それほど強くは実感していない要素と思うんだが、

  日本語は諸外国語の中でも群を抜いて、
  目を通しやすい言語である。

  正式に計測された研究結果を見た事は無いが、
  A4サイズの紙1枚にびっしりと、
  任意の文字列が印刷されていたとして、

  「大体どういった内容が書かれてあるか」
  を掴み取るまでの時間は、
  主に外来語を表すカタカナに、
  異常なほど多種多様な表意文字である漢字も手伝って、
  おそらく相当に早いと思われるわけだ。

  更に小説などであれば年齢・性別に応じた役割語に、
  手書きの文書であれば字の巧拙や漢字の知識等で、
  社会的身分や知性度合いまで推し量られてしまう。

  しかし注意しなくてはならないのは、
  理解しやすいわけではない

  つまり決して長所ではなく、
  同時に欠点でもあるのだが、
  数秒でさっと目を通せてそのまま、
  分かった気になってしまいやすい言語でもある。

  全体的な合意だけはなんとなくで形成されやすい、
  と言ってしまってもいい。


何をいきなり大上段に構えたかって

  点字翻訳のボランティアをやり始めて、
  まず私が戦慄したのは、

  前項で挙げた日本語の最大の特性、
  目の通しやすさが、
  点字においては一切通用しない事だ。

  一行ずつ一文字ずつを読み進めなくてはならず、
  指に触れない文章は存在を意識されてもいない。
  漢字の点字も実は存在するが、
  一般書には使われない。

  もはやこれは音に意味こそ同一だが、
  「触れられる機会」が圧倒的に異なる、
  別の言語文化だと認識してもいいくらいだ。

  読書好きな視覚障害者にとって、
  「文字に飢えている」感覚は、
  ごく普通に身体的なものとして存在し、
  晴眼者の想像をはるかに超えているわけだ。

  だからと言って気の毒に思ったり、
  「助けが必要だ」と感じたりして、
  無償奉仕してきた私ではないが。

  つまり先ほど述べた日本語の長所ではなく欠点、
  分かった気になってしまいやすさ、
  にさらされる機会が、
  日本語を母語としていながら極めて少ない。

  「この大学教授、思いっきり学生見下してる感じで、
   思想というより日本語自体がおかしいんですけど、
   どうして人気あるんですか?」
  みたいな事が、

  一字一句を読み込んでいたなら、
  恐ろしいかな伝わってしまったりするわけだ。

  目が見えない人にも伝わり、
  しかも面白がってもらえるならば、
  その文章は情報を伝達する能力において、
  相当に優れていると思う。


さて教科書はこんな感じ  

  教科書の内容をある程度読み込んでから
  (QRコードを読み込んで音声でも聞けます)、

  バインダーを机の上に、
  目を閉じて点字部分は見ないようにして開く。

  これを今のところ平日の、
  約1時間ずつ進める予定です。


まずは感覚に翻弄される

  以下、1週目に翻弄された事3点。

  1.知識が先に出てしまう

    点訳ボランティアを10年以上続けていたので、
    点字自体の知識は有しているものだから、

    真っ先にあいうえおの
    「あ」と認識してしまうんだが、
    ここはなるべく「左上の点一つ」という、
    感覚に意識を持って行った方がいい。   


  2.思わず目を開けたい欲求に駆られる

    これがものすごく駆られる。
    開けたら確認できちゃうから尚更だろうな。

    今週触読した内容は、
    ・一行を上下に逃げずにたどれるか
    ・現在の行を認識して次の行に進めるか
    ・空いている箇所は無いか
    ・何文字分空いているか

    くらいのものだったけどそれでも、
    合っているかどうかの確認を、
    その時その場でしたくなる。

    人によってはアイマスクつけるらしいけど、
    私めんどくさいのでそのまんま。
    めんどくさいと「やろうかな」って思ってすぐ、
    手元に取り出さなくなっちゃうし。


  3.おそらく視覚障害者とも違う感覚

    まずは1ページ全体の行数が知りたいので、
    一行ずつ手元に降りて行くと、

    身体に近づくにつれて点字がでかくなる感じ。

    そんなわけがない。
    見てはいないけどそれこそ錯覚なんだ。

    本来の身体感覚としては、
    「腕が近づいて指先が狭くなってきた」
    になるはずのものが、
    これまでの視力を使った経験により補正される。
    その補正いらんのだが。

    慣れたらなくなると思うけどね。

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