令和4年度 京都大編入試験(匿名報道の是非の問題) 講師解答例

「犯罪の報道は、犯人や被害者が特定されないようにして行うことを原則とすべきである」 という主張について、賛成と反対それぞれの立場から、理由を挙げて多角的に論じなさい。    (京都大学令和4年度 63点)
 
以下の合格者の合格者再現答案構成とヒアリングを元に講師が書きました。
合格者再現答案構成+合格者の答案への感想+答案が付きます。
 
答案構成 
1.はじめに
・報道とは、日本国憲法第 21 条表現の自由の中核をなす
・少年法が改正され、18,19 歳についても特定少年と認定されれば実名報道が可能になるなど、犯人を特定できる形での報道の機運が高まっているといえる
2.賛成意見
①プライバシー権の侵害
・更生や社会復帰の妨げになる→前科とはプライバシーの中でも最も尊重されるべき (例)前科紹介事件
②メディアスクラムの恐れ
・加害者家族へのバッシングや、被害者家族への過度な取材
③誤った情報のリスク
(例)松本サリン事件
・加えて、推定無罪に反し、その後の社会生活に影響
3.反対意見
①知る権利に適う (憲法 13 条)
加えて、刑事手続きの透明性の確保にも
(例)憲法 31 条法の適正手続き、33 条令状主義
②一般予防
・犯罪の報道が具体的になることで、一般社会に対しての抑止効果を期待  (例)犯行の残虐性や、刑罰の重さを広報
③被害者の処罰感情に適う
・被害者もしくは被害者家族は、犯人が裁かれ非難を受けることにより、処罰感情を充 足させる
4.まとめ
・私見としては、犯人や被害者が特定されないような犯罪の報道には反対 ・前科は守られるべきプライバシーだが、国家権力を監視する意味でも、犯罪報道を抽象 化することは望ましくない
・メディアスクラムは代表取材等の対応で緩和すべき
・報道を誤るリスクに対しては、損害賠償を容易にする法整備で対応

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