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要らぬ妄想

女の私だが、常日頃から、男として「どっちの女がいいかな」と、要らぬ選択妄想をするクセがある。

一から説明します。そのクセに気付いたのは、海老蔵の結婚の時。「なるほど。さすがは天下の海老蔵。小林麻央ちゃんを妻にするとは完璧な選択じゃないか。麻央ちゃんって、地震や火事なんかの一大事が起きて、一時的に連絡がつかなくなってヤキモキした海老蔵がハアハア言って家に駆け込んで来ても、全くテンパらずに、子供を抱きかかえて『お帰り。恐かったよぉ』って、さして恐いと思ってもなさそうに、悠然と微笑みそうじゃない?そのいい感じの鈍感力と強さでもって、日常的にも海老蔵を問い詰めなさそうだし。ちょっとおかしいなと思うことがあっても、『なーに言ってんだよ。麻央以外に俺が気持ち持って行かれると思う?バカだなあ!』と、海老蔵に頭を撫でられれば、『そっか。そうだよね』って爽やかなテヘペロで終結しそう。

これがお姉ちゃんの方だったら、きっと大変だよ。毎日毎秒、ブログをチェックして、『今どこにいるの、今何してるの、そして愛してる人は誰ですか?(⬅こんな歌詞の薬師丸ひろ子の歌、ありましたね)』ってことで頭が一杯になり、ついには海老蔵の泥酔時を狙ってスマホを見るね。案の定、それによって色んな事実を知ってしまっても、何も知らないフリして、『行ってらっしゃい♥』って、はちきれんばかりの笑顔で毎朝送り出してくれそうじゃない、なんかもう重たいわぁ。あーでもなあ、そうは言っても、別枠・米倉とは外でたまに飲みたいな。飲んだ後は、ホロ酔い気分で麻央の待ってる家に帰って、フカフカの布団に大の字で寝るんだ」

そうまくし立てた私に、友人が「ねえ、前から思ってたけど、なんで芸能人の結婚・離婚を語る時、常に男側に立って考察すんの?いっつもそうだよ。あなた、実は男なんじゃないの?」と言った。確かにそうかも、、、

そう言われてみると、このクセは芸能人に対してだけではない。先日「どっちの女がいいかな」と悩んだことを思い出した。

朝の通勤電車。目の前に、はっとするような美人が座っていた。年齢的には30代後半といったところで、そう若そうではないのが、またいい。エルメスのベージュのバッグを膝に乗せ、取っ手に添えられている手元は、上品なフレンチネイル。髪の毛は、艶々のダークブラウンで、ミランダ・カーみたいな素敵なカール。そして、モンクレールのネイビーのダウンを完璧なフォルムで着こなしていらっしゃる。切れ長の目に、すっとアイラインが引かれていて、リップは、これまた完璧な大人ベージュピンク。なんて知的で素敵なんでしょう。しかも、彼女が立ち上がり電車を降りる時、ふわっと漂ってきた香りがまた、得も言われぬ素晴らしい香りで、私は瞬間的に、清々しい草原にワープした。こんな女の人が、仕事を終えた後、家で鎧を脱いでスウェットなんか着て、ミランダ・カー・カールをひっつめて、オープンキッチンでおつまみなんか作ってくれたら最高だな、と妄想。

一方で。その日、家に帰りポストを覗くと、通っているエステの担当お姉さんからのお手紙が入っていた。仕事とはいえ、私の食生活を常に気にかけ、励ましてくれる、若くて可愛い、少しぽっちゃりした素朴な子だ。ほんのちょっと、爆飲・爆食を控えたと申告しただけで、大きな瞳を見開いて誉めてくれる。そして、エステに行った1週間以内に、必ずお手紙でフォローしてくれる。この、少したどたどしい文字、蛍光ペンでの強調、暖かいコメント…。グッと来る。

「女のエステ通いは、男の風俗通いと似ている」と言ったのは、確か柴門ふみさんだが、極めて的を得ていると思う。行けば毎回歓迎され、気持ちが良くて、可愛い女の子に「あなただけよ」と錯覚させられる。「お金を払ってるから優しくしてくれるんだ」という、身も蓋もないやるせない気持ちと、でも、自分だけは少し特別扱いされてるんじゃ?という勘違いとが混ざっている、あの感じ。

うーん、昼間見た草原の香りの完璧美人と、エステの丸文字女の子。どっちか決めろと言われても、俺は決められない…。やっぱり、海老蔵じゃないけど、草原の香り美人と、薄暗いバーで仕事の話やスレスレの嫌らしい会話を楽しみ、家に帰ったら、エステの女の子にお茶をいれてもらって風呂に浸かり、フカフカの布団に寝たい。

だから、冒頭で「選択妄想」と書いたけど、どっちか一人を選ぶことは出来なくて、シチュエーション別に選択したい。……って、こういうことを言うと、必ず女の人はキーキー言うし、女うるせえ!とも思うけど、個人的に好きな男の人がこんなことを言ったら、私もキーキー言う。

男なのか、女のか、分からなくなってきます。

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