橙色に頬をぶたれる
真理子の部屋の窓からは、東京タワーが望める。と言っても、目の前を通る首都高の急なカーブに、見事に遮られている不完全な姿。けれど、真理子はこの景色を手に入れる為に、かなり無理をして、毎月の家賃を払っている。東京タワーの灯りは、真理子にとっては、神様みたいな、お守りみたいな存在で、寝る前にその姿さえ確認出来れば、静かにカーテンを閉めて、その夜をそっと終えることが出来る。
エッフェル塔は洗練され過ぎた冷たい白い光、スカイツリーは下町っぽさが隠せない紫色の光で、そんなに好きじゃない。