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明暗色の世界を、音と情熱が迸る。 第2回企画展を彩る、森啓輔の制作背景に迫る。

今年の春、ヘラルボニーが岩手県盛岡市に拠点を構えた「HERALBONY ART GALLERY」。次なる企画展を彩るは、三重県「希望の園」に所属するアーティスト、森啓輔(Keisuke Mori)さんだ。

森さんは、レコードジャケットをモチーフに長年油彩を描き続けている。丁寧に練られた油彩絵具特有の色彩感と、明度差の激しい画面作りが特徴的で、国内外の展示会で確かな評価を得続けている。

企画展では実物のカンヴァス、全11作品を披露。配信サイトで刹那的に音楽が買えてしまうこの時代に、ジャケットに写る人物を丹念に描いた迫力ある作品群は、私たちがいつの間にか忘れてしまった部分を刺激し、心の奥底を揺さぶる。

今回のインタビューでは、希望の園・村林理事長が立ち合いの下「森啓輔」という作家の輪郭を辿る。

[インタビュー・執筆:玉木穂香]

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全長1.5メートルを超える巨大なカンヴァスに描かれた3作品

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希望の園 森啓輔さん
目次▽
・「油絵」を極め続ける ずっとこの先も変わらない
・ジャケットの人物だけでなく、レコードの「音」も作品に練りこまれる
・僕は絵を描く人です

——6月19日から「HERALBONY GALLERY」で森さんの原画展が開催します。まず展示の感想を教えてください。
森「嬉しいです!コロナウイルスが落ち着いたら見に行きたいです!」

——今回は11作品が展示されているのですが、森さんのお気に入りの作品はどれですか?」
森「それは『誰かが誰かを愛している』です!」

——その理由を教えていただけますか?
森「描いている絵が上手だからです!」

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作家お気に入りの作品「誰かが誰かを愛している」

森さんが今回最も気に入っているというこの作品は、「描かれている絵が上手」という本人の言葉の通り、絵画的な技巧に優れている。例えば明度の低い部分が単なる「黒さ(暗さ)」ではなく「(右側の光源に対する)陰影」として表現されていて、画面全体の質感は均一でありながら立体感を示すことに成功している。人物の表情や仕草もウィットに富んでおり、見所の多い飽きない作品だ。

——たしかに、森さんの作品の象徴ともいえる、明るい色と暗い色が引き立つ作品ですよね。ちなみに森さんはどちらの色がお好きなのでしょうか。
森「明るい色と暗い色、どちらも好きです!」

——―森さんの絵は、単色の絵具の色を使うだけでなく、2色の色を丁寧に練り上げることで、森さん独自の色を生み出しています。言葉では表現できない色、名前のついた色、森さんの絵の中にある全ての色が、森さんは分け隔てなく好きだったんですね。色使いや塗り方について、森さんならではのこだわりはありますか?
森「使っている油絵具は、ジョージアンです!色は、明るい色と暗い色、2つの色を混ぜて作っています!」

——―ジョージアンを使われているのはどうしてですか?
森「それは、塗りやすいからです!」

——―森さんの絵は厚く色を塗っていることが特徴だと思うのですが、厚く塗ることがお好きなんですか?
森「色を厚くちゃんと塗らないと割れてしまうことがあるから!」

——―なるほど。森さんならではの工夫や考えの末に画材を選ばれていて、一番描きやすい塗り方として「厚く塗る」というスタイルにたどり着いた、ということですね。

ジャケットの人物だけでなく、レコードの「音」も作品に練りこまれる。

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昭和の名俳優・森田健作をモチーフに描いた「青春のバラード」

——―森さんの作品のオリジナリティは、何といっても「レコードジャケットをモチーフに描くこと」だと思います。描くレコードジャケットはどのように決めているんですか?
森「レコードのジャケットの選択基準・・・それは僕が選んでいるからです!」

——―自分で選ぶということを大事にされているんですね。ちなみに、以前は別のモチーフも描かれていたんでしょうか。例えば、動物や乗り物や食べ物など・・・
森「油絵具は最初、動物を書くことがありました!」

——―そうなんですね!今は描かれていないんですか?
森「今は動物の絵を描いていません!なぜなら今はレコードジャケットの人を描いているから!」

——―これから違うものを描いてみたいと思うことはありますか?
森「違うものを描くことはありません!!」

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——―絵を描いている時は、その音楽を聞いているのですか?
森「いつもレコードジャケットの絵を描いているとき音楽をきくことがあるんです!」

——いつも音楽をきいているんですね!
森「ここ(希望の園)で音楽を聴くことが、いっつもいっつもいっつもいっつもあるんです!!」

——本当に音楽が好きなんですね。その歌を口ずさんだりもするのですか?
森「音楽がないときは・・・自分で歌うことがあるんです!!」

——いつか私も森さんが歌いながら、絵を描いているところを見たいです!

今回の企画展では、作品のモチーフとなった実際のレコードジャケットも一部展示している。森さんの絵のモチーフとなる曲を聴きながら、鑑賞するのも楽しみ方の一つではないだろうか。

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企画展開催前にも関わらず売却された「無償の愛-Love Story-」

僕は、絵を描く人です

——それでは、ここからは森さんご自身のことについて教えていただきたいです。森さんの好きな食べ物は何ですか?
森「魚!」

村林理事長「うそつけーーー!(笑)」

森「魚料理といえば、揚げ物や煮物や焼き物が好き!」

村林理事長「うそつけ!肉ばっか食ってるじゃねーか!」

森「静かに!」

——(笑)お二人の掛け合いから絆の深さを感じました。森さんの趣味な何ですか?
森「僕の趣味は遊ぶこと。テレビゲームをすることと本を読むことです!」

——絵を描いている場所は今いる場所(希望の園)とご自宅のどちらになりますか?
森「それは、今ここいる場所(希望の園)です!」

——そうなんですね!お家で描いたことはありますか?
森「お家で描いたことは、ないんです!なぜなら、うちの中が汚れるから!」

——油絵具だとたくさん色が飛んだときに、掃除が大変ですもんね。

——森さんのご家族は画家として活躍する森さんをどう思っていらっしゃいますか?
森「僕の絵が飾ってある美術館に家族と行きますから、嬉しいです!」

——ご家族と見に行かれるのですね、素敵です!森さんの画家人生をご家族の方は誇りに思われているのではと感じます。

——それでは、これが最後の質問です。森さんは、自分自身のことは何と呼びますか?
森「僕は、絵を描く人です!」

——ありがとうございました!

今回アーティストインタビューにご協力いただいた森さん、希望の園の村林理事長、本当にありがとうございました。

「森啓輔展」は、「HERALBONY GALLERY」で開催中です。ぜひ「森啓輔」という一人の作家が描き出す、強烈かつダイナミックな世界観を実際のギャラリーでご堪能ください。

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