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文化財とデジタル化、そして…③

Vol.3
デジタル化で解決!?

前回、文化財(歴史と文化)を維持する側と、それを活用する社会側、それぞれ文化財とデジタル化との関係性や意義を見てみました。

概して、文化財(歴史と文化)をデジタル化することで、何等かの解決・進展を見ることができそうです。
幸い現在は、平面に限らず立体物や空間まで、あらゆるものがデジタルデータ化できる時代です。
これで社会の要請と文化財が抱える問題のいくつかが、解決できそうです。

デジタル化(特にデジタル静止画)の作業そのものは、業者に依頼することも可能です。性能面で多少の制限はあるものの、市販されている機器で十分に対応できますから、予算が限られている団体や個人でもデジタル化は実施できます。

ここではデジタル静止画を作製する際の注意点、公開する際の注意点を挙げておきます。


デジタル化する時の注意点

デジタル化の作業をする前に一度「何のために」「誰のために」を検討してみましょう。
このnoteの記事の流れでは「広く知ってもらうために」「インターネットで見てもらうために」がデジタル化の目的ですから、その方向で書いていきます。

インターネットに掲示、掲載するデジタル画像の解像度は概ね100dpi以下(72dpiが適している)とされています。
A4サイズの資料をインターネットに掲載するならば、300万画素のカメラを使用すれば十分に可能です。
300万画素のデジタルカメラ(コンパクトサイズ)といえば、流行ったのは20年前の2000年台初頭でした。

2003年3月に発売を開始したコンパクトデジタルカメラ

今では入手するのも、使うのも大変な世代のカメラです。
2023年の現在では、間違いなくこれ以上の性能を持つカメラが一般的でしょうから、性能面・画質面では問題ないでしょう。
逆に、高画質で撮影したデータは容量が間違いなく大きくなりますから、ネット掲載する際にデータの圧縮など、容量を小さくする必要が出てきます。反面、このレベルの画像では拡大しても細かい部分がボヤけて見難いケースも出てきます。
データ容量と画像精細度は、相反の関係にあります。
「最初に目的を!」と書いたのは、この問題があるためです。これは、3D画像や3D測量データについても同様です。

デジタル化する時の条件は一定に
デジタル化する対象が一つでも、公開するデジタルデータは一つとは限りません。古文書が何枚かであったり、仏像の前後左右面だったり、複数化する場合が大半です。
その際は、写す角度や照明の強さなどを一定にした方が良いでしょう。
条件を一定にしないと、同じモノの画像が違うモノに。また違うモノの画像が同じモノの違う側面に見えかねません。

文化財の撮影などには、まだまだ山ほど注意点があります。
この記事では省略しますが、もしリクエストがあれば記事にしてみます。


公開時の注意点

公開した後の画像や3Dデータなどは「流出しやすい」ことを理解しておかなければなりません。ここは注意しておくポイントです。

何故なら、
デジタル化する文化財が「価値ある文化財」であればあるほど、その後「ニセモノ制作」を予測して対応しておく必要があるからです。
デジタル文化財が「玉石(真偽)混合」する状態では、文化財が持つ情報で正しく、広く、無理なく歴史と文化を伝える意図を、自ら損ねることになります。
文化財に関する情報公開で「性善説」を取れないのは寂しいことですが、必要のない問題を起こさないためにも、対応策は取っておいた方が良いでしょう。

加えて、文化財の多くは「歴史的意味」が問われているものであり、その点でも製作から時間が経っており、著作権などの権利は失効している場合が大半です。
文化財に残されているのは、実物の文化財を所有している権利(所有権)だけでしょう。
(現代美術や工芸品などを除きます。)

「著作権」とは、「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利です。

公益社団法人著作権情報センター CRIC 公表資料を基に作成

文化財の多くが著作権を消滅させていることは、理解が及ぶところです。ですが文化財の画像データを無許可で複製することや、それを基に不法に複製を作られてしまうことはコントロールできないのでしょうか……。

少なくとも現時点では、公開する画像データには、画像作成者としての意思表示をする他はありません。文化財の所蔵元(所有者)の明示や画像作成者(著作権、コピーライト)の表示です。

また、インターネットの普及に合わせてクリエイティブ・コモンズという国際的非営利組織が、新しい著作権の意思表示をするため、ルールを作成し公開しています。これらを上手く活用し公開していくことが求められます。

著作権などの意思表示を表すマーク例

でも……、やっぱり……、心配……。

文化財の画像やデータは、公開して広く知ってもらいたい。
不正なコピーは止めてもらいたいけど「意思表示」しかできないし……。

と言うことで、次回は
ひょっとしてコレが新しい解決策になるかも? を書いてみます。


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