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ペイント大全マスターズ:ロボット/メカのペイントとウェザリング(後編)

よくぞ来た。まるで実在するようなリアリズムと説得力で、君の作品を演出したくないか? 俺はしたいよ。

ペイント大全は、水溶性カラー「コートデアームズ」を用いた筆塗りで楽しむ様々なペイント方法を紹介している。ペイント大全マスターズは、特定の題材に特化してその仕上げ方を解説するものだ。前回に引き続きザクヘッドを用いて、ロボット/メカのペイントとウェザリングについてじっくりと語ろう。ザクヘッド以外にも当然応用できるし、ぜひやって欲しい。

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前編で全体的なペイントを終えたザクヘッド。今回はチッピング(剥がれ)やウェザリング(汚し)を入れ、陰影をつけ、細部を塗り込んで仕上げる。

それじゃあ、いってみようか!

注意書きをデカールの貼り込みで表現

最近のプラモ、ことキャラクタープラモの世界では、台紙から剥がして貼るだけのシールが増えているけど、昔ながらのデカール(水転写式シール)は、その薄さと曲面へのなじみやすさから、仕上がりの面ではシールよりもいい。

でも、剥がして貼るだけではなく「水でノリを溶かし、台紙からずらして貼る」というデカール特有の工程は確かに手軽じゃない。確かにコツは必要だし、たとえプラモを普段作っていても、最近はデカールになじみのない人もたくさんいる。いつもは手書きでやっちゃうんだけど、せっかくの機会なので、デカールの貼り方も紹介しよう。

デカールというと、車とかバイクとかのイメージで、総仕上げに貼る印象があるかもしれないけど、今回は違う。今製作しているのはザクという空想上の兵器で、陸上で運用されていることを想定している。

よって、デカールで表現されるのは、「工場での製造時点で機体になされる整備用の注意書き」あるいは「前線で兵員が描き加えたモットー」のたぐいだ。つまり、これらの情報も、機体塗装と同じように、天候や使用状況によって剥がれたり退色したりする。だから、機体へのウェザリングや陰影づけなどをする前の時点、つまり今からデカールを貼るよ。

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ザクヘッドにデカールは付属しておらず、元々印刷されていたジオン公国軍団章と型式番号はSAYONARAしている。そこで俺は、手元にあった「サテライト コーションデカール」を使うことにした。

そもそも注意書きは整備者に警告や作業手順上の留意点を伝えるためのもの。現用兵器での使われ方を見る限り「エッ注意書きがこんなにバカデカいわけねえだろう」と思うかもしれないし、確かにそうだ。でも、模型的な情報量を上げるという意味では全然アリだ。大河原邦男が描いたモビルスーツを見てみろ。リアルタイプだぞこのやろう。かっこいいじゃん。俺たちがやっているのは再現ではなく表現なので、誇張も大切ってことさ!

サテライト コーションデカールは、“1/144や1/100のSFモデル向きの注意書き”が色々まとめられている。リアルさという意味ではかなりオーバースケールなサイズ(同スケールの人間と並べるとわかる)。ただ、このザクヘッドは1/35スケールだから、サイズ感は結果的にリアルなものになりそうだ。

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貼りたいデカールを選び、その周囲を大まかにカッターナイフで切り出す。デカールをよく見ると、デカールの周囲には透明部分があるから、そこを避けてな。次に、小さな容器(俺は万年塗料皿を使ったけど、小皿でもなんでもいい)に40度くらいのぬるま湯を入れる。

それでボロ筆に湯を含ませ、ティッシュの上に載せたデカールにたっぷり塗りつける。水滴が上に残るくらい浸してOK。ぬるま湯がデカールのノリを溶かしてくれるまで、このまま1分ほどほっとく

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デカールを貼る場所もぬるま湯でサッと濡らしておく。こうすることで、デカールの位置調整がやりやすくなるんだ。カッターの刃先で台紙をひっかけ(ピンセットでつまんでもいい)、筆をデカールに軽く押しつけて台紙からデカールをズラして載せる(この時デカールが台紙からスルッと外れてくれない場合、それはノリがまだ溶けていないからだ。再度ぬるま湯を載せて待て)。位置決めに満足したら、ティッシュで軽く抑えて水気を吸い取ればOK

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同じ要領で、他にも何枚かデカールを貼る。デカールをどこに貼るかを考える時は、その注意書きの意味と用途を考えよう。整備マニュアルや内装部ではなく、わざわざ機体の外装部に書かなければならない種類の警告だ。それは「高熱危険」「内圧確認」「感電注意」「解放禁止」といったたぐいのものだろう。だから、そうした警告が必要そうなハッチやボタン、開口部のすぐ近くがいい。また、“踏まれたり擦れたりしにくい場所”も選びたい。例えば垂直面や背面とかは理想的じゃないかな。

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