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粘らない、納豆。

オレはなんだか疲れていた。
テレビを見ても、ネットを見ても、ぐったりしてしまう。
今、山奥か無人島でひとり暮らしができたらさぞ清々するだろう。
そうもいかないので、その晩も家で飲むことにした。
キクマサピンをそば猪口に注いだ。それから食べかけの白菜漬けやらなにやら残り物をいくつか出した。
ゴクリ、ちびちび、ゴクリ。
そういえばこのところ納豆を食っていない。一日二食生活を始めて体調はとてもいいのだが毎朝食べていた納豆を食べるチャンスがなくなっていたのだ。
あちこち探したら、ほんの少し残っていた。
浜納豆。
和製の豆鼓みたいなもんだが、小さな粒に物凄い旨味がつまっている。
独特な発酵香があって飯によし酒によしだ。
ずいぶん前に買って食べていたのがほんの少し残して忘れられていたのだ。一年はとっくに過ぎている。
大丈夫か、一粒食べてみた。
うん、うん、うん、、、、うまい。
もう一粒。
うまい、うまい。
ゴクゴク。
ちょっと待て、オレは自分に言って冷蔵庫を開けた。そしてヨーグルトを三さじほど小皿に出して上に残りの浜納豆をあけた。
一粒を箸でつまんでヨーグルトに沈める。たっぷりヨーグルトを絡めた浜納豆をぱくり、
小さな粒を噛んでいくと、
じみ、じみ、滋味、滋味、、、
オレは科学的根拠を何も持ち合わせていないが、体に良いに違いないと思った。
浜松のお寺が始めたそうだが東京では見たことがない。
静岡に帰った時に買っていたがこのところ帰る機会も減ったので久しぶりに食べた。
納豆というけれど納豆菌じゃなく麹の菌らしい。
今の人には少し塩分が強いだろうがオレにはピッタリだ。
ヨーグルトがこんなに合うとは思わなかった。
気がついた時には、二リットルのキクマサピンが半分ばかりになっていた。

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