御伽衆-妖編纂録-

江戸時代。
大戦は終わり、人々が商いや開拓に専念出来る平和が到来したこの時代に、忘れさられていた恐怖が再び蠢きだした。
恐怖の名は<妖(あやかし)>。
かの異形共を捨て置けば、世にまた動乱が起きる。
それを未然に防ぐため、幕府によって集められた異能の者達を<御伽衆>と呼んだ……。

――言葉によって造られた槍が、雷光の如き速さで異形の顔を貫く。

『ぐぉぉ……馬鹿な、このような人間に我が!』
「同じ言葉しか最後には言えんのか妖怪は。まぁよい<片輪車>、これでお主も物語の存在となる。故に、消えよ」

炎に包まれた片輪のみの牛車に貼り付いた男の顔を槍で縦に斬り裂くと、片輪車はもはや言葉を発せず、ただ憎悪の表情で男を睨みながら空に溶けて消えた。

「しかし5人も呪い殺すとは……これはまた、どういう話にまとめた物か」

御伽衆の岡野忠成は手にした槍を霧散させながら、片輪車の呪いによって住人全員が息絶えた家を眺めて溜息をついた。

【次章】

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