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3Dプリンタヘッドの設計 2/4【基本設計】

Part1で全体の方針を決めたので、プリントヘッドの設計をしていく。
※Part 1 https://note.com/hexcapbolt/n/n0b54ff1cb7d1

コンセプト

◆全体目標
250mm/s、25,000mm/s2 で3D Benchy 10分切り

◆プリントヘッド設計コンセプト

軽量・低慣性モーメントと高剛性の両立
高速稼働させるにあたって、軽量であることは重要だ。一方で剛性不足や振動の増加によってヘッド位置精度が落ちることが考えられる。なので低慣性モーメントと剛性も目標として、高速化に伴って劣化するプリント品質を維持する。

設計目標

A.高速稼働への対応

A-1.軽量化
目標:260g以下(vzbotのprintehead同等以下)
A-2.慣性モーメント低減

目標値:出来る限り
A-3.高剛性
最大変位0.1mm以下(0.2mmノズル使用時のノズル半分を目安とした)

B.実用性の向上

B-1.自動レベリング用センサの搭載
目標:Bl-touchの搭載
B-2.ダイレクトエクストルーダーの採用
目標:Sherpa mini同等機能の実現
B-3.加速度センサ搭載可能
目標:ADXL345搭載
B-4.ベルト調整作業が容易であること
目標:3分以内の作業でベルト調整作業に着手できること

構想設計

主要部品選定

①ホットエンド選定
流通しているなかで最も軽量であることがコンセプトと合致しているためmk8を選ぶ。ただし、溶融領域(melt zone)が小さいため、最大流量が他のホットエンドに対して劣る。Volcanoやmosquitoのようなアップグレード品も検討したが、Bondtech CHTノズルである程度戦うことができそうだったので今回は採用を見送る。もしアップグレードするのであれば一足飛びにGoliathを搭載するために設計をイチからやり直したほうが良いかもしれない。重量級のホットエンドなので気乗りしないのだが。

②冷却ファン選定
ホットエンド冷却ファンは30x30x10ファンで冷却が足りている3DPが多いので大した冷却風量は必要ないことがわかる。30x30x10、ないし40x40x10程度のファンで良いだろう。造形物冷却ファンに要求される風量はケースバイケースだが、高速化を考えた場合は風量は多ければ多いほど良いようだ。vzbotなどはCPAPと呼ばれるダクトホースと大型の外部ファンを組み合わせたシステムを採用している。また、Zステージと平行に造形エリア全体に風を送るシステムもちらほら見られる。
最低限、40x40x10以上のファンが必要だろう。造形速度の高速化に伴って必要な風量も増加するであろうと考えられるので、造形物冷却ファンは後からアップグレードできるような構造にしておく。

③Zレベルセンサ選定
近接センサより軽量なBL touchを採用する。

④プリントヘッド工法、素材
今回は軽量・剛性を両立する必要がある。よってジェネレーティブデザインを使うことにする。実はジェネレーティブデザインを実戦投入する機会を以前から伺ってた。
ジェネレーティブデザインの効果を最大限発揮できる加工方法として3DPを選ぶ。そのため、使える素材は現実的には4種類、AlSi10Mg、SUS316L、64Ti、PA12になる。重量比弾性率と重量比強度を比較検討するとAlSi10Mgが最もよいことがわかる。第一候補はAlSi10Mgになるだろう。

⑤ベルト保持、張力調整機構
ベルト保持構造は軽量化を念頭に置いてプリントヘッドにベルトと噛み合う溝を直接造形する。張力調整は手で引っ張って固定する方法とする。

部品レイアウトの検討

コンセプトに従って低慣性モーメントを狙うため、重量物はなるべくリニアレールの軌道に近づけるよう配置する。重心位置はリニアレールの軌道面中心を狙う。

ホットエンドとエクストルーダの配置

とりあえずホットエンドをリニアガイドのブロックギリギリに配置する。

プリントヘッドの中で最も重い部品はエクストルーダーモーター(80g)である。なので次にエクストルーダーの配置を考える。
ダイレクトエクストルーダは使用経験が無いので、最軽量級であり実績もあるSherpa miniをベースに配置を考える。

Sherpa miniをそのまま搭載するとモーター位置が高いため慣性モーメントが増加する。上下逆さまにすることでモータの搭載位置を下げる。

上下逆さまにしたことでヒートエンドとエクストルーダギアの距離が広がる。それによりエクストルーダ動作に対する吐出の遅れが大きくなると予想される。(Pressure AdvanceやLiner Advanceの数値が大きくなるということ)AfterBurnerと比較したところ大差なかったので、クリティカルな問題にはならないと判断した。

Sherpa miniを単に逆さまにしただけではモーターが前に寄りすぎている。よってエクストルーダーギアを前後逆に取り付けることでモーターの位置を後ろよりに変更する。これによって重心は前後方向の中心となった。

この位置関係をベースに他の部品を肉付けしていく。前後バランスを崩さないように重心をレール軌道面に寄せるよう、つまり下側になるように部品を配置していけばよい。
なお、各部品を保持するブラケットは後からジェネレーティブデザインで生成するので、ブラケット重量も勘案する必要がある。

冷却ファンの配置

通常、ヒートシンク冷却ファンはプリントヘッドの前側に置く(案1)。今回の部品構成を考えると、エクストルーダギアのブラケットを含め前側に部品が偏りそうだ。

案2のようにブロアファンを使用してヒートシンクから風を抜くことにする。ファンの吐き出し口がちょうど良い位置にあるので、冷却排気をエクストルーダモータに当てて冷却に活用することにする。
あとの搭載部品はBltouchとXスイッチが残っている。前でも後ろでも機能する部品なのでブラケット生成後に詳しい配置を考える。

ベルト配置

ブラケット重量を考えて、レールの下側にベルトを通す。
レール上側にベルトを通したほうが総合的には軽くなるであろうが、今回は慣性モーメントを下げるほうを優先する。

配置するとこんな感じになる。重心は若干後ろよりだが、ブラケット類でリカバーできる範囲だと思う。知らんけど。


次はプリントヘッドの詳細設計をやっていく

次:Part3 詳細設計 https://note.com/hexcapbolt/n/nfd3c864c6bc2

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