高速化のための3Dプリンタ道具選び②(FFF/FDM方式の部品冷却)
TL;DR
つよいファンをたくさんつかえ
部品冷却に関しては定番の解決策はない。なるべく多くの風を当てようとしか言いようがない。アップグレード用の既製品もほぼ無いので大部分を自作する必要がある。がんばろう。
部品冷却ってなんやねん
当たり前だがそのそもノズルから吐出される樹脂は液体だ。冷えるにつれ固まるが、熱いうちは柔らかい。冷えきる前に次の積層が始まると柔らかい樹脂の上にさらに樹脂が載せられるので重さに耐えられず下層の形が崩れる。
これは冷却を無視して造形した例。いわゆるSpeedboatrace調整中の産物。
高速造形すると部品の冷却が追い付かなくなるのだ。
部品冷却はプリンタが動く速さそのものには直接影響しないが、実用的な速度は冷却で制限される。
上の例の場合、造形時間8分では見ての通りダメダメ、15~20分くらいのスピードが限界だったように記憶している。
冷却性能を上げるには
現実的な方法は
①流速を上げる(1秒あたりに触れる空気の量を増やす)
②風の温度を下げる(相対温度をかせぐ)
この2つある。②はエンクロージャで庫内温度を上げていない限りあまり問題にならないので実質①だけの勝負になる。
冷却の道具選び(部品の選び方、考え方)を見ていこう。
①ファンの選び方
3Dプリンタの部品冷却用として通常はブロアファンの4010ファンと5015ファンが使われている。
縦横40mm、厚さ10mmのファンは俗に4010ファン、縦横50mmで厚さ15mmなら5015ファンと呼ばれている。
まず、ファンの原則としてこういうトレードオフがある
・ファンの羽が大きいほど流量が稼げる
➡大型ファンのほうが有利だが場所を取る
・ファンの回線数を上げるほど流量が稼げる
➡高速ファンの方が有利だがうるさい。
つまり大きな流量を得るためには、デカくて静かで低速なファンか、小型でうるさい高速ファンか、まぁ中間のいい塩梅でおさめるか、という話になる。
もちろん「オレはデカくて高速でうるさい最強のファンを買うぜ!」という攻めの姿勢もアリ。とはいえデカすぎるファン買っても無駄なので、ほどほどにしたいよね、、、というのが人情というもの。
目安としてとりあえずファンの流量を整理してみる。
現実的にはノーブランドの適当なファンをAmazonかAliexpressで買うことになるが、そういうファンはデータシートが無い。まともなメーカー製の適当なファンをみつくろってそれを代表値としている。
まぁおおよそ高速なプリンタほど大きな流量のファンを使っていることがわかる。この表は整理しただけ。まぁおおよそ強ければ強いほうが高速向きだというだけ。
ただ、冷やしすぎると反ってベッドからはがれたり、層と層がうまく結合せず部品の強度に影響したりするのでほどほどに。
えっ?どうやって追加のファンを載せたらいいか?3Dプリンタでも使ったらいいんじゃないですかね😀😀😀
②風の向き
風の向きに関しては、ベッドと平行が理想なのではないかと思う。
風が下を向いているとオーバーハングで樹脂が垂れそうな気がする。上を向いているとヒートブロックを無駄に冷やしそう。
冷却ダクトにはざっくり分けて単純ダクト派と全周均一派がいる。(勝手に分類した)
パッと見では全周均一派のダクトのほうがムラなく風があたって良いような気もするが、高速なプリンタを調べると風の向きに小細工をするより単純なダクトに大量の風を流し込むほうが支持されているようだ。
正直、これは正解が無い問題なのでいいアイデアがあったら教えてほしいくらいだ。
③CPAP(外部吸気+ダクト送風)
Vzbotに採用されていることで有名。ファンをプリンタの外に置き、掃除機のホースみたいなやつで風を供給する。ファンが外部にあるのでデカくて大流量のファンが使える。7040ファンとか。
ダクトを用意するのが面倒だし、クソデカファンを使わない限り面倒なだけかもしれない。
外部に設置したファンを防音ボックスで囲えば多少静かに使えるかもしれないね。
そもそもCPAPというのは、元々睡眠時無呼吸症候群の治療で使われる治療装置で寝ている間中、鼻からつねに空気を流し込む装置のことらしい。
ちなみに「エアコンプレッサから圧縮空気噴射!」や「落ち葉飛ばし用のブロアを手にもってエア噴射」という例もある。さすがに常用はしていないみたいだが。
④追加冷却ダクト
ヒートベッドの左右からベッドと平行に風を送るダクト。VoronやVzbotで使われていたものが、Creality K1などのメーカー製プリンタにも採用されるようになった。
まぁ、あって無駄になることはなさそう。要らないときは切っておけばいいし。搭載スペースやエアフロ―の向き的にブロアを使いたくなるが、圧損が小さいので普通のアキシャルファンでもよさそうな気がしている。
ちなみに部品冷却ファンを取り外して、かわりに追加冷却ファンの風を導風板でノズル付近に送るシステムもある。極端だがこういう方法もあるのか、と勉強になる。
⑤ヒートブロックの保温
部品冷却を強化するにつれ、ノズルやヒートブロックにあたる風が増える。普段は問題にならないが、高速プリントになるとノズル温度を維持できない場合すらある。Speedboatraceの上位陣を見るとヒートブロックに風よけを追加しているケースも見るので、オリジナルのダクトを作る場合は考慮しておくと良い。
⑥ファン吸い込み口、吐き出し口の障害物
ダクト設計のときに気を付けないとファンの性能が落ちるよ、という話もある。
参考
12V 4010ブロアファン CBM-4010C-150-227
https://www.mouser.jp/datasheet/2/670/cbm_40c-2449109.pdf
12V 5015ブロアファン MF50151V1-1B000-A99
https://www.sunon.com/en/MANAGE/Docs/PRODUCT/286/481/SUNON%20DC%20Brushless%20Fan%20&%20Blower(255-A).pdf
24V 7040ブロアファン Vzbotのやつ
https://ja.aliexpress.com/item/1005004729010078.html
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