見出し画像

【寄稿】♪心配ないさ〜/念佛寺・豊岡浩史さま

 コロナ禍よりこのかたずっと、閉塞感とか不安感が世の中を覆っているような感じで息苦しいですね。
 家に閉じこもって人交わりの機会も減り、見聞きするニュースも暗いのばっかり。

 飲食店の皆さんとか、旅行業、交通系ほか大勢の人たちが大打撃を現に受けているんだろうし、直撃を受けていない人でも、国の借金のことなんて考えると、この先自分や子どもらや未来の人々が支払っていかなきゃならない負債の大きさに、不安を感じないではいられないですよね。本当に難儀な時代に出くわしたものです。

 なのですが、こうして不安感が世に蔓延しているのには、そういう実際の危機とは別の出どころもあり、意図的に不安を煽っている誰かがいるようにも思えます。

 利益を享受するため、他者をコントロールするために「不安」を道具に使うことは、人類普遍の常套手段だと思います。

 不安のネタは様々ですが、「老後の不安」を煽って「金融商品」や「健康食品」を売るとか、若い人たちには「人から見くだされる不安」を煽って「流行」を売るとか。マリリン・マンソンもマイケル・ムーアの映画で、人に恐怖心を抱かせて物を売るのが米国経済の基盤だと語っていました。
 ニュースを流して広告収入を得る人たちにとっては、危機的な情報ほどバリューが高く、注目度が上がれば、株が上がったり儲かったりするのでしょう。
 コロナ禍は未曽有の危機!超巨額の財政出動が必要だ!として世の中の同意が作り出せれば、官の対策事業に噛んで億単位の利益を掠めるなんてのもスルっと出来ちゃうのではないかな?

 確かにCOVID-19の脅威は実在するし、問題を軽視すれば深刻な被害をこうむることでしょう。リアルな危険度を精密に査定し、適度に恐れて過剰には恐れないなどという見切りは誰にも出来ないような至難の業だと思います。
 でも、誰かが煽り始めた流れにまんまと乗って、雰囲気だけでパニックになって、いつしか自分までが扇動に加担していて、もはや誰にも正味の処も判らないし、止められないというのも頂けませんよね。「落ち着かなきゃ…」と思います。

 そしてまた“不安の濫用”は「強欲な誰かの悪だくみ」なんてばかりでなく、さしたる害意も無く自分でも似たようなことをやっていることがありますね。
 子どもに向かって「将来、困った状況になりたくなければ、今のうちに勉強して、いい学校へ行っていい仕事に就きなさい」という諭しには、きっちりと脅しが埋め込まれています。
 子どもの将来を心配する親ごころ、より良い人生を歩んで欲しいと願う愛情が発端ならば、批難するのは不当かもしれません。
 また、今どきは飽食の時代ですから、子どもたちは現状に満足していて、ご褒美で釣ろうとしても釣れない。ニンジンじゃ走らないから、恐怖を与えて追いあげるという事情もわかる。
 けれど、万事において「脅し」が常套手段になっちゃうと、いつも不安な気分がつきまとって、不健全なことになる。

 「気持ちひとつ」というのはあって、「そこは河童が住んでいるかもしれない底なし沼」なんて言い聞かされたら、泳げる子でも身体がすくんで溺れちゃうかもしれません。一方、「ピンチになったら救いは必ず現れる」と信じていれば、危なっかしい子でもゆったりと泳ぎきれちゃうかもしれません。
 追い込まれた心境よりも、リラックス出来ている方が全力も出せるだろうし、楽しく嬉しく幸せに生きられると思います。

 私には、自分が不安を感じている時に、それをなだめる言葉があります。「大丈夫。心配ない」という言葉です。
 それは奈良の大仏さまから頂いた御言葉です。
 大仏さまの御手は『施無畏印(せむいいん)』といい、私たちから恐れを取り除いてくださろうと、ジェスチャーで「大丈夫。心配ない」とおっしゃってくださっているんですよと、かつて奈良国立博物館の西山厚先生から教わりました。
 そう知って以来、あの大きな御姿からは論理を超えた説得力を感じて、何か全部ゆだねきってしまえる気持ちになれるのです。

 まだ小さな子どもだった頃、親が「大丈夫。心配ない」と言って笑ってくれれば、それだけで安心できたような単純明快な心。
 そんな力を私にもお与えくださいと仏に祈りながら、最近の私は誰かれ相手かまわず「大丈夫。心配ない」を連発しています。
 時には不遜にもシレっとあのジェスチャーまで交えつつ(^^;)

豊岡さまのYouTube番組『法然上人伊賀霊場チャンネル』観てね☆


〈不安がないのもまた不安…?/運営担当より〉
 もともと必要性すら感じていなかったのに、その存在を知った時「これを手に入れなければ、手に入れている人たちと比べて豊かになれず、満たされもしない」と脅迫的にお金を払ってしまうもの…いくつ思いつきますか?
 御守り・サプリメント・ハイスペックな最新機器・品薄のセール商品・生命保険・期間限定&数量限定のプレミアもの・とりあえずの海外留学・トレーニングジムの会費・誰でもとれるよくわからん資格…。
 少し皮肉入ってます。営業妨害になっていたらごめんなさい。どうかみなさま、本当に必要な商品を見極めて、ご納得いただけたならご購入くださいませ。
 私たちが運営しているHey!Bouzも、そうなのかな。不安を煽っているのか、大丈夫だよと言ってあげる場所なのか、どっちも…?
 考え過ぎると仕事にならないので、この辺でやめておこう。

 Hey!Bouzの中でも“自分なりの心の拠り所を見つけて欲しい”とメッセージを投げかけています。それは人でなくても良くて、ペットでも、好きなアニメや漫画でも、アーティストでも、土地でも、活動でもなんでも良いです。心と身体が不安で揺らいだ時、ちゃんと安心を取り戻せる場所。
 そこに何の後ろ盾や根拠がなくても、何故だか安心できるのは「私なら大丈夫」という自分に対する信用があるからです。
 「あなたなら大丈夫だ」と言ってくれる人がいることと、外から見て大丈夫に見えるなら大抵大丈夫だと思えるゆとりと自信。
 それがあれば、とにかく大丈夫なんです。

 今回は、伊賀のお寺、念佛寺の豊岡さまにお寄せいただきました。
 noteで前向きなことを書きながら気持ちがめげそうになる時も正直あったけど…私も、豊岡さまの「大丈夫」に支えられております。
 大丈夫なんですよね。心配ないさ!
*写真は、念佛寺の歴史ある仏様です。かぶりつき過ぎて肝心の御手元が見えず…


 
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?