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とても暗くて憂鬱になる超短編小説⑤

脳内彼女

目が覚めたら病院だった
体を動かそうとすると
全身に痛みがはしり
なぜこうなったか
思い出そうとしても
すっぽりと記憶が抜け落ちていた

少しして
看護婦と医者が現れ
僕の様子に気づくと
冷静な口調で
松田さん目覚めたんですね。よかった
といって笑った

僕は先生に
何があったのか覚えてないんですと
話しかけると

先生は優しい口調で
無理に思い出さなくていいですよ
と微笑み

今は安静にしていることが大事です
しばらくは体と心を休めましょう

そういって部屋からでていった

取り残された僕は
なにをすればいいかわからなかった

体を起こそうとすると痛みがはしるし
この部屋には娯楽らしきものもない

それにとても人恋しくなった
僕に彼女がいたらな、
僕を心配してくれる彼女が欲しかった

その時いい暇潰しを思いついた
自分の理想の彼女像を
事細かに考えていこうと

そうやって時間を潰し
退院したら
そんな彼女と出会うために
頑張って生きていこうと決めて
俄然やる気がでてきた

さっそく僕は
名前から決めてゆくことにした。

ありさ、かな、かほ、めぐみ、
ゆみ、ゆか、ゆり、etc.
色々と名前を考えて
めぐみがいいなと思った

名字はシンプルに鈴木がいい

鈴木めぐみ
素敵な名前だ
年齢は僕と同じ22才で
大学4年生
誕生日はクリスマスと被ることを
いつも悲しそうに語る
12/25日

趣味は料理で、
身長は160センチくらい

僕の好きなアイドル
washのヴォーカルの
あーみんに似てる容姿をしている

めぐみは派手ではないが
明るい性格をしているので
暖色系の服装を好んで着て
ズボンよりスカートを好む

数時間後
段々と僕の理想の
彼女のイメージが
固まっていった

そして
頭の中に完全に
鈴木めぐみは誕生したのだった

僕は毎日めぐみのことを
想いながら生活していた

日にちがたつにつれ
僕の体は回復し
退院することになった。

僕の退院を
めぐみはとても喜んでくれた。

でもあまり無理しちゃダメだよと
心配もされた。

僕のことをよくわかってる、
めぐみの思いやりに
また愛おしくなった。

僕は退院し
久しぶりに
自分の家に帰り
家族と夕食を共にした

家族は僕が家に戻ってきたことに
対してあまり喜んでいないような
気がした

母親は、
落ち着くまで外出は控えなさいと言い

家族に
なんで僕は入院したんだろう?と
聞いてみると
みんな口ごもって
答えてくれなかった。

僕は首をかしげながら
自分の部屋に戻り
思い出そうとしたが、
思い出せない

悲しくなって
救いを求めるように
まためぐみのことを想った

大丈夫。僕には、めぐみがいる。

そう想ったら安心でき
嫌なことを忘れて眠ることができた

翌日になって
僕はやることがなかった。

暇なので外出をしようとすると
母親が必死になって
僕を止める

一体どうしたとゆうんだろう?

僕は仕方なく自分の部屋に戻り
なにするでもなく
ぼぉっとしていたら


ふとインターネットで
めぐみのことを検索しようと思いついた

そして検索欄に
鈴木めぐみと打ち込み
手当たり次第
めぐみのことを探した

もうこの頃にはめぐみは実在する気がして
しょうがなかった


数時間後 1枚の画像に釘付けになっていた
なんと僕の理想通りの
めぐみが実在していたのだ

めぐみは画面越しに
僕に向かって
笑顔でピースをしていた

僕は興奮して
めぐみのSNSを開き、
覗き見ると
めぐみは自分の
作った料理を
たびたび画像にして
アップしていることが分かった

やはりこの人は
僕のイメージどおりの
本物のめぐみだ


僕はいてもたってもいられなくなり
めぐみとコンタクトを取りたくなった

めぐみにフォロー申請をして
めぐみのアップされている画像から
めぐみの居場所を探し始めた


そして僕は不思議な感覚に陥る


いろんな
画像を見れば見るほど
なぜか見覚えを感じた


あれっ
僕はこの写真の場所を知っている

この場所もこの場所も
あの場所も
僕は知っている

あっ・・・

僕の閉ざされていた記憶が
いきなり蘇った


そうだ

僕は昔、めぐみと付き合っていたんだ


そして
めぐみに別れを切り出され
悲しくてやりきれなくなり
飛び降り自殺したんだっけ

そして失敗して入院してたのか・・・


どおりで僕はめぐみのことを
こんなにも知ってるはずだったんだ


僕はバカか
そりゃあイメージだって湧くに決まってる



僕は無意識に
アハハと乾いた笑い声をあげ
号泣しながら嗚咽をあげて
また死にたくなっていた。

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