ハイハイペース?カタツムリ先生
教室内にカタツムリ先生の声が響く。
「最近廊下で追いかけっこをして遊んでいる生徒を見かけると先生たちの間で話がありました。体を動かして元気いっぱいに遊ぶことは大変よろしいことです。しかし、場所を選んで遊ぶことが大切です。いいですか?」
「廊下での追いかけっこはやめてください。大きな怪我に繋がる恐れがあります。もう一度言いますね。廊下での追いかけっこはやめてください。とても危険です!」
「それでは今日はここまで皆さんさようなら!」
キーンコーンカーンコーン!
キーンコーンカーンコーン‼
カタツムリ先生の話がちょうど終わったその時に終業のチャイムが鳴った。それと同時に生徒たちが机から次々に立ち上がり下校の準備を始める。
生徒たちの姿を確認しながらカタツムリ先生はゆっくりと教室を出ていく。ゆっくりゆっくりマイペースで職員室へと向かう。マイマイペースで廊下を進む。すると、隣のクラスの扉が開きそこから隣クラスの担任であるテントウムシ先生が出てきた。
「お疲れ様です。テントウムシ先生」
「あ!お疲れ様です。カタツムリ先生」とカタツムリ先生の言葉に慌てて返事する、テントウムシ先生。手には溢れんばかりのプリントを抱えていた。
「お手伝いしますよ!」とすかさずプリントを手に取るカタツムリ先生。
「あ!すみません。ありがとうございます」少し赤くなりながらテントウムシ先生がカタツムリ先生にお礼を言う。
「いえいえ、女性を助けるのは男性の特権ですので!」と冗談交じりでカタツムリ先生が言葉を返すと、テントウムシ先生はいっそう赤くなった。
「さきほど追いかけっこの件クラスで話したんですよ!」とテントウムシ先生が話題を投げてきた。
「私のクラスも同じです」
「元気なのはいいんですけど、廊下で走るのは危険ですからね。大きな怪我や事故になるかもしれませんし……」
「全くです。生徒たちの身に何かあってからでは遅いですからね……。遅いといえばテントウムシ先生お急ぎではないですよね。私のペースだと職員室までかなり時間がかかってしまうのですが?大丈夫でした?」
ついお節介でプリントを運ぶのを手伝ってしまったが自分の速度の遅さを忘れていた、カタツムリ先生。たまに自分の速度のことを忘れてしまうことがある。マイマイペース、カタツムリ先生……。
「大丈夫です。急いでません。む、むしろカタツムリ先生とゆっくり歩いていたいな~と言いますか、少しでも長くいたいといいますか……って何言ってるんですかね私!」とわけのわからないことを言ってテンパるテントウムシ先生。
「先生危ない!」と声を上げて、急にカタツムリ先生がテントウムシ先生の腕を引っ張り自分の体に引き寄せた!「何々!何がどうなってるの?」頭の中が混乱しまくるテントウムシ先生。
次の瞬間、2人のそばを赤とんぼ君、カマキリ君、カエル君が猛スピードで駆け抜けていった。
それを見たテントウムシ先生が声を上げて注意しようとした瞬間カタツムリ先生がいつものペース。マイマイペースでテントウムシ先生にこういった。
「テントウムシ先生、すみませんプリントをいったんお返ししますね」
「はい!」慌ててプリントを受け取るテントウムシ先生。
そしてカタツムリ先生がこう言った‼
「時には厳しさも教育には必要なのです‼」と言い放って殻の中にスポン!と入ってしまう。
するとその殻がゆっくりゆっくり前に転がりだす。
ゆっくりコロコロマイペース!
コロコロ!コロコロ‼マイペース!
どんどん速度が上がっていくよ‼
いつも間にやらハイペース‼
ハイハイペースでまいります。
ハイハイペースでコロコロ転がり、走る生徒を追い抜いて目の前できゅきゅっと急停止‼
「止まりなさい‼」
「うわ!先生‼」赤とんぼ君、カマキリ君、カエル君がそろって驚きの声を上げる。
「君たちさっきの先生の話を聞いていなかったのですか?」
「……」
三人とも黙り込んでしまう。
「聞いていなかったのですか!」
めずらしく大きな声で生徒に接するカタツムリ先生。
「聞いてました……」
「何と言いましたか?」
「廊下で追いかけっこをするなっていってました……」
赤とんぼ君が消え入りそうな声で答える。
「そうです‼廊下で追いかけっこはしてはいけないといいました‼いいですか?私はあなた達のことも心配して注意しているのです!大きな怪我に繋がる恐れがあるのです。私はあなた達が怪我をするところなど見たくありません。いいですか?先生との約束です。廊下での追いかけっこはやめてください」
「はい!」と三人とも声をそろえて返事をした。
「よろしい!では、一つだけあなたたちに罰を与えます!私を保健室に連れて行ってくだしゃぃ……」と言ってカタツムリ先生倒れ込む。
「先生!」慌てて駆け寄る生徒たち……。
「め、目が回ってって…………」
どうやら目が回って倒れてしまったらしい。
いつもは、ゆっくりマイマイペース!
時には、ハイハイペース、カタツムリ先生。
けれどやっぱり、マイペース!
お目めが回ってまいったまいった、マイマイペース!
今日もマイマイペースで、まいります!
読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。