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伝説のあんバタートースト

伝説のあんバタートーストがある。

今回は、

私の中だけの伝説、だったあんバタートーストが、

他の人の伝説にも、なったお話し。


福井県に、「珈琲舎 とむ」という喫茶店がある。


子供のころ、(たしか小学校3年生くらい)

一度だけ、


親戚のおばちゃんに連れて行ってもらった場所だ。

喫茶店という場所は、

父が連れて行ってくれる一か所しかしらなかったので、

店内に入っても、どぎまぎしていた気がする。

注:「喫茶店に目覚める20代前半」参照


店の雰囲気もほとんど覚えていないが、

テーブルに置かれたあんバタートーストの様が
圧巻のボリュームとインパクト

脳裏に焼き付いた。

バターがパンに染みたその分厚い様、

齧ると落ちそうなバター、

見たこともない切り方(さいの目っていうのね)

パンに、あんこ~!!?

食べると、じゅわ~っとこぼれるバター。
塩辛いバターに甘いあんこ。
切目のおかげでさくさくの表面。
でも中はふわふわ。

子供ながらに衝撃的だった。

家に帰って母に、しゃべったが、
100%は伝わらなくて。


20歳を過ぎて、
いろいろな喫茶店をめぐるようになっても、

私の中での一番おいしいトーストは
とむで食べた「あんバタートースト」だった。

これは、
店を持ち、
自分でバタートーストを提供し始めて
試行錯誤しても
越えられない壁であった。


パンを変え
焼き方を変え、
バターを変え、
トースターを変え。

取引しているパン屋さんまで変えた。

思いつく限りのバタートーストを作ってみたが、
う~ん、あれじゃないんだよなぁ。

開店から4年。

納得いくものはできなかった。


いったい、どうやったらあんな風に焼けるんだろう、

そもそもあの分厚さで中まで火を通すのは、無理じゃない?

???がたまり過ぎて、
満を持して、

福井に帰郷した際、調べてみた。

あった!とむ!!
食べログ参照

場所も店の外観も変わっていたが、
投稿された写真に乗っているのは、
記憶の中のあんバタートーストだ。



その時の写真がでてこないのが、くやしい。

頭の中のイメージと寸分たがわぬ
立派なトースト。

注文してから2~30分かかったような。
恐ろしく長いこと焼くんだなと
2回目で初めて気づいたことも多々。

今回は覚えて帰るぞと入念に
食べてみたが、
なんで時間がかかるのか、
どういうパンを使ってるのか、
やっぱりわからないことが多くて。

思い切って店のマスターに聞いてみた。

「兵庫県から、このトーストを食べたくて来たんですけど、
 秘訣を教えてください」


このぶしつけな質問、同業者として聞いていいのか?!と
思うが、だめでもともとだ。

すると、マスターは、

「やってみよか?」


まさかの今食べたあんバタートーストをもう一度
作ってくれるというのだ。


「いやいや、申し訳ない!」

「ええよ~」


そんなで、目の前で実演していただいた。
パンの銘柄や使っている餡まで事細かに。

トースターでどうやって焼き目をつけて
焦げないように焼くのか。

パンの切込みの秘密。


惜しげなく教えてくださった。


お土産に、実演してくれたパンもお持ち帰りさせてもらった。

(アルミホイルに包んでくれたのだけど、
 冷めてもおいしい!)


感動が、倍になって訪れた。


そして、
翌週、バタートーストの好きなお客様にその話をした。


そうしたら、しばらくして、

そのお客様が言ったのだ。


行ってきました!

と。


え~!!福井まで?!
ついでがあったとしても、
周りに何もないところ。
パチンコ屋さんの敷地内だよ?!

ソースカツ丼とか海鮮丼とか越前そばとか
いっぱいあるなかで、

私がおすすめした「あんバタートースト」、
食べに行ってくれたの~!!!

感動4倍くらいになった。


そして、一人でも多くの人に
この美味しさを伝えたい!っていう想いが叶った。


で、結局今、そのバタートーストをしているかというと、

否。


これがね、わかったの。

うちでは無理です。

かなり何度も角度を変えて焼き直すこと、
他のメニューとのバランス、
提供時間の問題、

いろいろなことが違う。

そして、
あれは、あそこで食べるから、いいんだ!

ってようやく気付いた。

とむのあんバタートースト。
おそらくあれを超えるあんバタートーストは現れないだろう。


だけど、行ってきて、実際自分でまた再現してみて、

分かったことがある。


私のあんバタートーストを作ろう!と。

伝説は、伝説として、
私は私のトーストを目指そう。

これはやってみて、やりつくして、
見えてきた方向性。


今は、少しずつ定着しつつある。

フランスパン生地を使ったハードトーストに合う、
甘すぎない、小豆の味を生かしたあんバタートースト。

がっつり、ではなく、
優しく満たされるトースト。

この冬はあんこを週に何度も炊いた。

暑くなってきた今も、
気が向いたら炊いている。

きび砂糖と塩、小豆、これだけを土鍋で数時間。


当店自慢の
あんこが主役、「あんこ好きのためのあんバタートースト」だ。

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