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バナナファームで格闘した日々

拳くらいの大きさのカエルに、規格外に大きいゴキブリ、おまけに足元にはネズミが走っていたり、蜘蛛なんてもう見慣れすぎてへっちゃら。たまにヘビもサプライズ出演するもんだからみんなで大騒ぎ。

これがオーストラリアで私が働いていたバナナファームでの日常の光景だった。


…え????
 


ワーホリビザを2年目に延長するために私はファームジョブを選んだ。
オーストラリアでしかできない経験をしたいという、ただそれだけの理由。

最初は1ヶ月弱シトラスファームで働いていたが、色々あって辞めて、その後バナナファームに移動した。

ネットの情報を見ているとみんな口を揃えて「バナナファームはキツイ」と言っていて、「まぁでも感じ方は人それぞれだよなぁ〜」とお決まりの能天気具合で特にあまり深くは考えず、物怖じせずにバナナファームを選んだ。


うん、キツかった。

みなさんのおっしゃる通りでした…



バナナファームにはいくつかのポジションがあって、

ピッキング
ー バナナ畑から大きなバナナの房を取ってくる

カッティング
ー ピッキングされて運ばれてきたバナナの房をもう少し小さく切る

ソーティング
ー カッティングされたバナナをお店で並ぶくらいの大きさまでもぎる

パッキング
ー 店頭サイズになったバナナを段ボールに詰める

ざっくり言えばこんな感じに分かれている。
そして私のポジションはソーティング。

えぇ、もうそれはそれはしんどかった。
バナナの前に私の手首がもぎれるわってくらいにキツかった。

そうはいっても人間慣れればお手のもの。
初日から「もう辞めたい…」と心の中で嘆いていた私も1週間経てば作業自体にはすぐに慣れて、多少のしんどさはもちろんあるものの、まぁよくある体力仕事だなと思えるくらいにはなった。

それでも、慣れなかったのは色んな生き物たちとの遭遇。
バナナファームにはあらゆる虫やネズミが現れるということは前情報で知っていたし、ある程度の覚悟はしてたけど想像以上に過酷だった。

大のカエル嫌いの私。
触ることはもちろん、出来ればその姿を見ることも避けたい。
田舎生まれなのに「なんで苦手なの?カエル可愛いじゃん」と言われていつも不思議がられていた。

私が働いていたバナナファームには拳くらい、もしくはそれ以上に大きく育ったカエルがそこらじゅうにいて、毎日カエルを見つけては数分おきに叫びながら仕事をする。我ながら大迷惑。

だけども、優しきオージーの同僚たちは皆その反応を面白がって、ケラケラ笑いながらカエルを他の場所に逃してくれる。

仕事場に現れるだけならまだ我慢できる。

まさかのシェアハウスにも毎日のようにその巨大なカエルは現れた。

しかも驚く勿れ…
※汚い話になります


トイレの便器の中にまでいた(白目)


もうあの光景は何度思い出しても身震いする。無理。なんでお前はそんなところに隠れてひょっこり顔を出してくるんだ…?
シェアハウスを共にしていたみんなは毎回恐る恐る便座を開けて、カエルがいるかいないかを確かめてからササッと済ませる。不幸にもカエルと遭遇してしまったハウスメイトたちがトイレで叫ぶ声が聞こえるなんてことは日常茶飯事。

どうしてトイレの中に紛れ込んできたかは、シェアハウスの持ち主であるボスたちですら謎だったらしい。

今だから笑い話に出来ているけど当時は絶望でしかなかった。
カエルがトイレの中にまでいるなんて日本では考えられなかったから。

これもまたオーストラリアでしか出来ない経験なのか…?

いや…そんな経験は別にいらない……


そんな感じで家でも仕事場でも何かしらの生き物と毎日毎日戦っていた。
だからもう蜘蛛とかゴキブリとか見ても「はいはい、ゴキブリね」くらいで終わるようになった。麻痺してたな…


奇想天外なことばかり起きていたバナナファーム生活だったけどもちろん良いところもたくさんあった。

まずは何よりもバナナ食べ放題なこと。
フルーツの中でバナナが1番好きな私にとってこれはもう最高のボーナスだった。
おまけにそこのファームのバナナがとにかく甘くて美味しい。あれほどまでに美味しいバナナは人生で初めて食べたし、毎日2、3本食べても全く飽きなかった。

ボスに「日本まで輸送してくれない?」と言ったほど。

あとバナナファームはどれだけ天候が荒れようとも、割と毎日仕事があるのでビザ延長に必要な88日カウントには持ってこいだったし、私のファームはこぢんまりとした規模感だったから、ボスもスーパーバイザーもワーカーたちもみんな和気藹々と仕事していて非常に居心地良かった。休みの日にはよくみんなと遊びに行ってたし、仲良くしてもらって感謝しかなかったなぁ…


あとは景色が壮大。

私のいたファームとシェアハウスの周りにはとにかくバナナ畑しかなく、周りに街という街がない。
1番近くのスーパーマーケットまでは車でも10分は掛かる。とてもじゃないけど徒歩で行くのは無理な距離だった。

そんな超ど田舎だったから、多少不便を感じていたけど、その分毎日のようにこれまで見たことないくらいの美しい朝焼け、夕焼けを見れたり、道を歩いていたら野生のカンガルーに出くわしたり、みんなで仕事終わりに近くの川までワニを見に行ったり、ボスに星空観測に連れて行ってもらったり、毎日これでもかというくらい大自然に触れていた。

本当にバナナ畑しかないような街だったし、デパートや商業施設があるわけでもなかったのでショッピングを楽しんだり、欲しいものがすぐに手に入る場所ではなかった。

それでも自然溢れる場所で、周りに何もないからこそ日々の些細なことから楽しみを見出したり、人とのコミュニケーションをより一層図れたり、豊かさとは何かを感じられる日々だった。

ここで過ごした4ヶ月、本当に幸せでしかなかったなぁ。
毎日が新鮮で楽しくて心地よくて、離れるのが惜しかった。

バナナファームを選んだ自分の選択は間違いなかったと確信してる。


ただ、あのどでかいカエルには2度とお目にかかりたくない。

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