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ミスタードーナツ

ミスタードーナツの新作が気になって、夫と「買っちゃう?」「でもなぁ、寒いし買いに行くのやだな」なんて話して数日。公式HPでメニューを見ながら、これ大好き、小さい頃はこっち派だったんだけど、などと話しているうちに、「こんなに盛り上がるなら、買いに行ったほうがいいに決まってる」となって、久しぶりにミスタードーナツへ行ってきた。前回行った時は、二人でイートインをしながら、「あの人は何を頼むか」と予想して遊んだ。コーヒー休憩だと思っていたサラリーマンが、たくさん買って帰るのを見て、ほっこりしたのを覚えている。

大人になると、忘れてしまう感覚ってたくさんあるけれど、ミスタードーナツでドーナツを選ぶ時のワクワク感は、結構色褪せないものなんじゃないかと思っている。行く時は未だに「やったー!」という気持ちになるし、お店に入ると、あの甘い匂いに「あ〜!これこれ!」となる。ショーケースに並んだドーナツを見ながら、自分の番が回ってくるまでのスピードの速さに焦りつつ、頭をフル回転させてチョイスを考えるのだ。

小さい頃、祖母が家に遊びに来てくれる時の手土産は、決まってミスタードーナツだった。駅までお迎えに行くと、もう買っていてくれることもあったし、一緒に選びに行くこともあった。私はもっぱらチョコファッション、エンゼルフレンチ、ゴールデンチョコレート、かココナツチョコレート。さらに、ポン・デ・リングが登場したときには、その美味しさに震えた。最近ではコンビニにも模倣品があるけれど、やっぱりポン・デ・リングはミスタードーナツのが美味しい気がする。(ハニーチュロも大好きだけれど、コンビニでも買えるようになってからあまり頼まなくなった。)弟はとにかくエンゼルクリームが好きで、それだけを三個頼むときもあった。朝食べるときには、粉砂糖がちょっとべちゃっとしているのだが、それもまたウマい。祖母が選んでくれるときには、必ずエンゼルクリームがたくさん入っていた。そして、なぜか子どもはこれ好きだよねと思われているD-ポップ(調べたら、いつのまにかドーナツポップという名前になっていて驚いた。今でもあれは私にとっては Dポップだ)。あれは一口サイズの割に高いし、輪っかじゃないし、ドーナツを食べた気持ちにならなくて、もったいないなぁと思っていたのだが、今になってあの商品の素晴らしさに気づく。食べたい味が全部入っている、というより、あの小箱(今はバケツタイプになっているけど、昔はたこ焼きみたいな角形だったよね)で好みが育まれたのではないかとすら思う。
ここまで覚えているのに、祖母は何が好きだったのか、覚えていない。私たちはチョイスに入れないストロベリーリングや、チョコレートなんかも箱に入っていたから、そういうのを食べていたのかもしれない。とにかく、「おばあちゃんは何でもいいから」と、孫を優先してくれていたのを覚えている。

少し大きくなって、中学生になると、お小遣いでイートインをすることもあった。家族へのお土産を考える友人の横で、家に買って帰らないことへの罪悪感もちょっと感じながら、おかわり自由のカフェラテとドーナツで、友達と一緒にテスト勉強…のはずが、恋バナをして終わったりもした。

今ではあまり行かなくなってしまったけれど、ミスタードーナツの前を通る度に、いろんな思い出でほくほくしてしまう。いつか紙袋ではなく紙箱で、たくさんのドーナツを家に買って帰る日が私にも来るだろうか。願わくば、いつまでも続いてほしいお店である。


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