愛嬌に逃げない

40歳にもなると、そこそこ昔の知人や友人がえらい人になっていくので、「最近の若者は~」という話になったりします。会社をやっている・引き継いでいる人も増えましたし、管理職にいる人も増えました。自分よりも10歳以上若い人を仕事をすることも増えるので、ついつい中年目線で若者分析をやっちゃいますね。

私自身は一人親方みたいなもんで、長時間若い人と同じ空間で仕事をすることはありません。チームプレイで仕事をすることもありますが、基本チャットで仕事をしているので、顔すら知らないフリーランスさんもいます。私も仕事ではあまり顔を出していないので、顔も背丈も性別すら知らないけどお互いの銀行口座は知っている、という不思議な関係もあります。
知人などから聞く最近の若い人は、謙虚で健気で素朴、愛嬌がある、とのこと。愛嬌があるのは私たち年上への単なる処世術でしょう。

私には2人の娘がいるのですが、「愛嬌はあってもなくてもいい」という話をしています。そうはいっても明るく元気に日本社会を生きていくためには愛嬌は必要ですし、私も昔の大塚製薬のキャッチコピーの如く「愛嬌一本」で場を乗り越えてしまった経験はあるんですが、愛嬌があることは別に相手に対して丁寧な態度とは限りません。礼儀が良いこと、とは明確に違います。

愛嬌があるは、愛想が良いとも似ているかと思いますが、あえてへりくだっておくことで、主従関係を演出し、難を起こさず場を乗りこなそう、ってなもんです。あんまりいい処世術ではありません。ちょっと失礼な人がご愛嬌です、テヘペロでごまかすことも多いのですが、それも常に良いことなわけではありません。場合によっては誰かがきちんと「何をやっても良いと思うなよ」と言う必要があります。

独立して一人親方のように仕事をしていると、愛嬌だけではやっていけません。寧ろ毅然と怒るべきところは怒ることが必須となります。契約書を読み解き、あるいはこちらから提示し、大人の喧嘩にもばっちり備えておく必要がありますし、喧嘩になったら「二度とその汚いツラを見せるな」という言葉をいかに美しく、ビジネスライクに伝えるか、も重要です。

幸いにして、私はあまり大人の喧嘩はせずに来れているのですが、それでも大手との契約で、きちんと怒ったことはあります。(かなり失礼な態度をとられたため、あの野郎棺桶に行くまで毎日ガムを踏めと祈っている)

未回収の売掛金にも怒っていますし、別のフリーランスの方の華麗なキレ方に、見習おうと思うこともあります。愛嬌は時にトラブルの原因にもなるので、契約書を読めるかどうかの方が人生を有益にしてくれる可能性は大いにあります。

愛嬌がある人は人に好かれるし、重宝されるのですが、じゃあ愛嬌ぐらいで人の信用度が計れるか、というとそうではないんですよね。寧ろ逆のことも多いです。まだ実力が無いうちは、どうしてもニコニコしてしまうと思いますが。

迷惑系ユーチューバーも流行ってしまうように、愛嬌度外視の人の方が目立ちますし、力を持ってしまうことも往々にしてあります。愛嬌も愛想も、してもらう側の方が強いのです。1人の政治家のために、求められてもいないのに10人以上でアタフタと愛嬌や愛想で対応する場面にも同席していましたが、こんなことでは永遠に弱い側は力は持てないのです。ここでいう力は強権的な意味ではなく、1人の人間として威厳を持つ、尊重してもらう、の意味に近いです。愛嬌で乗り越え続けていると、ひどい物言いのユーチューバーが自由に見えてしまい魅入られることもあるでしょう。お茶ぐらい自分でポットから入れればいいんですよ、政治家も。

特に女の子は母親が「女は愛嬌戦法」で生きていることも多く、ニコッと微笑むことが処世術のように学びやすい環境に居ますが、イヤな目に遭いたくなければ日頃から定期的に「冷静に怒る」訓練をすることが大切です。正直小学生も高学年にもなると、女の子がそこそこ演技できるようになるので、女歴40年の私には心苦しいものがあります。しなくていいよ、と言いたいのですが、すでに微笑むことで成功体験もしており、立派な処世術なのでしょう。ニコニコし続ける必要はないのです、アイドルじゃないのですから。そして表でニコニコ、裏で暴言を吐く、というのは結構バレるので、そんなことなら最初からしない方が良いです。そして私がなぜ見ていて苦しいのか、というと、その演技は無駄なことも多いからです。
(アイドルでさえプライベートはそんなことしなくて良い)

恋人であっても嫌なことは嫌という、主従関係になりやすい先生や部活の顧問、監督にもグルーミングされないように毅然と距離を取る、友人同士でもノリに左右されないためには、愛想より自分の人権を自分で守り、相手の人権は尊重しながらもへりくだらないことが大切です。どんなにえらい奴にも、こっちがへりくだる道理はないと決めておくと、イヤな目に遭いにくくなります。

愛嬌がある女の子は全く関心のない男性を引き寄せることもかなり多いので、あえてやらないことも大切です。興味のない100人に好かれるより、自分が会いたいあの人と、仲良くなれるほうが楽しいですからね。

OL時代に酒を注がないことをモットーにしていたのですが、へりくだる関係を作らないようにしていました。「本当に酒好きな人は手酌らしいですよ」と言って断っていたら、無理に求められることはありませんでした。酒席で酒を注がなくても、今こうしてやりたい仕事で独立もできているので、愛嬌なんてその程度のものでしょう。実力をつけた方が、女の子も生きるのが楽です。

愛嬌はあるけど実力のない中年はなかなか辛いです、人生はとにかく長い。時間はかかっても、逃げ道なしの実力主義で行きましょう。安泰の道に行っても安泰という概念は時代によって形を変えます。自分の手のひらを信じて、もがきながら泳ぎましょう。(案外溺れません)

ニコニコ笑って周囲に多くの人がいる友達の方が人生上手くいっているように見えても、40ぐらいにもなると結婚・未婚・出産の有無を問わず、愛嬌なんか超えて表情で人生がわかるようになります。美しい人かどうか、素敵な人かどうかは顔のパーツではなく、表情に出てしまうのです。良い顔の大人になると誓って、愛嬌に逃げない自分を時々褒めてあげてください。自分のことは、自分が1番よく見ています。

輪を丸く収めるならへりくだる方が楽なんですよ、本当は。でも上に立つ人からすると、結構不快な行為でもあると知っておく必要もあります。愚直に、下手くそでも真面目に実力つけるために奮闘しながら生きているほうが、上に立つ側としても助けたくなるものです。

黙って淡々と仕事をこなしていると、きちんと光も当たります。愛想よりも実務やってた方が収入も上がります。鉄仮面になれと言うものではないですが、いつも笑顔でいる必要はないのです。





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