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雑文まとめ

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時間と距離と僕らの旅。

2019年​​「時間と距離と僕らの旅」 odolというバンドのことを知ったきっかけはこの曲だった。その時はこれから続いていくことになるodolとの遠い旅の始まりだとは知る由もなかった。 2020年「小さなことをひとつ」 その後、コロナ禍が始まった頃、radikoのブランドムービーとして生まれたこの曲の映像を撮影する機会をいただいた。こんなご縁もあるのだなと感慨深かった。 緊急事態宣言が下され家に籠る日々が続くなか、改めて、この曲のためのリリックムービーをつくることになった

コマーシャル・フォト特集について

『コマーシャル・フォト』2023年11月号にて特集していただきました。38ページにわたり実績や作品、インタビューが掲載されています。単独で特集いただくのは2018年10月号以来、5年ぶりで二度目になります。巻頭ページでは俳優の鳴海唯さんを撮り下ろしました。くわえてショートムービーもつくりました。また、ここ数年で変化した部分として、映画やドラマのスチール、CMやMVなどの映像のお仕事について大きく扱っていただいています。 - 撮影の現場にいくと、あの人はどの美大や専門をでた

多摩美術大学 講義メモ

2023年5月13日、多摩美術大学において林響太朗氏が受け持つゼミでゲスト講義をさせていただきました。テーマは「時」でした。そのときにお話ししたことのメモを残します。ゲストは、仕事でもよくご一緒する藤代雄一郎氏と田上直人氏と濱田の三人でした。 - ・写真は言葉である。 ・まだ名前のないものごとを見つける作業。 ・例えば英語には「木洩れ陽」を表す単語がない。 ・写真は一枚でそれを表す言語になりえる。 ・写真にすることで言葉にならない感覚を共有できる。 ・写真は時間でもある

天使たちのシーン 小沢健二

“神様を信じる強さを僕に 生きることをあきらめてしまわぬように” 神様という響きにどこか近寄りがたい印象を持ってしまう。その意味が何によるかを慎重に捉えようとするからかもしれない。とりたてて信仰心が高いわけではない自分にとっては、咄嗟に身構えてしまう言葉だ。しかし、それでもこの歌詞が尊いのは続く「信じる強さを僕に」という部分にあると思う。 不安と恐れが世界を包んでいるいま、何かを信じるよりも疑うことのほうがむしろ安心できてしまう。あるいは騙されないための本能的な行動なのか

記録から記憶へ 〜写真を通してかかわるということ〜

「私たちと一緒に小豆島へ来てほしい!」その言葉がすべてのはじまりだった。 きっかけは「醤の郷+坂手港プロジェクト」を企画する原田祐馬くんと多田智美さんに出会ったことだった。大阪のとあるイベントの打ち上げで彼らと偶然一緒になったのだ。僕が自己紹介がてらに持っていた作品集を見るなり、彼らはその場で僕を小豆島に誘った。それが冒頭の言葉だった。 彼らの熱意に打たれた僕は訳のわからぬまま、その場で「行きます!」と応えてしまった。その時点で、瀬戸内国際芸術祭2013の開幕まで約一ヶ月

夢に迷って、タクシーを呼んだ

誰かと燃え殻さんのことを話すときはまるで亡くなってしまった人の思い出話のようになったりします。燃え殻さんってあんな人だったよね、なんて。会ったこともあるし電話とかでも話すのに、まるでいない人みたいに。ちょっと宙に浮いたような人。でも、よくわからない引力があるんですね。今回の映像は自分で作っておいて可笑しいのですが、眺めていると途中で眠くなって困っています。みなさんも寝てしまうかもしれませんね。 この記事は、作家・燃え殻さんの『夢に迷って、タクシーを呼んだ』(扶桑社・202

フォトグラファーはみな渋谷を目指す

淡路島生まれ大阪在住、去年、神戸にアトリエを構えました。でも渋谷にはよくいます―― 『relax』復刊号に寄稿したエッセイのプロフィールにはこう書いた。東京に住んでいないくせに、長いときには3週間くらい滞在したりする。そんな生活(?)を続けていると裏道にも詳しくなる。あ、ここを抜けたらここに出るんだ! という小さな発見に感動を覚えたり。 そういえば、我々フォトグラファーたちの朝は早い。だいたいは雇い主が違っても渋谷に大集合する。朝5時なんてのは当たり前で、駅の交番横の高架下

愛し愛されて生きるのさ

この歌が世界に発表されてからもう四半世紀が過ぎようとしている。17歳だった夏のある日、突然ラジオから流れてきた不思議なメロディと耳に残る歌声に心を奪われた。一体どこからがサビなのかわからなような軽やかに流れるメロディ、細かく詰め込まれた歌詞、そして間奏の語り。奇妙で耳から離れない。こんな変なのに美しい歌をそれまで聴いたことがなかった。大学受験を控え毎日部屋にこもって勉強をしていたぼくは、この歌のおかげでどこか遠いところに飛び立ったような気分になれた。 子供たちには、とくに1

「First Love 初恋」ビジュアル撮影について

この記事は、台湾のデザイン&ライフスタイルメディア「Shoppig Design」による「First Love 初恋」のビジュアル撮影についてのインタビューを翻訳(導入、質問部分を意訳)したものです。 写真を星のロマンスにする、時の光を追う者2022/12/27 インタビュー・テキスト:Stephie Chiu/Aly Lin 最近は「『First Love 初恋』観た? 」が挨拶がわり。普段、最新のドラマを観る習慣はないのですが『First Love 初恋』のメインビジ

等しく順番を待つだけの世界、そして祈り。

いま頭の中に広がるイメージそれは、深い谷底とそこに突き出した一本の棒。人ひとりがやっと立っていられるくらいの太さで、しかも先端は谷の真上で終わる。谷底では無慈悲なまでに炎が轟々と燃え盛っている。棒のうえには今にもバランスを崩し転落してしまいそうな人たちが体を密着させて並んでいる。 先端に立つ人は落ちまいと必死に体をのけぞらせるが、二番目の人が背後からのプレッシャーに耐えきれず、その背中を突き飛ばしてしまう。先端の人は落下し、炎の中に消えた。どうなってしまったかはもう誰にもわ

最後の一枚

週末は高知に行ってきた。朝一番のプロペラ機は人もまばらだった。いつもは窓の外の風景を楽しむのにいまいちそういう気分にはなれなかった。ただ眠かったからかもしれないし、気が重かったからかもしれない。厚い雲を抜けて降下した機体は海上を旋回したのちガタガタと揺れながら空港のアプローチを滑った。 午前8時半、バスで高知駅まで向かった。駅中のベーカリーで朝食をとる。一人用の小さなテーブルの中央にアクリル板が垂直に立てられており、さらに狭いスペースになっている。ふと、我に帰ったように「こ

あわじしま報知

先日、訳あって故郷である淡路島の地元紙に寄稿したのですが、それに加筆修正した文章をこちらにも掲載してみます。 --- 淡路島を離れてから今年でちょうど25年になります。震災の年に大学にあがってからそのまま大阪で暮らしています。35歳までデザイナーをしていましたが、いまは写真の仕事をしていて、月のほとんどを東京やそのほかの場所を行き来しながら過ごしています。 当然たくさんの人に「なぜ東京に住まないの?」と聞かれます。ご存知かもしれませんが、写真産業は東京に一極集中していて

ONLY IMAGINATION MAKES YOU STRONGER

想像力だけがあなたを強くする。 何かをつくりだすこと 他者を思いやること 自分を勇気づけること いずれ自由に外に出られなくなる日がきます。そのとき、わたしたちにはますます想像力が必要になるでしょう。不安と恐れが世界を包み、尊い日常生活が脅かされるいま、改めて想像する力の大切さを訴えたいと思います。 これは人々の奥底にあるはずの想像力を呼び起こし、クリエイティビティを鼓舞しようとする試みです。このビジュアルはそのための旗印であり、わたしたちの連帯の証でもあります。誰でも

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・オーサカ

20代前半の頃の話です。梅田の宝くじ売り場に携帯を置き忘れたんですね。家に帰ってからそれに気づいて公衆電話からかけたら、知らないおじさんが出たので、すんませんすぐ引き取りに行きます! と言ってその宝くじ売り場まで会いに行ったんですね。 ありがとうございます! と言って返してもらおうと手を差し出したら、おじさんは携帯を返してくれないんですね。お礼になんかあるやろ? みたいなことをおっしゃる。うわー、これやばいやつや、と思って、マジですんません返してください、みたいな感じでし