Hideaki Hamada

おでん屋さん

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マガジン

  • ひろがるしゃしん

    架空の書籍の目次だけをつくってみたら実際に出版することになりました。写真についての考え方や生き方、はたらき方についての本になります。

  • 雑文まとめ

  • 写真家のラジオ 関連

    「写真家のラジオ」にまつわるnoteのまとめ。

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最近の記事

見つめるということ、見つめられるということ。

みなさんはどんな時に写真を撮りますか? きっといろいろなきっかけがあるはずです。例えば、心が動いたとき、素敵だな、好きだなと思ったとき...? もしかしたら人はそんなときにカメラを向けて「写す」のかもしれません。 そう考えてみれば「写される」ということは、それほど「写す」人から大切に思われている、とも言えます。多くの場合、「写す」と「写される」は、その関係の中でおこなわれているのではないでしょうか。 そして、それは同じ時代を生きている者同士でしかできないことでもあります。

    • 猫になりたい

      写真において、その人らしさを形成する要素として、大きく分けて、視点、距離感、色彩の三つがあると考えています。撮影者がそれぞれをどのように定義し、どれくらい一貫性を持って取り組むかが、その人らしい写真の輪郭を描くひとつの秘密になる気がしています。 このうちの「距離感」については以前、『主観と客観を超えた眼差し、その距離感』で自分の考え方に触れました。これは”ゴースト”という目には見えない、未来に死んだであろう自分自身を架空の匿名的な存在に見立て、その目線に立って撮影することに

      • 時間と距離と僕らの旅。

        2019年​​「時間と距離と僕らの旅」 odolというバンドのことを知ったきっかけはこの曲だった。その時はこれから続いていくことになるodolとの遠い旅の始まりだとは知る由もなかった。 2020年「小さなことをひとつ」 その後、コロナ禍が始まった頃、radikoのブランドムービーとして生まれたこの曲の映像を撮影する機会をいただいた。こんなご縁もあるのだなと感慨深かった。 緊急事態宣言が下され家に籠る日々が続くなか、改めて、この曲のためのリリックムービーをつくることになった

        • コマーシャル・フォト特集について

          『コマーシャル・フォト』2023年11月号にて特集していただきました。38ページにわたり実績や作品、インタビューが掲載されています。単独で特集いただくのは2018年10月号以来、5年ぶりで二度目になります。巻頭ページでは俳優の鳴海唯さんを撮り下ろしました。くわえてショートムービーもつくりました。また、ここ数年で変化した部分として、映画やドラマのスチール、CMやMVなどの映像のお仕事について大きく扱っていただいています。 - 撮影の現場にいくと、あの人はどの美大や専門をでた

        見つめるということ、見つめられるということ。

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        記事

          多摩美術大学 講義メモ

          2023年5月13日、多摩美術大学において林響太朗氏が受け持つゼミでゲスト講義をさせていただきました。テーマは「時」でした。そのときにお話ししたことのメモを残します。ゲストは、仕事でもよくご一緒する藤代雄一郎氏と田上直人氏と濱田の三人でした。 - ・写真は言葉である。 ・まだ名前のないものごとを見つける作業。 ・例えば英語には「木洩れ陽」を表す単語がない。 ・写真は一枚でそれを表す言語になりえる。 ・写真にすることで言葉にならない感覚を共有できる。 ・写真は時間でもある

          多摩美術大学 講義メモ

          写真は言葉、写真は時間

          私は一体何を撮っているのだろう? そんなことを考えた経験はありませんか。もし答えがあるとして、それは人それぞれ、きっと多様なものになると思います。というより、なんだっていいのかもしれません。それでもあえて問い続け、何かを導き出そうとする行為は決して無駄ではないはずです。 こんなワークショップを考えました。 例えば「写真を《言葉》にしてみよう」という思考のレッスンをしてみます。その後、反対に「言葉を写真にしてみよう」を、そして最後に「《時間》を言葉にして、それを写真にしてみ

          写真は言葉、写真は時間

          100年後に見つけてもらう

          なんで撮ってるんだろうな、つまらない写真だな、こんなことしても意味ないな、というときがたまにあります。みなさんにもそういう経験はありますか? インターネットとSNSの発展によって、写真を発表する機会がとても多くなったと思います。写真を撮ってSNSで発表することが当たり前になってずいぶん経ちました。それによって、これまで知られることがなかったかもしれない写真が世界中に届くようにもなりました。自分もそうやって、見たり見てもらったり、たくさんの機会を得てきた一人です。 一方で、

          100年後に見つけてもらう

          天使たちのシーン 小沢健二

          “神様を信じる強さを僕に 生きることをあきらめてしまわぬように” 神様という響きにどこか近寄りがたい印象を持ってしまう。その意味が何によるかを慎重に捉えようとするからかもしれない。とりたてて信仰心が高いわけではない自分にとっては、咄嗟に身構えてしまう言葉だ。しかし、それでもこの歌詞が尊いのは続く「信じる強さを僕に」という部分にあると思う。 不安と恐れが世界を包んでいるいま、何かを信じるよりも疑うことのほうがむしろ安心できてしまう。あるいは騙されないための本能的な行動なのか

          天使たちのシーン 小沢健二

          記録から記憶へ 〜写真を通してかかわるということ〜

          「私たちと一緒に小豆島へ来てほしい!」その言葉がすべてのはじまりだった。 きっかけは「醤の郷+坂手港プロジェクト」を企画する原田祐馬くんと多田智美さんに出会ったことだった。大阪のとあるイベントの打ち上げで彼らと偶然一緒になったのだ。僕が自己紹介がてらに持っていた作品集を見るなり、彼らはその場で僕を小豆島に誘った。それが冒頭の言葉だった。 彼らの熱意に打たれた僕は訳のわからぬまま、その場で「行きます!」と応えてしまった。その時点で、瀬戸内国際芸術祭2013の開幕まで約一ヶ月

          記録から記憶へ 〜写真を通してかかわるということ〜

          夢に迷って、タクシーを呼んだ

          誰かと燃え殻さんのことを話すときはまるで亡くなってしまった人の思い出話のようになったりします。燃え殻さんってあんな人だったよね、なんて。会ったこともあるし電話とかでも話すのに、まるでいない人みたいに。ちょっと宙に浮いたような人。でも、よくわからない引力があるんですね。今回の映像は自分で作っておいて可笑しいのですが、眺めていると途中で眠くなって困っています。みなさんも寝てしまうかもしれませんね。  この記事は、作家・燃え殻さんの『夢に迷って、タクシーを呼んだ』(扶桑社・202

          夢に迷って、タクシーを呼んだ

          フォトグラファーはみな渋谷を目指す

          淡路島生まれ大阪在住、去年、神戸にアトリエを構えました。でも渋谷にはよくいます―― 『relax』復刊号に寄稿したエッセイのプロフィールにはこう書いた。東京に住んでいないくせに、長いときには3週間くらい滞在したりする。そんな生活(?)を続けていると裏道にも詳しくなる。あ、ここを抜けたらここに出るんだ! という小さな発見に感動を覚えたり。 そういえば、我々フォトグラファーたちの朝は早い。だいたいは雇い主が違っても渋谷に大集合する。朝5時なんてのは当たり前で、駅の交番横の高架下

          フォトグラファーはみな渋谷を目指す

          ほんとうに欲しいものは手に入らない

          絵が描けたらよかったし歌がうまかったらよかった。足が速くて背が高かったらよかった。初恋が実ればよかったし誰にも裏切られなかったらよかった。人には人それぞれの祈りや願いがあるのだと思う。 どうしても叶えられなかったことや手に入らなかったもの、全部がうまくいく夢をたまに見ます。それが夢だと気づいたとき、まだ目を覚ましたくなくてわざと起きないようにしたり... もう少し、もう少しだけ、と。それでも覚めてしまったときは瞳を閉じたまま涙が溢れていくのが分かって、とてつもない哀しみに襲

          ほんとうに欲しいものは手に入らない

          「First Love 初恋」ビジュアル撮影について

          この記事は、台湾のデザイン&ライフスタイルメディア「Shoppig Design」による「First Love 初恋」のビジュアル撮影についてのインタビューを翻訳(導入、質問部分を意訳)したものです。 写真を星のロマンスにする、時の光を追う者2022/12/27 インタビュー・テキスト:Stephie Chiu/Aly Lin 最近は「『First Love 初恋』観た? 」が挨拶がわり。普段、最新のドラマを観る習慣はないのですが『First Love 初恋』のメインビジ

          「First Love 初恋」ビジュアル撮影について

          言葉にすることをあきらめない

          心のどこかで何か違うと感じながらとりあえず身近にある言葉を発してみたり、使いこなせない流行りの言葉に気持ちを託してみたり、それでもうまく言葉にできずに黙り込んでしまったり、そういうことはありませんか? ものすごいスピードで過ぎていく毎日のなかで、新しい言葉がどんどん生まれています。その意味をゆっくりと消化する暇もないまま、反対に長く使ってきたはずの言葉の意味でさえ変わっていることに気づいて戸惑うときもあります。果たして自分はほんとうに素直な感情を、気持ちを、想いをそれに相応

          言葉にすることをあきらめない

          写真は言葉

          新しい言葉を知ったとき見える世界が変わることってありますよね。例えば、イヌイットは4つも「雪」を表す言葉を持っているそうです(諸説あり)。その言葉を知れば彼らと同じ物が見えるようになるかもしれません。つまり、言葉は世界に対する視野を広げ解像度を上げてくれるものなんですね。 また、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画『メッセージ』では、時間の概念を持たない異星人の言語を理解した主人公がそれと同じ能力を得るようになります(ややネタバレ🙏)。つまり、時間さえ超えて世界を認識することがで

          写真は言葉

          主観と客観を超えた眼差し、その距離感

          いつから写真を? と聞かれたとき、決まってある一枚の写真を思い出します。それは生まれ育った家の勝手口に息子が静かに佇んでいるというものです。その姿を撮ろうとしたとき、直感的に「あれは『私』だ」と感じたのです。自分もまた幼かった頃、まさしくあの場所に座っていたことを思い出したからです。子供をまるで自分の生まれ変わりのように感じたそのとき、記憶の奥底に眠っていた光景が一気に目を覚ましました。そして、その光景をファインダー越しに見つけたとき、言葉にし難い奇妙な感覚に襲われたのです。

          主観と客観を超えた眼差し、その距離感