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ドラッカーが提唱した OOMMDとは?

~ 先ずはPDCAサイクルのおさらい ~

「PDCAサイクル」という言葉をご存知の方は
少なくないでしょう。
生産や業務の改善を目指し、

  • 計画(Plan)

  • 実行(Do)

  • 評価(Check)

  • 対策・改善(Action)

の各プロセスを継続的に遂行していくもので、1950年代に品質管理の父と言われるW・エドワーズ・デミング博士により提唱された
ものです。

デミング博士をご存知なくても、統合品質管理の世界最高ランクに与えられるデミング賞という言葉は馴染みがあると思います。

業務の中では、

  • 「このメンバーでPDCAサイクルをしっかり見守って・・・」

  • 「悪い方向に行ってるのは、PDCAが甘いからだな・・・」

  • 「PDCAサイクルを高速で回すことによって、このサービスの
    競合力を高めていける・・・」
    の様に使われる用語ですね。

デミング博士のそもそもの研究意図は戦後のアメリカの生産性向上なのですが、最も彼の恩恵を受けたのが、1950年代の日本企業です。

その後、「製造大国ニッポン」として、世界を席巻することになる、モノ作り技術、品質の高さ、生産性の高さはデミング博士の伝授に依拠するところが大きいのです。
もちろん、日本人の美意識、器用さ、誠実さ、勤勉さなどの要素も相まってのことですが。

~ PDCAはもはや使えない? ~

この「PDCAサイクル」は、品質管理のみならず様々な領域で
活用されてきました。スポーツの世界でも使われていたりします。

最近、「PDCAは古い」とか「使えない」というコメントや
論調を目にすることがありますが、そもそも、ビジネスの「ツール」としてのセオリーや考え方が万能であるはずがありません。
ビジネス、プロジェクト、生産活動、成長活動などを
見守る上でPDCAサイクルを用いることが適切であれば使えばよい話なのですね。
それなのに、ビジネスをマネージしていく上で
PDCAサイクルでは補えない部分だけを見て「使えない」とか「古い」と評することは、正しい姿であるとは思いません。

例えば、そもそも「品質管理」「プロセス管理」を目的としたPDCAサイクルに、マネジメントの大切な要素である「人のパフォーマンス」や「モチベーションの向上」などを求めるのは筋違いです。
さらにPDCAの各プロセスの進め方も正しい方法、合意のとれた方法で進めないと効果がありません。

ある方から聞いた話です。
評価(Check)の段階で、ものごとが計画通りに進んでいない状況において、他人の批判や、犯人捜しの様な意見が続出し、PDCAがその先に進めなかったと。
「ヒト」と「コト」を綺麗に分けて考えることが苦手な日本人のメンタリティがある以上、「ヒト」の要素が重要となる組織運営の中では、PDCAだけによる管理は様々な課題が生じることは想像に難くありません。

~ ドラッカーの教え「マネジメント5つの基本」 ~

では、どうするか?
「マネジメント」の観点で説かれたセオリーに眼をむけると、
マネジメントの父と言われるピーター・F・ドラッカー博士
行きつきます。

デミングが品質管理の父ならば、ドラッカーは正にマネジメントの父です。その「教え」は膨大な著書、論文、インタビューを通じて世に出され、あるものは半世紀以上を経ているのに、ほどんど価値に経年劣化が無いことには
驚かされます。

ドラッカーは、著書の中で、
知識労働者は「なぜ働くのか?」「どう働くのか?」を考えながら仕事を進めるために、マネジメントはそれに沿う必要があると説いており、これが、PDCAが「人」の管理には不向きと言われる所以です。
そして、マネージャーには
5つの基本的な仕事があると述べています。それは、

  • 目標を定める
    目標をもつべき領域と、それぞれの到達点を決め、行うべきことを決める。

  • 組織化する
    活動、決定、関係を分析し、仕事を分類する。分類した仕事を活動に、
    さらに作業に分割する。活動と作業を組織構造にまとめマネジメントを
    行うものを選ぶ。

  • 動機づけ
    チームをつくり動機づけを行いコミュニケーションを図る。組織において、人との関係において、人事において、これを行う。

  • 測定し評価する
    評価のための尺度を決める。尺度の意味と成果を、部下、上司、
    同僚に知らせる。

  • 相互に成長する
    自らを含めて人材を育成する。

です。

お世話になっている、ドラッカー学会の森岡理事は、講座の中でこれらの英語、Objectives, Organize, Motivate, Measurement, Develop
の頭文字をとり、OOMMDと称して分かり易く説かれています。

PDCAとOOMMDは適応度や優劣を比較されるものではありません。
対象と目的が異なるものだと考えます。
OOMMDはPDCAの様な管理サイクルではありませんが、マネジメントの定点観測や、バランスの評価にも活用できる考え方です。

お馴染みのPDCAと、ドラッカーの提唱する5つの基本(OOMMD)を引用して、ビジネスツールとして用いるセオリーは適材適所で臨機応変が望ましい、ということですね。

~ OOMMDとコーチング ~

ドラッカーが生涯のテーマとした「マネジメント」とは、ビジネスや経営の世界に限ったものではなく、我々が新しい社会を築いていくために不可欠なものと位置付けられています。
従って、その様々な領域でコーチングが力をお手伝いできる機会は多いと思っていますが、このOOMMDも例外ではありません。

クライアントがビジネスパーソンの場合、
コーチングセッションでは上記の、
3.Motivate:動機づけ、と
5.Develop:相互成長、が
テーマになることが比較的多い印象があります。

  • チーム全体のモチベーションが下がっている気がする。

  • 部下のモチベーションを上げるための施策を考えたい。

  • 業務が超多忙で、自らの成長を実感できない日々が
    長く続いている。

  • 部下やメンバーの成長につながる関わり方ができているか
    自信が持てない。

などです。

これは自論ですが、他の3つの基本の仕事、目標設定、組織化、評価、については探せばどこかしらにモデルや前例が見つけられる分野、つまり応用課題や類似課題として扱えるのものであるのに対して、
人との関係性や、成長・学びという分野は、環境や相手に応じて、自分のオリジナリティを発揮することが求められるものだと思うからです。

コーチングセッションを通じて、その様な自分なりの思考、行動スタイルを作るお手伝いができれば嬉しい限りです。

参考図書:

  • マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
    P.F.ドラッカー著 上田惇生(翻訳)ダイヤモンド社
    『第5章 22 マネージャーの仕事』

  • ドラッカー名著集14 マネジメント[中]―課題、責任、実践
    P.F.ドラッカー著 上田惇生(翻訳)ダイヤモンド社
    『第31章 マネジメントの仕事』

  • 図解 ドラッカー入門
    森岡謙仁 著 KADOKAWA/中経出版
    『ステージ3 上司とマネージャーのためのマネジメント初級』

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

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