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デジタルタトゥー 理系男子に最も有名な女性・レナ

デジタルタトゥーとは、デジタル(digital)の刺青いれずみ(タトゥー;tatoo)を組み合わせた造語です。これは、一度インターネット上に書き込まれたコメントや画像などが、拡散されて半永久的にインターネット上に残されることを意味しています。この言葉は、刺青を入れると完全に消すことが難しいことに例えた表現です。

”デジタルタトゥー”ではないけれど、本人の許可なく半ば一般的に使われている画像があります。それは、レナ(Lena/Lenna)さんの画像で、1973年以来、画像処理の分野で広く使用されている標準的なテスト画像です。特に画像処理の教科書には、必ずといっても良いくらい彼女の画像が載っています。この画像は、アメリカの男性誌『プレイボーイ』の1972年11月号から切り取られたもので、写真家ドワイト・フッカーが撮影したスウェーデン人モデル『レナ・ソーダバーグ』さんの写真です。

この画像は、帽子を被った美しい女性が肩越しにこちらを見ている顔写真で、いまでも画像検索すると、lena.jpgの画像がたくさん出てきます。現画像は綺麗な写真ですが、教科書に載っているのは、その画像にノイズを加えたピンボケ画像が大半です。教科書や論文などでは、このピンボケ画像から原画像を再構成する画像処理の手法が紹介されています。

この手法は、一般的にはデコンボリューション処理と言われ、デジタル画像の修復/修正技術として利用されています。画像処理の場合は2次元のデコンボリューションですが、弾性波探査や地中レーダ探査などでは波形データのデコンボリューションが利用されています。

少し話が逸れましたが、レナさんの画像は画像処理の世界では最も有名な画像の一つです。お堅い研究者も、美人には弱いのかもしれません。しかし、過度なルッキズムは厳禁ですし、画像の無断使用も厳禁です。レナさん本人は、2019年11月に北米で公開された『Losing Lena』という”レナ画像の使用の中止を呼びかける短編ドキュメンタリー”の中で、「私はずっと前にモデルを引退しました。そろそろ技術からも引退したいと思います」と語っています。

レナさん自身はレナ画像の使用をあまり快く思っていないようですが、この画像が画像処理の技術を進歩させたことは間違いの無い事実です。

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