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数学の小ネタ#12 2:8の法則

 2:8ニハチの法則というのを聞いたことがありますか?。これは、働きアリの観察から発見された経験則のようなものです。

 働きアリの行動をよく観察すると、巣に向かってひたすら重い荷物を背負って運ぶもの、手ぶらでただついていくもの、そうかと思うと列から外れたりして勝手にウロウロするものなど、様々なアリを見ることができます。働きアリと言っても、全部がよく働くわけではありません。ざっくり言って、サボっているアリが2割で、真面目に働くアリが8割です。そのため、2-8の法則と呼ばれています。

 もう少し細かく分類すると、よく働いているアリと、普通に働いている(時々サボっている)アリと、ずっとサボっているアリの割合は、2:6:2になります。働きアリがさぼるのを意外と感じるかもしれんなせんが、よく考えれば至極当然な結果です。人間の身長や体重などのデータを集めて分布を描くと、平均値を中心とした山型の分布となります。これは統計学でいうところの正規分布(ガウス分布)です。

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 人間もアリと同じで、よく働く人もいれば、しょっちゅうサボる人もいます。これが自然の状態なのです。アリの実験で面白いのは、これからです。ある研究者が2:8の法則に着目して、働きの良いアリだけを集めて”精鋭部隊”を作ったらもっと効率よくなるのではないかと考えました。しかし結果は予想外でした。精鋭部隊を作っても、やはり約2割はサボるのでした。逆に、最初にサボっていたアリ集めた”怠け者部隊”を作ったら、そのうちの約8割が働くようになったのです。

 数学(統計学)がよくわかっていないと、何か不思議なことのように感じるかもしれませんが、統計学的にはちっとも不思議ではない現象です。この現象を不思議がることが、私には不思議でなりません。しかしアリの2:8の法則には、次のような意義があることには驚きました。

 生物は機械ではないので、”疲労”というものが存在します。この”疲労”からくる効率低下を防ぐのが2-8の法則なのです。一見サボっているように見えるアリの存在が、コロニーの存続に大きな役割を果たしているのです。例えば、すべてのアリが同時に働き始めるとすると、短期的には仕事の能率が上がりますが、全てのアリが同時に疲れて休むために、長期的には仕事が滞ってしまうのです。一見非効率に見えるシステムが、アリのコロニーの存続には必要なのです。

 人間にも2:8の法則は当てはまっているはずです。サボる2割の人にも、働く8割の人のバックアップとしての意味があります(?)。サボる2割の側の人間である私が言うのもなんですが・・・。


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