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3W1Hで描く未来図ー定年までに実現する資産設計戦略(深野康彦さん)

 The21 2024年4月号「普通のサラリーマンが定年までに「お金の自由」を手に入れる方法」の中で、FPの深野康彦さんの「3W1Hで自分をよく知る」、という観点の記事は自身にとっても、また、人事の立場としても改めて考えさせられるところがありました。

 老後の過ごし方とそれに必要な資金を計画する際、「3W1H」つまり「いつリタイアするのか(When)」「どこで過ごすのか(Where)」「誰と暮らすのか(Who)」「どのように過ごしたいか(How)」を基準に考えることが大切です。これらの要素を明確にすることで、必要な老後資金の全体像が見えてきます。例えば、老後を世界各地を旅行して過ごしたい人と、家で静かに読書を楽しむ人では、必要とされる資金の額が異なります。すなわち、その人の「ライフプラン」から考える必要があります。

 基本戦略としては、「資産の山」をリタイアまでになるべく高く築くことです。しかし、現実には多くの人が家計状況を正確に把握しておらず、将来に対して楽観的であったり、収入減少を見越した計画を立てていないことが多いです。特に高収入の人ほど支出が多く、想定外に貯蓄が少ないケースが見られます。また、50代に入ると段階的に給与が減り、60歳での定年後は収入が大幅に減少するのが一般的です。このような収入減少に備えて、生活のダウンサイジングや支出の削減が必要になります。

 老後資金についての不安を解消するには、まず自分自身の現在の収入と支出を正確に把握し、どれくらい貯蓄できているかを確認することが重要です。加えて、iDeCoや企業型確定拠出年金(企業型DC)、新NISAなどの節税効果が期待できる制度を利用することや、トンチン年金のような安定した収入を生み出す商品に投資することも老後資金の準備に有効でしょう。

 一方、これらの制度や商品を活用するには、60歳までに引き出せない、または長期的な投資が必要など、各々の制約や条件を理解しておく必要があります。例えば、iDeCoは60歳になるまでお金を引き出せないため、急に大きな金額が必要になった場合に対応できない可能性があります。そのため、自分のライフステージや家計の状況を考慮して、どの制度や商品が最適かを検討することが大切です。

 老後は「公的年金+α」で安心して過ごすことを目指し、自分でできる年金作りに取り組むことが勧められます。公的年金だけでは不足が予想されるため、資産運用を通じて追加の収入源を確保することが重要です。これにより、定年後も安定した収入を得ることが可能になり、老後をより安心して過ごせるようになります。

 老後資金をどのように準備し、過ごし方をどう計画するかは個々のライフスタイルや価値観に大きく左右されます。自分自身の現状を正確に把握し、将来の夢や目標を明確にすることから始めることが、不安なく老後を迎えるための第一歩と言えるでしょう。

人事としてはできることはないのか


 企業における人事の役割は、従業員の採用から退職に至るまでのキャリアをサポートすることにあります。特に、退職後の生活設計に関わる「3W1H」の観点から、従業員のためにできること、支援策を具体的に展開してみたいと思います。

When(いつ)

 企業における退職支援策は、単にリタイアメントプランの提供だけに留まらず、従業員が自身の理想とするリタイアメントのタイミングを実現できるよう、柔軟なキャリアパスを設計することが考えられます。例えば、早期退職希望者に対しては、再スキリングプログラムを通じて、新たなキャリアへの転換を支援する。また、長く働きたい従業員に対しては、パートタイムやコンサルタント契約など、さまざまな働き方の選択肢を提供し、彼らが希望するリタイアメントライフを送れるよう後押しすることができるでしょう。

Where(どこで)

 居住地選択においても、は従業員に対し、より具体的な支援を提供できます。例えば、退職後に地方移住を希望する従業員には、地方自治体と連携した情報提供セッションを開催することで、移住先のリアルな生活環境や支援策についての理解を深める機会を提供することができるかもしれません。また、海外移住を検討している従業員に対しては、海外生活経験者の体験談を聞くワークショップを開催し、実際の生活コストや健康管理、言語や文化の適応など、移住に際して必要な情報を提供することもできるでしょう。

Who(誰と)

 家族構成の変化に伴う支出の増加や、介護が必要な家族がいる場合の対策として、企業は介護休職制度、在宅勤務制度の拡充を検討するのも手でしょう。さらに、従業員が退職後も安心して家族との時間を過ごせるよう、介護サービスの紹介や、介護に関する知識を提供するセミナーを開催することも考えられます。このように、従業員の家族構成に応じた支援を行うことで、従業員が老後を家族と共に安心して過ごせる環境を整えることが可能です。

How(どのように)

 従業員が退職後の生活で何をしたいかに基づいて、趣味や興味に関連したクラブ活動のサポートや、健康管理プログラムの提供を積極的に行うことが考えられます。例えば、写真や旅行、園芸など、多岐にわたる趣味のクラブを企業内で支援し、退職後も従業員同士の交流を促進することで、社会的なつながりを保ちながら趣味の時間を楽しむことができます。また、健康管理に関しては、定期的な健康診断の実施はもちろん、栄養指導や運動プログラムへの参加を促すことで、従業員が健康で充実した退職生活を送れるようサポートします。

 これらの取り組みを通じて、従業員が退職後も安心して、充実した生活を送ることができるよう、幅広いサポートを提供することが可能です。従業員一人ひとりのニーズに対応した柔軟な支援策を検討し、実施することで、従業員のライフステージに応じた総合的なキャリアサポートを実現することが大切であると思います。もちろん、企業としていますぐできること、できないことはあります。しかし、少なくとも企業として、また人事パーソンとしてそのような「視点」を持っておくことは大切なのではないかと思います。

The21 2024年4月号「普通のサラリーマンが定年までに「お金の自由」を手に入れる方法」は他にもお金に関する記事が満載で、非常に参考になります。私も改めて勉強させていただきました。


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