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強い組織にはなぜ共通言語が存在するのか

株式会社ブレーンバディ執行役員CHROの永井です。今回は、組織における言葉の定義の重要性を考えていきます。言葉の定義と言われピンとこない方も多いと思います。僕も組織開発に関わる前は、あまり意識していませんでした。ただ、組織が拡大していく中で、言葉の定義の重要性を強く感じています。
本日は、言葉の定義をテーマに人材・組織開発について、みなさんと一緒に考えていければ嬉しいです。

なぜ言葉の定義が必要なのか

まず、なぜ言葉の定義を揃えていくことが組織開発において重要か考えていきます。大きく捉えると組織を組織として機能させるため言葉を定義することが重要だと考えています。その理由は以下の通りです。

<人間は解釈ができる生き物であるため>
人間は、反射だけではなく解釈ができる生き物です。そして、解釈は無数です。これまでの経験、その時の心情、直近あった出来事などが起因し同じ事実、言葉から複数の解釈をします。そのため、抽象的な言葉や一般的に使わない言葉をそのまま使うと、組織の中で無数の解釈を生みます。そして、その言葉が一人歩きし伝言ゲームのように伝えたいことが伝わらない状態が発生します。例えば上司が部下に対して、「これをイイ感じにしてほしい」という解釈が無数にある指示をした時、部下は非常に困ります。そして、上司はメンバーから出てきたアウトプットを見て勝手に期待を裏切られた気持ちになります。極端な例を使いましたが、実は組織内で日常的に似た状況が幾度と発生していると思った方が良いです。
また、人間は思考のスキマを嫌い、スキマがあると勝手に埋めていきます。そのスキマを埋めた時、ポジティブに働くこともありますが、ネガティブな場合の方が多いです。本来伝えたいメッセージではなく、曲がった伝わり方がなされることもよくあります。

<コミュニケーションコストが下がり意思決定のブレが少なくなる>
言葉を定義していくことで共通言語化し、コミュニケーションコストが下がります。例えば、日本語圏で生きている僕がイタリア語しか使えない環境に行った時、意思疎通を図ることは非常に困難でコミュニケーションコストは非常に高いです。
言語が違うのは極端な例ですが、知らず知らずのうちに「この言葉はこういう意味だよね」と勝手に辞書と違う意味を持たせるケースはどの組織でも発生していると思います。日本という集団を例に捉えてみると、世代ごとに生まれる流行語も同じです。僕自身、今の高校生から当たり前のように流行りの言葉を言われても、全く違う理解をするか理解できないと思います。会社組織で捉えた時も同じです。新しい会社に入社した時、カルチャーショックを感じる原因の一つは言語の違いです。
このように、曖昧な言葉を用いてコミュニケーションをすると、コストが非常に高くなります。「〜ってどういうことですか?」に対する説明や、「〜って何を意味してますか?」という会話が頻発します。わからないことを聞いてくれないケースも多いと思います。勝手に解釈、行動し意思決定することで組織にいる人等の行動は微妙にずれ続けるのです。
そのため、僕は言葉が曖昧な状態の中でする意思決定は、一種ギャンブルに等しい状況だと考えています。

強い組織には共通語が存在する

強い組織には共通言語が存在していると考えています。また、その共通言語の数が多く、組織全体に浸透しているケースが多いように感じています。
例えば、宗教を考えてみると、その宗教で独自の言葉を生み出しているケースすらあります。比較的身近な仏教にも数多と存在しています。会社組織でも、「リクルート用語」や「サイバーエージェント用語」など強い組織には独自の共通語があります。鶏が先か卵が先かという考え方になると思いますが、共通言語が多く全体に浸透している会社は、結果的にカルチャーが強い状態です。また、そのカルチャーは、唯一無二の独自性が高いものになり、カルチャー自体が競争優位性となっていきます。だからこそ、共通言語が多く全体に浸透している会社は強い組織が多いのだと思います。もちろん、その他にもに言語を浸透できるぐらい統率が取れていることなど理由は様々だと思いますが、何より独自性の高いカルチャーを構築できることが、共通言語を持つ組織の強さだと思います。

ブレーンバディの取組み

ブレーンバディでも、言葉を定義し共通言語化する取組みをこれまでも複数行ってきました。今回はいくつかの取組みを例として、組織における言葉の定義と浸透をどのように行っていくのか考えていければ嬉しいです。

<カルチャーブック>

カルチャーブック Ver.1.0.1

カルチャーブックでは、ブレーンバディの理念から経営基本方針など、会社として共通認識を持ちたい言葉や概念を定義しています。多くの会社で意外と定義されていないように感じるのが、MIssionやVisionといった言葉の定義です。Missionとはそもそも何を意味するのか、企業理念とは何かと言った上流の言葉を定義することで、言葉の一人歩きや社員が向くベクトルが揃っていきます。
その他にも、会社の上位概念など様々な言葉や概念を図で表したり、言葉を定義したりしながら認識の齟齬を無くすようにしています。

<営業本部で定義した言葉>
営業本部で育成の型を作る際に、改めて言葉の定義を行いました。その際に特に育成や組織拡大をしていくために、言葉を定義することは非常に重要だと感じました。背景としては、普段当たり前のように使っている言葉でもメンバーと上司の認識がズレていたり、そもそも本質的な理解をしていなかったりしている現状を目の当たりにしたからです。
例えば、「お客様に価値をお返ししよう」と組織長が言った時に、「価値」という言葉はみんな知っている言葉なので、疑うことなくまっすぐ受け止めます。しかし、組織長が考える「価値」と受け手一人ひとりの解釈する「価値」に若干のズレが生じている可能性を感じました。それ以外にも、解釈の余地が無数な状況のままロールプレイングを実施する仕組みを作ってしまうと、ロールプレイングで的外れなフィードバックが行われたり、メンバーからすると「その通りやってるのになぜダメなのかわからない」といった状況が起きるのではないかと感じました。結果、当社ではそこまで状況は悪くなかったですが、仕組みを作ろうとしているのに、属人的にしか機能せず「なぜ育たないのかわからない」「やる気ないじゃない?」と言ったコミュニケーションが多発し、上司部下双方が疲弊していくのではないかと感じました。
このような背景から、育成の型を構築する際にまず言葉の定義を揃え、社内の資料や使う言葉を意図的に揃えにいくようにしました。

定義だけではなく浸透させることが肝

ここまで定義することの重要性を書いてきましたが、やはり最後に肝心になることは、いかにして浸透させられるかです。人事として、浸透させること(人・組織を動かすこと)は常に求められます。浸透は一足飛びにはできないので、愚直な啓蒙活動と継続的に伝え続けることが重要だと感じています。特に上層部が使う言葉を揃えていくことは必須だと感じています。
また、浸透させていく時に注意したいことは、過剰にできていない人を攻撃する人を作らないことです。本質的な背景を理解せず、または個人の解釈で強烈な指摘をし続ける人がいると、言葉の定義に限ったことではないですが、心理的安全性は欠落していきます。そのため、浸透施策は慎重に設計、運用していく必要があります。

ブレーンバディでもまだまだ言葉の定義は磨き続けたいです。解釈の余地があった方が良いもの、余地をなくした方が良いものを揃え、今後も組織の目的達成のために共通言語を構築していきたいです。

<参考図書>


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