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ミネルバ大学の大学院卒業しました

私が卒業したのは、MDA(Master of Decision Analysis)というプログラムです。オンラインで受けられるので働きながら世界中の学生が受講できるのが特徴です。ただ、時差はなんともならないので夜中の授業がありなかなか大変ではありました〜

【なぜ、40歳で大学院へ?】

「人生100年時代」(ライフシフトより)というキーワードは、きっと多くの方が聞いたことのあるキャリアを考える上での定番のコンセプトになってきました。

2019年我が子が小学校に入るタイミングでミネルバ大学の大学院に入学しました。私の子ども(2012年生まれ)が18才になる2030年には、どんな教育の選択肢があってどんな教育を受けているんだろう?公教育は最先端の教育に追いつくにはどうしても時間がかかる中で、親として我が子にどんな教育がしてあげられるだろう?

そんな中、自分の中でアンテナに引っかかったのがミネルバ大学が提示する高等教育のあり方でした。(アクティブラーニングを基盤としたオンライン教育+世界中の様々な都市での生活を体験し多様性を育む、それに加えてインターンなどを通じた就労経験)。2030年には、ミネルバ大学のような大学が出てきているのかな?と感じました。そうだとすると、私の子供がミネルバ大学から18歳のときにオファー(入学許可)を貰えるためには小中高で何を学び何ができるようになっていればいいのか?そこが知りたいという知的好奇心に火がつき、試験も無料で受けられますし、試験を受ければ何が求められているか分かりますので、とにかく受けてみよう40過ぎて受けたら合格したので、家族の理解もありましたし大学院に通うことにしました。

ミネルバ大学の直近の状況は、インターネットで検索すると以下の記述が見つかります。

Minerva Schools launched in fall 2014 with 29 students in its Founding Class. More than one hundred students enrolled in fall 2015 as the Inaugural Class. These two groups of talented and pioneering students joined together to become the graduating class of 2019.

上記は、ミネルバ大学の学部プログラムに関することではありますが、初めての卒業生が出たのが2019年、私の卒業年度は2021年なので、卒業生の活躍がどうなるかもまだまだ見えない中で入学、開校から初めての卒業生が出て、3回目の卒業式で卒業したことになります。私自身、オンライン英会話学校を運営するなど、EdTechを始めとする教育分野のスタートアップに興味があります。新興の大学が世界トップ校並のブランドをつくれるものなのか?もしそうだとすると、どんな授業しているのか?という興味もありました。

我が子が今後、小中高で何を学んでおくべきなのか?最近では小学校3年生からはじまる受験勉強にも違和感があるものの、一方で何をしたげればいいのか具体案がありません。21世紀の教育の姿への興味、世界最先端の進行大学がなぜハーバードと肩を並べる難関校へ短期間でなれたのか?その秘密を探りたくなったのが大学院に進学した理由です。もしくは、私自身が21世紀の学びの基礎教養(リベラルアーツの素養)があるのか?確認したくなったのかもしれません。

【無駄が人生を豊かにする?】

それを言っては、、、という話かもしれませんが、はっきり言って、30歳になるころには、20世紀の定番の会社では、ほぼ会社での社内選抜も終わっていて、出世できる人とそうでない人と別れちゃってるわけです。そういう意味で40過ぎて大学院行くとか、無駄以外の何物でもないと思います。(もちろん、起業などはカーネルサンダースやレイ・クロックの例もありますので、別の話とは思います)

今更、学位とって役に立つのか?→立たないでしょうね…
では、意味はあるのか?→21世紀の新しい教育のカタチの1つを体験してみたいという意味では私にとっては意味があったかもしれません

意味がある・ない & 役に立つ・立たないの話は、以下の記事が参考になります。

役に立つ人より「意味がある人」がこれからは生き残る【山口周×尾原和啓対談2】(以下マトリックスの出所)

マトリックス

先程触れましたが、小学校の受験1つとっても、大学入試の英語4技能をとっても、20世紀型の教育は今変わらなければ行けないところに来ていると感じます。

私が思う20世紀の「学び方」の奥義は、以下の1文に集約されます。

「それ、試験に出ないよ」

これを私も受験時代よく友達に言っていました。司法試験や会計士などの難関試験にサクッと合格する人もこれは心得ていると思います。例えば、大学受験になってくると相当な量な知識を獲得しておく必要が出てきます。つまり、「効率よくやる」というのは広い範囲の中で出題頻度の高いところだけを徹底的に対策すること。無駄なことは切る、やらない。そして、相手(試験を出す側)は採点して、点数をつける必要があることを意識して、それに適した問題を出題してくるわけで、出題しにくい問題はやらないなどの受験テクニックが出てくるわけです。

しかし、21世紀になると、好き・嫌い、自分の価値観が大切になってきます。最近、哲学、芸術(音楽)などに興味を持ちいろいろと自分で調べたりするようになりました。これを学んでも、多分1円も給料は上がらないと思います。まさに無駄。そもそもピアノでどれくらいの人が稼げると思っているの?という話だと思います。私も、無駄だと思います(ちょっと前まで本気で無駄だと思ってました)。でもですよ、ふと、YouTubeをぼ〜っと眺めていると、YouTubeでめちゃくちゃアクセス稼いでいる「ストリートピアニスト」なる人が出てきてますよね。(例:Haramiさんの炎の演奏 cateenさんとの連弾)。こういうのってピアノ習っている時にこういうキャリアを「打算的に」描いてやってたんでしょうか?それとも、ふとある日、今のスキルを"connecting dots"的にうまく繋げられるんじゃないか?それって楽しくないか?と気づいてとりあえずやってみたらこうなったんでしょうか?ここでストリートピアニスト = ピアノの技量 x YouTuber x  ストリートピアノの普及という動きの読みという要素がある気がするんですね。きっと、初期は学びながら試しながらまずはやってみたんだと思うんです。21世紀のとても複雑になった世の中では、こういうまずは面白そうだから、自分は意味があるともうから(音楽でちょっと毎日の通勤が少し音楽で彩られるのっていいよね)やってみるのってとっても大切なことの1つな気がするんです。 

私が今回無駄に使った時間が、「意味があるかどうか」は、結局皆さんからどれだけ共感を得られるかどうかにかかっていると思いますので、ぜひ共感いただけた方は投げ銭お願いします!?いずれにしても、私自身、この無駄な時間はなかなか知的好奇心を刺激される時間ではありました。Learning of Scienceと呼ばれる「学び方」の科学にとっても興味があるからです。投げ銭(応援)いただいた分は、学び方の科学に関する情報発信の原資にさせていただきますね。

【ミネルバ大学の大学院で学んだこと】

ミネルバ大学の大学院でやることは、学部でもやる一般教養とほぼ変わらないのではないかと思います。ここでいう一般教養というのはHC(Habit of Mind and Foundational Concepts)と呼ばれるもので、4つの大項目があります。

この大項目は、Thinking Critically, Thinking Creatively, Communicating Effectively, Interacting Effectivelyの4つです。4Cに関してはこちらの記事も参考にしてください

詳細は、Building the Intentional University: Minerva and the Future of Higher Education (The MIT Press)に詳しいです。この本は、私の人生を変えた一冊になるかもです!?HCに関してはAppendix Aを参照のこと

Appendix Aのはじめに、こんな記述があります。 
The Minerva curriculum is designed to help our students understand leadership and working with others, to become innovators, to develop into broad and adaptive thinkers, and to adopt a global perspective.

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この4つのHCの項目の中には、さらに書籍のAppendix Aにあるように、Thinking Critically の中には、#deduction, #inductionといったもの、つまり「演繹的推論」、「帰納的推論」のようなものがあります。

演算的推論というのは、1)AならばB 2)BならばCとすると、1)と2)からAならばCと言えるよねといった思考です。このスキルが100個くらいあってそれが評価項目なわけですが、これは日々のニュースから論理の破綻がないか?(フェイクニュースじゃね?と見破れるのか?)とか、または、プログラミングでしっかりコーディングできるのもこういった思考ができるからです。ポイントは、こういった思考力は、今日は演算的推論という思考力を磨きましょう!といってみがけるものではなく、「演算的推論の思考力」は、「哲学」をしっかり考えてみたり、「数学」の証明問題をたくさん解いたり、「プログラミング」をやってみたりする中で身につくもので、直接演算的推論を学ぶことはできないと思うのですが、プログラミング・数学・哲学のいずれかで身につければ、他にも応用が効く(プログラミングをしっかり極めて身につけた演算的推論の思考力は、哲学の勉強をするときにも応用が効く)というタイプの思考力です。このような適用できる幅が広いスキルはFar Transferrable Skills(多様な分野で応用が効く技能)と呼ばれています。よく最近言われるメタ認知じゃないですが、抽象度が一段高く直接的には学べないからこそ、あるテーマ(プログラミング)を学んでいるときにそういった一段上(高次)の抽象化できるスキルを意識して学ぶことが大切なのだと思います。

ミネルバ大学では、この21世紀に必要と言われている4Cを、例えば、科学に関する授業であったり、データサイエンスと基礎的な統計に関する授業であったり、トロッコ問題などの哲学の問題などを考えたり、複雑系(システム思考)に関するテーマを考えたり、ディスカッションする中で学んでくというカリキュラムになっているのではないかなと感じます。

これらの思考力って、誤解を恐れずに言うと、社会人になってからもちゃんと勉強を続けて、ちゃんとスキルアップを意識して仕事(その仕事を通じて得られるスキルは何かを意識)をしていれば、基本的には10年ほどで多くの人が身につけているスキルではないかとも思います。

私も、基本的には、20代のGEでの勤務(FMPというリーダーシップ・プログラム生をさせていただきました)、BCGでの勤務を通じて高めてきた論理的思考力や問題解決能力(同期はみんな超一流の大手から世界TOP10のMBA校へ留学ばかり)を系統立てて整理し授業でもやったという内容も多く、全く新しいことばかりということはなかったです。(40歳になって一般教養ーリベラルアーツの素養がゼロだったらそりゃまずいよってだけのはなしかもしれません)。例えば、「科学的思考力」に関する思考スキルも、1つ目のアメリカの大学院留学時代の原子核工学を勉強していた時に、国立研究所で研究もさせていただいていたので、授業でやっていることは知っていることが多かったです。私にとって全く新しく、また面白かったのはシステム思考(複雑系の科学)の授業でした。

逆に視点を変えて、外資コンサルで身につける論理的思考力、外資大手で通用するプレゼンスキル(含む、英語での的を得た発言ができるスキル)、必死に2年間研究して身につけた科学的思考力などを系統立てて2年で修得できるのはすごいことな気もしますし、特に学部生にとっては20歳のころにこういったことを学び、体得できるとするとすごいことだと本当に思います。一方、私が18歳のときに同じことを出来たか?(卒業できそうか?)と考えると多分無理だと思います。これは偽らざる本音です。そもそも論として、かなり高度な英語力が必要です。私自身英検1級TOEIC980点ですが、アジア系の同級生の中で圧倒的に英語ができませんでした。。。

ちなみに、私自身の成績は、Complex Systemは成績が良かったです。一方、自信のあった科学的思考力は成績が悪かったです。外資のコンサルでの経験もあったので論理的思考力も自身ありましたが、成績はよく有りませんでした。(だからBCGではアンダーパフォームで首になったのでしょうか…)

【ミネルバ大学卒業後】

今の時代は、20世紀の「教育→就労→リタイアメント」の3ステップから「教育→就労→サバティカル(学び直し・自分の見つ直し・少し休憩)→就労→…」となっていくと思います。ポストコロナでは就労自体も20世紀の就労とは明らかに毛色が違う複業の色が濃くなってきましたよね。私の場合、1つ目の教育は原子核工学(24歳)、2つ目は今回のミネルバ大学の大学院(43歳)、次は遅くとも55歳から(できれば55才時点でPhD取りたい)、「教育」または「複雑系の科学(システム思考)」の分野で博士号を目指したいと思います!こどもと一緒に大学通ってるかも?(でも、自分のおとんが大学の教室のとなりにいたら嫌ですよねぇ〜〜)

もともと42歳の時には2億円くらいの資産を貯めてセミリタイヤが予定でしたが、足元程遠い感じです(なので、ぜひ、パトロンになっていただける方はnote記事への投げ銭 or 拙書(一生食える「強み」のつくり方)ご購入よろしくお願いします!?)。

最近、とてもうれしいことに、日本人が立ち上げる、または、日本国内にも新しい教育のカタチはどんどん出てきています。(例:Infinity学院キリロム工科大学

私自身は、まずは日本の初等英語教育の刷新に貢献したいと思います。私自身、はじめての留学(20代前半)でも、2回目のミネルバ大学への留学(40歳)でも大変英語に苦労させられました。私のこどもはもちろん、これからの子どもたちに同じ苦労をさせたくないんですよね。DeepLなどの素晴らしいAIツールが出てきているので自動逐次翻訳機が出てくるのはすぐそこです。しかし、今の時代、教養としての哲学の重要性がうすれることがないように、語学を通じて文化を学ぶということも決して無視できない教養です。そして、幼稚園や小学校で英語にどう触れて、どう知的好奇心を刺激されるか?でその後の学びの楽しさが変わってくると思います(私は英語の面白さは大学生になるまで感じたことが一度もなかったです)。一人ひとりの子が楽しく学べる、そして学習の科学に基づいた、将来の役に立つ学びのスキルが身につく私塾(寺子屋)を我が子のためにも作り上げるつもりです。(参考:Magic Key Kids Academy)

【参考】

合格時に書いた記事(note)
ミネルバ大学関連のオフィシャルな社会人向け研修や高校向けなどの日本での展開はヒトラボさんが受託・運営

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