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大晦日RIZINで、軽量級MMA最高峰のカード"Champion VS Champion"が実現。

フロイド・メイウェザーの話題だけが先行してスポーツニュースを賑わせていたが、大晦日のさいたまスーパーアリーナで団体の象徴同士が対決する。RIZINはフェデレーションだが、看板がかかっている戦いなのでここはあえて「団体」と表現させてもらいたい。

初代RIZINバンタム級タイトルマッチ、堀口恭司 VS ダリオン・コールドウェル

昨年のRIZINバンタム級トーナメントを圧倒的な強さで優勝した堀口恭司と、今ではUFCに次ぐ大きな団体となったBellator MMAバンタム級王者、ダリオン・コールドウェルが初代RIZINバンタム級王者を決めるタイトルマッチで対戦する。

堀口はRIZINバンタム級GP王者ではあるが、RIZINバンタム級の階級王者ではない。一方で、コールドウェルはBellator MMAバンタム級王者なので、このRIZINの看板がかかったタイトルマッチに勝てば、RIZINバンタム級とBellator MMAバンタム級の二冠王ということになる。

創設したRIZINバンタム級タイトルがいきなり流出してしまう事態となった場合、Bellator MMAとのスケジュール調整などもあって簡単に取り返せないタイトルになってしまう。RIZINでバンタム級の防衛戦が簡単に組めなくなると、来年のRIZINのイベントに影響を及ぼすので、非常にリスクの高い賭けに出た。

それでも大晦日のビッグイベントで那須川天心にメイウェザーを用意したからには、もうひとりのRIZINの象徴、堀口恭司の相手にはそれなりの格の選手が用意されてしかるべきで、フェデレーションに加盟していて友好関係にあるBellatorの王者クラスと対戦するだろうと思われていたが、バンタム級王者との対戦が実現するとは思わなかった。

ダリオン・コールドウェルは、強すぎてBellator MMAで干されるほどの王者

私はBellatorに超人的な選手が三人いると思っている。その三人は、キング・モー、マイケル・ペイジ、そしてバンタム級王者コールドウェルだ。

軽量級があまり人気のないアメリカという土地柄もあるのだろうが、コールドウェルはBellator MMAではもはや相手が居なくて干されるほどの強さだ。

アマチュアレスリングのエリートからMMAに転向し、昨年のBellator 184で、エドゥアルド・ダンタスからバンタム級のタイトルを奪取。2018年3月のBellator 195でレアンドロ・イーゴを相手に防衛して以来試合が組まれていない。

この試合のポイントは「フィジカル」と「リング」、そして「ルール」

まず「フィジカル」だが、堀口のフィジカルはATTで鍛え抜いているだけあって強い。だが、もともとバンタム級より1つ下の階級フライ級を主戦場としていた。フライ級が適正だったのかどうかは本人しかわからないが、キャリアから考えると1つ階級を上げていることになる。堀口のナチュラル体重がわからないが、減量する前提で計量して、試合当日に体重が戻っても65キロがいいところだろう。

一方のコールドウェルは、178cm。体格からして本来はフェザー級以上の選手だろう。レスリング選手特有の体重コントロールで減量して、ミドル級あたりから落としてきているのだろう。試合当日はだいぶ戻して70キロ近くありそうな気がする。

同じように大きい選手といえば、RIZINバンタム級トーナメントで堀口が戦ったガブリエル・オリベイラが173cmと大柄だったが、コールドウェルは更に大きい。

決してフィジカルだけでMMAは語れないが、オリベイラとの身長差より更にコールドウェルとの身長差がある。フィジカルだけでいえば圧倒的にダリオン・コールドウェルが有利だ。

リングという魔物

このタイトルマッチのもう一つのポイントがリングであることだ。

RIZINは、多くのMMA団体で採用されているケージではなく四角いリングを採用している。リングは、ケージ(オクタゴン、円形含め)にすっぽり収まるほどのサイズで、面積が狭い分ロープやコーナー、相手選手との距離感が近い。

広い面積のケージでの試合に慣れている選手にはリングは戦いにくいだろう。うまく動かないと簡単に背中がロープに触れたり、気がついたらコーナーパッドを背負ってしまう。そして、ケージでの戦いではレスリング力が圧倒的に物を言うが、リングでの戦いはレスリング力だけでは難しい。

コールドウェルがBellatorで戦った過去の試合でも、レスラー特有の遠くからのタックルでテイクダウン(スープレックスなど)し、抑え込んで肘やパウンドで体力を削り最後にチョークで勝つパターンだ。それをリングで実行するのはなかなか難しい。

ケージであればタックルでテイクダウンがとれずとも、そのまま壁まで押し込んでしまえる。壁まで押し込んでから、相手に脱出されてもすぐに追いかければ高確率でテイクダウンまた壁に押し込めてしまうが、リングで相手選手を押し込んでも”壁”があるのはコーナーパッドの4ヶ所だけだ。

コーナーに押し込んだとしても、横に逃げられてコーナーを抜けられてしまった場合、追いかけて押し込もうとしても次のコーナーまでは距離があるし、逆にコーナーを反転されて抜けられた場合、今度は自分が追い詰められて打撃を打ち込まれる可能性もある。

ロープ際で押し込んだ場合は、飛び出してしまうとブレイクになってしまうし、うまく押し込んでもテイクダウンを狙っても、相手選手は倒されないように反則だがロープを掴むことも出来てしまう。

ケージにはケージの、リングにはリングの戦い方があって、大晦日はリングでの試合だ。

そしてRIZINは、「ユニファイドルール」ではない

アメリカのMMAイベントは、アスレチックコミッションが管轄しているので、UFCもBellatorも「ユニファイドルール」で試合は行われることになる。

ユニファイドルールでは「肘はあり」で行われるが、RIZINで許可されているサッカーボールキックや踏みつけ、四点ポジションでの膝蹴りは反則だ。

逆にRIZINでは肘があったり、なかったりする。「肘あり」の試合では、「肘あり」表記があるが、RIZINバンタム級タイトルマッチは、「肘あり」表記がない。ということは、肘が使えない可能性が高い。コールドウェルが得意のレスリングタックルで押し込んでからテイクダウンをとり、抑え込んでも肘は飛んでこない。

逆にマーク・コールマンよろしく膝蹴りを堀口の頭部に叩き込む可能性はあるが...とはいえ、堀口は、扇久保戦をみるに押し込まれてもうまく対応して、パウンドやサッカーボールキックがうまく打てるだろう。

RIZINルールで1年半戦ってきた堀口にルール的にも分がありそうだ。

RIZINファンなので堀口に勝ってほしい

素早い動きと強烈な打撃で未だMMAでは、デメトリアス・ジョンソンにしか負けたことがない堀口は、今やRIZINの象徴ともいえる選手になった。

堀口のスピードは、キックボクシングで戦った天心戦でも証明されている。

レスリング対策はばっちりATTで出来るだろうし、コールドウェルが素早い堀口を追いかけてテイクダウンとるのはそう簡単ではないはずだ。何度かテイクダウンを許すかもしれないが、いわゆる塩漬けになる展開は避けられる気がする。

テイクダウンを凌いでいつもの遠い距離から飛び込んでの打撃でダウンさせて、パウンドで試合を決めて堀口が平成最後の大晦日を締めてもらいたい。

看板のかかった息を呑むタイトルマッチが観られそうだ。

名勝負数え唄になるか

この試合の結果関係なく、2019年は堀口がRIZIN代表としてBellator MMAに参戦することもRIZIN実行委員長の榊原代表から合わせて発表されている。

RIZINでは国内MMA団体の王者あらかた倒してしまい、最早ふさわしい対戦相手がいなかった堀口と、Bellatorで挑戦者が決まらず干されていたダリオン・コールドウェルのマッチアップは、非UFCでは軽量級世界最高峰の戦いになる。お互いに強者と試合が出来てモチベーションが高いだろう。

万が一があったときに取り返すためのロードとして、堀口がBellator MMAに参戦してリマッチストーリーを作ることが可能だし、大晦日にスコット・コーカーに一泡吹かせてから、堀口がBellator MMAで無双してくれる夢も見れる。堀口はUFCのオクタゴンケージで試合たくさんしていますから、リングとケージの違いなど物ともせず勝つでしょう。

そして、2019年の大晦日に堀口恭司 VS ダリオン・コールドウェル Ⅱをやってる可能性は高い。強すぎる者同士は何度も戦う運命にあるので、名勝負数え唄になるのを期待したい。

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