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最近読んで面白かった本。『NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか?』他

NOISE、キドナプキディング、数学ガール
ネタバレがあります。

NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか?上下

面白かった。判断を間違える原因として、バイアスだけではなく、ノイズにも注目しなきゃだよね、って本。

上巻では
・ノイズとは何か
・ノイズはどんな種類に分けられるか
・ノイズは何故発生、増大するのか
といった内容が語られる。
上巻の結論を死ぬほど雑に要約すると「人間ってクソ、アルゴリズム様にお任せするのが吉」って感じ。

それは雑すぎるんだけど、「どんな人に対しても、本人よりも、その人の判断をモデル化したアルゴリズムの方が予測精度が高い」という実験結果は驚愕だった。

下巻では、ノイズを減らすにはどうすれば良いのか、という実践的な内容が語られる。
個人的には下巻の方が面白かった。

特に面白かったのは、超予測者についての章。
人間の予測精度に関する実験を行ったところ、異常な予測精度を発揮する人間が、全体の2%存在していて、彼らを超予測者と呼ぶことにした。
彼らがどうやって思考しているのかを調べたところ、それは分析的思考、そして確率的思考と呼ぶべきものであった……。みたいな。

超予測者の思考方法の雑な説明。

例えば「今年中に、ロシアとウクライナの戦争が終わる確率は?」って問題があったとする。

分析的思考……戦争が終わるには、どんな条件を満たす必要があるのかを考え、問題を分解する。

確率的思考……一般的に国家間の戦争がどれくらい続くのかを調べ、基準率を手に入れる。(その際、ロシアとウクライナの間の事情は一旦棚上げする)

分析的思考はいつもやっていることだったけど、確率的思考に関しては、僕にはその発想すらなかったので、「凄いな〜」と感心しながら読んだ。

他にも、「初志貫徹する人間と、意見を翻しまくる人間、どっちが良い判断を下せるか」ということも書いてあったりして、組織に何の興味も持っていない人間が読んでも面白い本だった。

キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘

アニメだったら
・物語シリーズ
漫画だったら
・めだかボックス
・化物語
・暗号学園のいろは
と、数々の西尾維新作品に親しんできたけれど、西尾維新の小説を読むのはこれが初めて。

OVAでクビキリサイクルを見ただけの、戯言シリーズ門外漢だけど、結構楽しめた。
それは、この物語が、僕が親しんできた『物語シリーズ』のオーディオコメンタリーと同じ形式だからというのが大きい。

いーたん達に代わって新しく主役を張っている、彼らの娘、玖渚盾。彼女は過去シリーズが進行していた頃には、まだ産まれてもいなかったので、過去シリーズで起きた出来事に対して、「そんなこともあったらしいね」って感じで、かなり距離をとったスタンスを保っている。

そして、声優達や監督達が制作時を振り返る一般的なオーディオコメンタリーとは違い、物語シリーズのオーディオコメンタリーは、羽川翼などのキャラクター自身が、自分達の過去の活躍を見返す形式になっている。

両者とも、「過去に語られた物語を、現在から、一歩引いた視点で眺める」というスタンスが共通している。
あと、会話とキャラクターが面白いので、これまでの流れを知らなくても全然楽しめる。盾と遠のコンビが良い。普通に推理を外しちゃうところとか、爆笑しながら読んでいた。

本作で唯一気になったところとしては、長期シリーズ故の欠点なのかなんなのか、
「今ではこんな言葉づかいしちゃダメか💦」とか、
「今の時代じゃあの行動は完全アウトだよね〜😅」
って感じで、現代の価値観におもねるおっさん臭さが文章の端々から臭ってきて、それが嫌だった。

数学ガール/ポアンカレ予想

面白かった。
数学ガールを読んだのはこれで2度目。
このシリーズはとにかく間口が広く、読みやすい。
その理由として、

1.会話ベースで解説が進む。
2.数学的な表現を、逐一日本語的な表現にひらいてくれる。
3.必要な前提知識が少ない。

ってのがある。僕は特に3が本シリーズの偉大な点だと思っているので、今からそれについて書く。
数学ガールで要求される前提知識はかなり少なくて、大体、高校数学くらいの知識をふわっと持っていれば、それで十二分に読み進められる。
そして、この間口の広さは、数学ガールの特徴、即ち、『ゴールの狭さ』に拠るものだ。

つまり、数学ガールはある分野を網羅的にマスターさせようという数学書ではなく、「よく聞くけどその意味は分からない、キャッチーな難問」を理解させることに特化した数学書だということ。
今作で言えば、この本のゴールはトポロジーをマスターさせることではなく、ポアンカレ予想を理解させるという一点に絞られている。

ゴールが一点に決まっているということは、登攀ルートも決まっているということで、だから数学ガール達は登攀に必要な知識を全て提供できて、だから読者は何の前提知識もなく読み始めることができる。

これは僕みたいな、野次馬的モチベーションで数学に触れようとする読者にはとてもありがたいことだ。
僕は別にトポロジーをキチンと身に付けたいわけではなくて、「ポアンカレ予想ってどんなものなんだろう」っていう疑問をスッキリさせたいだけだから。

ここからは今作の感想。
本作ではポアンカレ予想がどういう内容なのかは教えてくれるんだけど、ペレルマンの証明まで内容がたどり着いてない。終盤の予告編的な駆け足展開がちょっと不満だった。

それでも得られたものは多かった。
本書を読む前に、YouTubeなんかでポアンカレ予想の動画を流し見したときには、まるで時間発展を数学に持ち込んだかのように見えて、居心地の悪さを感じた。
しかし本書を読んで、別にそういうわけではないらしいというのが分かって安心した。
時間ではなくて、あくまで連続的な変化(が可能)であるという表現なのだ、と理解してるんだけど、これで大丈夫?


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