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『アナと世界の終わり』の感想。ゾンビ×青春×ミュージカル!

普段ゾンビものはあまり見ないけど、「ゾンビ×青春×ミュージカル」という響きが魅力的すぎて見た。めっちゃ面白かった。

「ゾンビミュージカル」とは、要はこういうことだ。主人公が変わり果てた街の様子に全く気付かないというアイデアは『ショーン・オブ・ザ・デッド』から来たものだろうけど、それをミュージカル仕立てにすることでシーンが強調されている。

主人公が一種「世界から切り離されている」ミュージカルシーンは、ゾンビに気付かない主人公という描写に噛み合っていて、その意味で筋の通った演出だと思う。

ゾンビと青春

ゾンビと青春は相性が良い。
「抑圧された日常に倦み、ここではないどこかへ行きたいと願う若者の欲求をゾンビが(過激に)叶える」というテーマはわりかし普遍的なもので、今作もそれに則っている。
しかし、彼らを抑圧する側である校長もまたこの世界(学校)に倦んでいたというのは新しい視座なんじゃないかと思う。

※そう書いた直後に『ゾンビスクール!』という、教師達がゾンビ化した子供を倒しまくる映画を見つけてしまった

とにかく、一番好きなキャラは校長になった。

現状に倦んでいるという点でアナと校長は同質だけど、新しい世界に行きたいアナの欲求と、自分の思い通りにならない世界ならいっそ全て壊れてしまえという校長の欲求は異なっていて、そこが最終決戦の対立になっている。
そしてそんな2人の相違点と共通点は、クライマックスで2人がデュエットする"Give Them a Show"の中で、掛け合いと合唱によって表現されている。名曲なので聴いてほしい。

しかしこれはつまるところ、ここ以外の世界をまだ知らない若者と、世界はどこもこんなもんだと知っている中年との対立であって、それが悲しくはある。

ゾンビとミュージカル

ゾンビと青春同様、ミュージカルと青春も相性が良いので、「ゾンビ×青春×ミュージカル」が面白くなるのは必然なのかもしれない。青春がいい繋ぎになっている。
決して気をてらっただけの出オチネタではない。

ゾンビとミュージカルを組み合わせたことによる新規性としては、現代劇であるにもかかわらず、ミュージカルによって内心を吐露した登場人物が普通に退場していく点がある。(レ・ミゼラブルかってくらいポンポン退場していく)
歌の力で心情的に寄り添っていた分、めちゃめちゃショックがデカくなる。
これは僕には良くも悪くも効果的に働いて、「もう良いじゃん……。歌の力でゾンビから治ったりすれば良いじゃん……」ってなるくらいにはショックだった。

尺の半分は歌ってるんじゃないかってくらい、とにかく歌いまくるし、その曲がどれもめちゃめちゃ良かった。
曲だけで言えばまだゾンビが出ていない頃の一曲目が一番好き。

ケチをつけるなら、映像的にはあまり面白味を感じなかった。というか全体的に野暮ったいなと思った。特にゾンビ周りのアクション。(学校に向かう道中の展開なんかも)
それでも大好きな映画になった。

その他、細かな感想。

・もっというとこれは「ゾンビ×青春×ミュージカル×クリスマス映画」であって、そこまでいくともうやり過ぎという感じがしてウケる。
まあクリスマス要素はそこまで強くなく、「家族で過ごす」というニュアンスを補強する程度のものだったけれど。

・1番好きなキャラは校長で、2番目に好きなのはブロンドの子。

・校長と主人公の激アツデュエットは展開的にもアツい。
囚われた父親の前で、ゾンビ相手に大立ち回りを見せる主人公。
これは冒頭の、父親が主人公の旅行計画を否定した部分に繋がっている。外の世界は危険がいっぱい、殺されるかもしれない。娘のことは自分が見守ってやらないといけないと思っていた父親は、最後に成長した娘の姿を見ることができた。

・マジで曲が良すぎる。
Break Away
Hollywood Ending
Human Voice
Nothing's Gonna Stop Me Now
Give Them a Show
が好き。

公式がめぼしい曲を上げてくれているので、色々聴いてみてほしい。

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