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【開始1分】即興2人芝居WS

ここ最近は、開始から10分間を興味深くするというシーンワークを中心に行なっている。
が、ワークを続けていく過程で、開始1分後にはすでに観客の興味が惹かれ(もしくは離れ)始めている事が判明した。
「え、たった1分!?」というどよめきがM78星雲から聞こえる。

1分間、観客の興味を持続させられるか。
それには下記2点が成立しているかどうかに大きく左右される。
 1. 演者の自立
 2. 演者同士のコミュニケーション

一つずつ説明していきたい。

< 1. 演者の自立 >
即興芝居とはいえ、ぼくのワークショップの場合は舞台となる場所だけは決まっている(「教室」や「屋上」等)。それ以外の事は一切決まっていないところからのスタートだ。開始から演者同士でコミュニケーションを取りながら物語を創作していくが、幕が開いた瞬間はゼロだ。何ひとつ決まっていない、まだキャンバスが真っ白な状態のこの瞬間が、演者の在り方として最も問われる瞬間の一つであるとぼくは考える。
その瞬間に
「あいつ、早く来ないかな〜」「ねぇねぇ何してんの?」など、他者に依存する表現をしてしまうのか。
それとも誰に依存する事もなく、役として自分の芝居を続けられるのか。
前者は不安を感じているプレイヤーが取りがちな行動である。平の凡であり、観客の舞台への期待値が一段階下がるのは否めない。
一方、後者はプレイヤーが自信もしくは覚悟を持たなければできない表現である。観客はこれから舞台上で繰り広げられるストーリーに期待を寄せざるをえない。

即興芝居をやっている人は誰しも
「即興なんて怖くないの?」
という質問をされた事があるはずだ。
つまり「即興=未知=恐怖」という方程式は普遍的なものなのだ。

だからこそ、その恐怖を微塵も感じさせずに舞台上で堂々と表現をされるとそのパフォーマーに期待するなという方が無理なものである。
舞台から目が離せなくなる。


< 2. 演者同士のコミュニケーション >
二つ目の要素はコミュニケーションである。有名な話だが、人が行なうコミュニケーションにおいて言語が占める割合はおよそ7%といわれる。
ぼく個人的には「いや8%はあるだろコラァ!」といった想いはあるものの、いずれにせよそう多くはない。

コミュニケーションとは情報の交流だ。
発した言葉の中身や声の抑揚はもちろん、仕草・振る舞い、目線一つさえ何かしらのメッセージを発している。本人さえ気づいていないサインが身体から発せられている事さえある。そういう複雑な情報のキャッチボールをコミュニケーションと呼ぶ。

例えば「俺の事好き?」と夫(役)に尋ねられた妻(役)が、夫から目線を外しそのうえ棒読みで「はいはい好き好き」と回答したとする。
この時、ぼくのようなヘタクソな演者は妻のそのセリフの言葉尻だけを取ってしまい「やったー!好かれてるー!嬉しいー!」と喜びに溢れた演技をしてしまう。観客は100%のコミュニケーションを目の当たりにしている為、7%でしかやり取りできていない芝居には満足できない。
本当に上手い演者はちがう。妻の言動に対して違和感を覚える。
(その違和感に対してダイレクトに関わっていくのか、それとも泳がせるのか、それは演者のチョイスなのでここでは言及しない)

ハリソン・フォードが「耳を傾ける事が演技の全て」と言うように、しっかり相手を聴く事が大切なのである。聴覚だけではないあらゆる感覚をONにしておく。
それにはリラックスする事が必要不可欠であるし、頭の中でアレコレ悩んでも決して成し得ない。
その役としてストンとただその場にいる事。
これは上述した「1.演者の自立」という事にも繋がる。

以上がぼくが考える、開始1分で観客の興味を惹きつけるための要素である。



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