Story Labo / 白崎 秀仁(しろさき ひでと)

物語を書く人。

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マガジン

  • マルと咲希 野良猫に出会って人生変わった話(小説)リスト

    オリジナル小説の連載です。猫と人間とのあったかい繋がりと、出会いによって成長していく姿を描いたお話です。

  • エッセイ(全7話)

    心理分析を交えたエッセイ(全7話)です。 自信がもてなかったり、過去の失敗や不安で前に進めない人が、無理なく前に進めるようになるためのヒントを、エッセイの中に組み込んでいます。

最近の記事

まやかしのポジティブ プロローグ【小説/ヒューマンドラマ、心理学】

プロローグ -1- まやかし 「よし、こんなもんかな」 マイは、鏡に映った自分の顔を確かめた。 昨日は少し、興奮して寝付くのが遅かったが、顔に寝不足の跡はない。 1Kの部屋の壁際には、本棚が並んでいて、「自分のやる気を引き出す10の法則」「宇宙の力を取り込むポジティブワード」「これで大丈夫! 運が良くなる50の習慣」など、マイにとって気分が上がる本が並んでいる。 マイは、本棚の前に立って一冊の本を手に取ると、そっと開いた。 何度も読んだせいか、折り目や線、メモ書きな

    • 自己否定を解消して心を楽にする方法 その②

      ■自己肯定感という言葉の分かりづらさ 自己肯定感という言葉が知られるようになって、本屋にもそれっぽい本がたくさん並び、Amazonで検索すると、5000件を越える商品がヒットします。全部が自己肯定感を高めることに直接的に言及した本ではないと思いますが、たくさんあるなぁって感じです。 確かに、自分を否定せずに肯定するって、自己否定の対局にあるような印象を受けますし、きっと正しいことだよね、と思えます。「肯定」というワードも、否定より印象いいですしね。 でも、僕はこの言い方

      • 黒い砂 テケテケ誕生の物語 第1話(小説/伏見警部補の都市伝説シリーズ/ホラー、ヒューマンドラマ)

        -1- 真中瑞江(まなか みずえ)は、目を覚ますとゆっくりと体を横向きにして、向かいの棚に置いてある時計を見た。 時刻は5時50分。目覚ましが鳴るまで、あと10分。少しだけ損をした気持ちになったが、上半身を起こして伸びをすると、床に足をつけた。 目をこすりながら歩き、絨毯と部屋のドアの隙間にある、30センチほどの隙間に並んだスリッパを履いて、ドアを開ける。 家の中は静まり返っており、リビングもキッチンも暗い。ようやく涼しくなってきた10月の朝は、少しひんやりとして、瑞江は

        • 雪の花 第1話(小説/ラブストーリー、ヒューマンドラマ)

          -1- 止むことのない雪が激しさを増し、膝まで埋もれると、足がさらに重くなった。 「もう少し、なのに……」 水無月優香(みなづき ゆうか)は、白い息を荒く吐き出しながら呟いた。 数十メートル先に見えていたはずの明かりは、チカチカと点滅するように雪にかき消されていき、どんどん遠ざかっているように感じる。 いつも、あの明かりだけが頼りだった。 真っ暗な空と、止むことのない雪。冷たくなっていく体と、乾いていく心。希望などないと言わんばかりに、雪は降り積もり、明かりを地平の向

        まやかしのポジティブ プロローグ【小説/ヒューマンドラマ、心理学】

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        • マルと咲希 野良猫に出会って人生変わった話(小説)リスト
          6本
        • エッセイ(全7話)
          7本

        記事

          ファンタジーの世界を書いてみたかった【魔女と語り部の物語が生まれた理由 その①】

          ①ファンタジーの世界を自分で作ってみたかった サブスクで公開中のファンタジーストーリー、「魔女と語り部の物語」(以下マジョカタ)は、僕がずっと書きたかった剣と魔法の世界を形にしたものです。 YouTubeでチャンネルをやっていたとき、毎月一本新作を書いて出してましたが、公開したもの、してないもの含めても、ファンタジー作品は一つもないのです。理由としては、書くとなると、舞台となる世界やキャラの設定に時間がかかることは分かっていたので、中々着手できなかったためです。 でもそ

          ファンタジーの世界を書いてみたかった【魔女と語り部の物語が生まれた理由 その①】

          自己否定を解消して心を楽にする方法 その①

          ■自己肯定感を高めればいいというけど メンタルが不安定になりがちな人の特徴の一つは、自己否定の気持ちが強いこと。 何かあると自分を責めてしまって、落ち込んでしまう。 かといって、自己肯定感が強すぎて、なんでも「これでいいんだ」としてしまうと、問題が解決されないからやっぱり落ち込む。そもそも自己肯定感を高めろって言われてもさ、できないんだよ……と、できない自分をまた責めてしまう。 これを解消するにはどうすればいいの? というのが、今回のお話です。 ■なぜ自分に優しくでき

          自己否定を解消して心を楽にする方法 その①

          原爆投下の是非を問う無意味さ オッペンハイマー鑑賞の感想

          ■原爆投下の是非を問うことの無意味さ 原爆の父と呼ばれた天才物理学者の生涯を描いた映画、オッペンハイマー。 彼が作り出した原爆は広島と長崎に投下され、その後世界は、核戦争の恐怖が覆う世界となり、私たちは今もその世界を生きている……というのは、映画のナレーションですが、ではオッペンハイマーは悪人なのでしょうか? いや、原爆を使用したアメリカこそが悪? 真珠湾攻撃をした日本が悪い? そんなふうに、道徳的視点から良いか悪いかで考えることに、あまり意味はありません。 なぜ意味がな

          原爆投下の是非を問う無意味さ オッペンハイマー鑑賞の感想

          どうやっても覚めない眠気、これが原因かも

          ■やる気があるとかないとかそんな問題じゃない眠気の正体 睡眠不足は良くない。 子供も知ってることですが、夜ふかしってついしちゃいますよね。 たとえばネトフリでアニメ観てて、 「これ終わったら寝よう」 でも一話終わる頃には、 「もう一話ぐらいはいけるか……」 そして気づくと、 「うわ、もう2時じゃん……寝なきゃ」 ってなって、続きが気になって脳がカッカしてるけど寝ないといけないので布団に入るけど中々寝れなくて睡眠時間3時間……みたいな。スマホ見ちゃってても同じよう

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          異物 第1話【物語】

          -1- いつもと同じ朝が、心の中に安心と退屈を混ぜ合わせ、新しい日が始まるという期待はすぐに、何も変わらない、人生はそんなもの、という結論を連れてくる。 明神尊(みょうじん たける)は、昨日を再生したような朝を過ごしていた。 いつもの時間に起きて、歯を磨き、出勤の準備をして、家を出る。駅までの15分ですれ違う人、横道から出てくる人は、顔を見ている頻度でいえば、友達よりも多いだろう。 駅に着き、ホームを見ても、電車に乗って周囲を見ても、同じようなものだ。知り合いではないが

          第1話 魔女狩り【マジョカタ 魔女と語り部の物語 シーズン1】(ファンタジーストーリー)

          -1-  その日、森はいつもよりざわめきを放っていた。何がどういつもと違うのか、そう問われても、フィオナはうまく説明できなかったかもしれない。ただ漠然と、違うという感覚だけが全身に広がっていた。 「みんな、今日はお散歩やめよっか……」  フィオナは、家の周りに集まってきた動物たちに言った。 陽の光が新緑の葉を照らして、日向の匂いがするタメライの森は、別名迷いの森という呼び名から連想される姿とは、少し違って見える。辺境の町、ステービアでは、森には魔女が住んでいて、一度入っ

          第1話 魔女狩り【マジョカタ 魔女と語り部の物語 シーズン1】(ファンタジーストーリー)

          なんで私は何をやっても駄目なんだろう……と思ったときに読む話

          「なんでうまくいかないんだろう……」 頭を抱えて呟く。 こうなってくるとあとは負のループにハマるのがいつもの流れ。 誰でもありますよね。 そして、そんなふうに思ってしまう自分を責める。 さらに、なんて自分は駄目なんだ……と言い出し、自分に対するパワハラのループに陥る。 もし頭の中で繰り広げられる自己否定を、他人に対して声に出して言ってるとしたら、相当酷いですよね(経験者です。セルフパワハラ1級ぐらいでした)。でもそれをやってしまうのが人間、自己否定の強い人だったりします

          なんで私は何をやっても駄目なんだろう……と思ったときに読む話

          キッカケは、一杯のエスプレッソ

          四宮咲希(しのみや さき)は、仕事に集中できずにいた。 理由は分かっている。一週間前に見た、あのシーンだ。 時間も正確に思い出せる。目が合ったときの彼氏、いや、元カレの顔も。 忙しかったフルタイムの仕事もようやく落ち着き、副業で始めたライター業も、うまく回り始めた。 彼……元カレとは、付き合って二年。桜色の未来も薄っすら見えていたが、すべて散って、残ったのは鈍色の景色だけ。 いつもはチェーン店のカフェで仕事を済ませるが、その日は気分じゃなかった。いや、その日も。 周りの人

          キッカケは、一杯のエスプレッソ

          死刑遊戯【小説/シリアス/フィクション】

          -1- ある動画 「坂下さん、これ、見てください!!」 「どうした? 何か手がかりでもみ……」 坂下昇(さかした のぼる)は、一瞬言葉を失った。 警視庁捜査一課の部屋は、一週間前から緊張が続いている。いや、凶悪犯罪と対峙するこの部署は、いつでも緊迫した空気があると言いたいところだが、今はスパイスを入れすぎたカレーのようにピリピリしていて、家にもろくに帰れていない坂下の顔には、苛立ちと疲労だけが広がっている。 「これ、なんだ……」 部下の刑事に見せられたスマホには、あ

          死刑遊戯【小説/シリアス/フィクション】

          マルと咲希 ~野良猫に出会って人生変わった話~ 最終話(小説)

          -9- まだ少し、身体に違和感はあったが、マルは以前と同じような生活に戻っていた。 サキが病院に連れていってくれたおかげ…… そして、治療してくれた獣医のおかげ…… 自分を激しく傷つけた、人間への恐怖と嫌悪…… 自分を助けてくれた、人間の優しさと信頼…… マルには、そういった、人間の極端な違いが理解できなかった。なぜ、同じ人間という種なのに、そんなに違いが出るのか。今わかるのは、サキとあの獣医は、信頼できるということ。そして、あの恐ろしい人間には、二度と捕まっては

          マルと咲希 ~野良猫に出会って人生変わった話~ 最終話(小説)

          マルと咲希 ~野良猫に出会って人生変わった話~ 第5話(小説)

          -7- マルは目を覚ますと、自分がプラスチック製のケースの中にいることに気づいた。頭がボーッするし、場所がよくわからないが、不思議と不安はなかった。 「おや、目を覚ましたね」 ケースの外から、人間の男が顔を覗かせた。 「君は、マルというのだろう。まあ、野良らしいから、本当の名前ではないのかもしれないけど……彼女がそう呼んでいたからね」 彼女というのは、サキのことだろう。 マルと呼ぶのは、あの女しかいない。 「まだしばらく安静にしていなさい。傷が治ったら

          マルと咲希 ~野良猫に出会って人生変わった話~ 第5話(小説)

          マルと咲希 ~野良猫に出会って人生変わった話~ 第4話(小説)

          -6- 咲希は、わずかに残った、このままではいけないという想いに火を灯し、転職サイトで応募を続けていたが、未だ面接にこぎつけることもできずにいた。 派遣会社にも登録したが、先のことを考えた上での条件に合う仕事となると、中々見つからず、鬱積した日々が続いた。 「あ……」 飲みかけのペットボトルを、蓋が開いたままにしてあったのを忘れて、何気なく体を伸ばしたときにぶつかり、カーペットに湖ができた。 「この部屋、こんなに散らかってたっけ……?」 初めて見るよう

          マルと咲希 ~野良猫に出会って人生変わった話~ 第4話(小説)