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【朗読】立原道造詩集

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杉浦明平編『立原道造詩集』(岩波文庫)から朗読します。
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【朗読】立原道造「春が来たなら」
*BGMあり。
*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

春が来たなら 花が咲いたら
木のかげに小さな椅子に腰かけて
ずつと遠くを見てくらさう
そしてとしよりになるだらう
僕は何もかもわかつたやうに
灰の色をした靄のしめりの向うの方に
小さなやさしい笑顔を送らう
僕は余計な歌はもう歌はない
手をのばしたらそつと花に触れるだらう

春が来たな

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*今回BGMを入れてみました。邪魔ですか(´・ω・`)BGM無し版がご希望の際はお知らせください(笑)
*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

消えた言葉は追ふのはよさう
消えた言葉は私のものだ
どこに どこに やさしい言葉

消えた言葉は空にゐる
一日 雲とうたつてゐるのは
どこに どこに 私の言葉

さがしに行つた人たちと
耳をすますなら 私は行かう
消えた言葉は私の

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*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

風の話

そんなことを言ふのはをかしかつた
僕らは まじめな顔で言ひあつてゐた
風が見えないことを

最初の子供は 風が埃のそばにばかり見えることを言つた
誰にもその考へは気にいらなかつた

次の子供は 風が枝のそばにばかり見えることを言つた
その子は木のぼりを考へた 葉がそよいだ

僕らはみんなで言ひあつた
そしてたうとう最後の子

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*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

かなしいまでにとほくを見て
眼よ おまへは泪をひたかくしてゐた

明るい雲の流れる街に
ボロの軒下を拾つて歩き
おまへはひとをさがしあぐんだ
つれなかつたひとを

耳よ おまへのなかに老いたかなしみが
潮騒をうたひ とほい靄の夜をささやいた

夕暮れて 夕暮れは汚れた城のやう
荒れた草生にひとを待つてゐた
おまへは 来ないひとを

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*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

鉛筆のマドリガル

夕方くらくて町で人かげを見た 僕はまちがへた
長いこと お前がここで待つてゐたと ほんとだらうか。

僕の口ぐせによると
僕はいつでも困つてゐた
そんな筈はないんだが
(からつぽの帽子を机にのせて
僕はしばらくぼんやりしてゐる)
窓はすばらしい天気だつたが
もし僕がそこへ出て行くなら
あの青空はきれいすぎるだら

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【朗読】立原道造「鏡」

*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。



床屋は
頭の上に
シヤボンで
駝鳥や塔を作つてくれる
不意に軽くなつた僕よ
僕にはもうまづしげなひげがない
だから歩きにくい
きれいな顔は
似あはない

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【朗読】立原道造「もつとたのしくて」

*朗読のテキストは岩波文庫版『立原道造詩集』に準拠しています。

もつとたのしくて

もつとたのしくてよいでせう
明るい色に塗りませう
わるい筆だがかまはずに
もつとたのしく描きませう
これはお前の似顔です
似てない姿がとりえです

二十一歳の下手な絵描きは
木曜日毎に水彩画をこしらへそのあとですつかり困つた あまり下手であつたから 彼は何かを諦めてしまつ

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