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60リフ(エントリーシート)

大学生の新卒採用に関わっていると、たくさんのエントリーシートを見ることになります。読む前に見ることが最初になります。

ザッと見た印象として、どうしても映像業界で働きたいという熱量を感じる方がいます。これは内容見てません、つか読んでません。でもたいてい読んでも「ああ、きちんと考えてるなあ」と思います。逆にあっさりしているエントリーシートを読んでも、やっぱりあっさりしてる。一所懸命書いている感じは伝わると思うのです。あくまでもパッと見です。なんかつまってるなあ、みたいな。

その次は、誤字脱字です。これも内容ではなく単純に誤字脱字。今やみなさんPCで作成しているのでそうそう誤字があるわけではないのですが、それでもあります。こういう人は「ああ、こういう細かいところが気にならない人かもしくは気がついていない人なんだなあ」と思います。誤字は誰にでもありますが、書いていると、ん?この漢字あってたっけ?ということがありますね。で、調べますよね。それができてないんだなあと思います。ま、人のことは言えないんですけど、偉そうには、ま、これ、雑文だし、ということで許していただいて。

次に気になるのは読みやすさです。これ、結構重要だと思っています。相手が読みやすいように書いているか?改行とか言い回しとかですね。結構重要で、読みにくいと飛ばしちゃうんです、申し訳ないけど。相手が読みやすいように書く。自分の気持ちを整理して読みやすいように書く。これだけで俄然読みたくなります。すごい文字量を横につらつら書いてくるともうどの段落読んでいるのかわからんくなるのよマジで。

さて、ここまで、まったく内容に触れていません。そうです、この辺りちゃんとしている人は内容もちゃんとしていると感じます。そりゃあね、100%そうだとは言いませんが、たくさんのエントリーシートを読んでいると勘が働くようになってくる。

自由課題というのがあって書いてもらっています。こちらの課題を無視してるとしか思えない人が必ず20%くらいいます。例えばですね、休日の過ごし方を教えてくださいという質問に、絵を描いてくるとか(説明書き無し)写真を貼り付けてくるとか、詩のような日記のようなものを書いてくるとかですね。そういう答えを求めていると思ったのならしょうがないですね。あとですね、休日は部屋でゴロゴロしながらゲームをするかYouTubeを観ていますとか書いてくる人がいます。あのですね、そりゃあそうかもしれないけどそんなこと書いて、どう思われたいの?この人たちはもしかすると、生身の本当の自分を採用して欲しい、素直な自分を受け入れて欲しい、飾らない自分を受け止めて欲しいとか思っているのかもしれませんね。受け取れません。

でも、ほとんどの70%くらいの方は誠実に映像がやりたいと思ってエントリーしてくれるので、毎回嬉しいというか、落とすの心苦しいというかそう思っています。不採用の基準はなく総合的にとしか言いようがないのがホントのところ。

さて、30代になった頃、ある会社に採用されて転職しました。同じ広告業界でしたが小さな会社からそこそこ大きな広告代理店に入りました。採用してくれたCDから後に聞いた話です。お前を採用したのは、ある言葉が気に入ったからだ、と言いました。その時の試験の問題で「今一番気になったりしているCMを一つあげて400字以内で簡潔に説明せよ」というものでした。僕は説明の書き始めに「私が今一番気になったりしてるCMは・・・」と書きました。「気になっている」でいいのに、「気になったりしている」って面白いこと書くなあと思ったからでした。そのCDは「気になったり」って書いたのは君だけだったから採用した、と言いました。

そんなわけで、受かるとか受からないとか、ほんの些細なことで決まるのかもしれませんね。だから、就職試験落ちても気持ちを切り替えて次に進みましょう。些細なことでいろんなことが決まるのです。それを運と言うのかもしれません。とか言ってますが、新卒の時は僕も落ちまくってましたら、痛いほど気持ちはわかります。不安で不安でたまらないですよね。

さて後日談がありまして。さらに数年後に僕を採用してくれたCDにこの話をしたところ。そんなことは言ったかもしれないが、本当は君の家族欄に生まれたばかりの0歳の子供がいるのを知って、こいつは死ぬ気で働くだろうと思って採用したと。うん、そうかもしれない。冷静に考えれば「言葉遊び」よりも「死ぬ気で働くか」の方が重要かも。その時に0歳の子供がいたというのも、これはこれで「運」ですね。



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