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【企業が使うブロックチェーンの事例】 - Corda編

こんにちは!ハラヒデ(@harahidey)です。

パーミッション型のブロックチェーン(もしくはブロックチェーンライクな分散型台帳)で最もポピュラーな3つ「Corda, Hyperledger Fabric, Quorum」に焦点を当て、解説していこうと思います。

今回のテーマは「Corda」
ガートナーの資料(Blockchain Trials Show Business Executives Drive Focused Solutions to Production)曰く、2020年に最も多く採択されたと言われている分散型台帳基盤です。

明日、2月25日14:00~15:00に「企業向けブロックチェーンの 選定方法とユースケースとは?」というセミナーを開催します!ここでは、3つのブロックチェーン基盤「Corda, Hyperledger Fabric, Quorum」を比較し事例を紹介する予定です。

こちらのセミナーでは今回のnoteに書いていない事例も取り上げ解説していく予定です。もしご興味ある方は、こちらからどうぞ!

【前提知識】Cordaとは

そもそもCordaって何??って方は下記の記事がオススメです。

【事例】Marco Polo - トレードファイナンス(貿易金融)

Marco Poloは、「オープンアカウント取引」と呼ばれる後払い方式の貿易取引をターゲットに、効率化を進めています。インボイス(明細書・請求書・納品書を兼ねた書類)の発行から融資や決済までを管理画面でワンストップで行うことができ、さらに顧客管理システムなどのERPへの統合も可能です。

Marco Poloには、「三井住友銀行」や「MasterCard」、ドイツのメガバンク「コメルツ銀行」など、30を超える企業が参画しており、参加企業とのERPやデータベースの連携が進められています。

また、2019年12月には5大陸25ヶ国以上、70社超を巻き込んだ7週間にわたる試験運用を完了させており、公式発表によれば、すべての参加者がMarco Poloの利用によって業務が大幅に改善する可能性があると回答しているようです。

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引用:Whitepaper - Evolution of Trade Finance20190510

余談ですが、三井住友銀行は「Contour」というCordaベースのトレードファイナンスのコンソーシアムにも参加し、ブロックチェーン活用を力を入れています。

【事例】Insurwave - 損害保険

通常、海運で使われるコンテナ船などは、1隻で億単位の商品価値を持つ貨物を運搬するため損害保険契約が不可欠です。海上保険の保険料は、運搬貨物の価格や航海ルートの危険度などに応じて算出されています。

したがって、特定の海域で何らかの襲撃事件が発生すると保険料が高騰するため、海運企業や荷主に対する大きな負担となるのです。

また、天候などの影響でルート変更を行い、ハイリスクな海域を通ることもあるため、保険会社が負うリスクが航海中に変動するケースも少なくありません。情報がリアルタイムに共有できれば、計画変更に伴うリスク判定を保険会社が迅速に行い、動的な保険料を実現できます。

しかし、トレードファイナンスの事例と同様に、貿易取引における情報共有の非効率性が課題となっているのです。

このような課題に対して海上保険プラットフォームの「Insurwave」は、保険料のリスク評価や損害保険契約の効率化を図っています。Insurwaveは、国際会計事務所「EY」(Ernst & Young)や「Microsoft」、スイスに本社を置くセキュリティ企業「Guardtime」や「R3」が提供しており、「Microsoft Azure」上で開発されています。

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引用:https://insurwave.com/blog/2/

2018年6月に商用利用が始まったInsurwaveは、2018年10月から2019年10月までの1年間で、ネットワーク上の通知が月25件から月1万件以上へと大きく増加しました。また、Insurwaveを利用する顧客としては、世界最大手の海運企業「Maersk」や保険会社の「Will Towers Watson」、「XL Catlin」などが名を連ねています。

【事例】Ledgertech - 損害保険

損害保険の事例としてはInsurwave以外にも、Cordaベースのデジタル保険フレームワーク「Ledgertech」を利用して、自動車保険の請求処理を効率化した事例があります。インド有数の自動車保険会社「Bharti AXA」はLedgertechを導入しており、パイロットながらも、従来は手動で処理していた自動車保険の請求の合理化に成功しました。

これまでは事故の発生を契約者が報告してから、請求の処理が完了するまでに数時間〜数日を要していましたが、Ledgertechベースのサービスに切り替えることで数分にまで短縮しています。

保険金の支払いに関わる情報(事故の状況など)を、修理会社や損害の判定人、保険会社、および顧客など多くの関係者間で改ざん困難な形で共有できるようになったため、このような効率化が実現したのです。

【事例】Fusion LenderComm - シンジケートローン

シンジケートローンとは、複数の金融機関が協調して、ひとつの融資契約書に基づき同じ条件での融資を行う資金調達方法です。巨額借り入れのリスクヘッジを目的に行われています。シンジケートローンの条件調整や契約書のレビュー、契約締結後の問い合わせなどの業務は、電子メールや電話を介して行われており、非効率性が課題となっています。

Corda上で開発されているシンジケートローンプラットフォームの「Fusion LenderComm」は、膨大な条項から成るローン契約書や条件の調整・変更などを管理するコストを削減し、迅速かつ正確な情報共有やミスの予防を可能にするソリューションです。

【事例】HSBC - 1兆円規模の私募債を記録

世界最大級のメガバンク「HSBC」は、紙ベースで記録していた100億ドル(1.1兆円)規模の私募債の記録をCorda上に移転、管理する計画を進めています。すでに債権記録の移行自体は完了していると2020年3月にCoindeskが報じており、2021年までに私募債のトークン化などを視野にプロジェクトが進められる予定です。

1兆円規模という多額の債権がブロックチェーン上に乗ることは注目すべき事例であり、HSBCの今後の動きが注目されます。

【事例】Spunta - イタリア銀行協会がリコンサイル業務のデジタル化

イタリアの銀行協会(ABI)は、Cordaを利用した銀行間のリコンサイル(残高照合)業務の効率化プロジェクト「Spunta」を進めています。ABIは、日本でいうところの「(一社)全国銀行協会」のような組織であるため影響は大きく、システムは2020年10月時点で約100にも登る銀行がネットワークに参加しているようです。

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引用:Corda_Spunta_Case_Study_R3_Nov2020.pdf

なお、これらは試験導入ではなく、すべて本番環境での稼働となっています。金融機関が全国規模でCordaベースのアプリケーションの導入を進めている点から、Spuntaは注目事例だと言えるでしょう。

【事例】e-krona - スウェーデンのデジタル通貨法定

スウェーデンの中央銀行はデジタル法定通貨「e-krona」の実証実験を行っています。e-kronaの決済プラットフォームは、Corda(Corda Enterprise)を用いて「Accenture」が開発しました。利用者はデジタルウォレットやICカードなどを介して、e-kronaの決済や銀行口座への送金が可能です。

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引用:The Riksbank’s e-krona project Report 2

現在は、パイロットプロジェクトを行っている最中で、2021年2月末まで実行される予定です。e-kronaはあくまでも技術的な検証であり、同国がデジタル法定通貨を発行するかの判断は留保されています。

【事例】大林組, 日建リース工業 - 資材レンタル業務の効率化

弊社(株式会社digglue)の事例のご紹介です。
リース取引に関する納品伝票、請求書などの個別の状態をブロックチェーン上でリース会社と共有できるシステムを、大林組様、日建リース様とのプロジェクトで開発いたしました。
建設現場では資材など多くのリース品の取引を行っており、その都度紙やエクセルベースでやり取りが行われ、確認業務に多くの時間とコストを割いていました。それらをまとめてデジタル化し、契約段階から請求までブロックチェーンで取引を担保することで、チェック業務の簡略化を行うことで、
数億円のコストが削減できると試算しています。

最終的には、建設会社・リース/レンタル会社を複数巻き込み、複数社間での支払いの自動化を行うプラットフォームを目指しています。

さいごに

今回の記事は弊社が運営するメディアBaaSinfo内の「分散型台帳Cordaの活用事例とは?金融や保険、デジタル法定通貨の事例も」という記事から転用し一部修正&加筆したものになります。

その他多くの事例や解説記事を書いているので、もしよかったら見てください。


毎度恐縮ですが、Twitterフォローもよろしくお願いします!

ではまた!

参考

BLOCKCHAIN & DLT IN TRADE.indd
Marco Polo Network successfully completes largest Blockchain Open Account Trade Finance Trial on R3’s Corda platform
Over 50 Banks, Firms Trial Trade Finance App Built With R3’s Corda Blockchain
リオティントと中国鉄鋼大手、貿易取引にブロックチェーン──スタンダードチャータード銀が初の人民元建て信用状 | CoinDesk Japan
海上保険にブロックチェーン、マースクなど本格運用
Enhancing Efficiency, Speed and Customer Experience in Motor Accident Insurance Claims Processing
Fusion LenderComm
HSBC、1兆円超の債券をブロックチェーンに移行 | CoinDesk Japan
Fast and Transparent Interbank Reconciliation Powered by Distributed Ledger Technology
Sweden to test e-krona central bank digital currency on Corda blockchain
Contour's Growth in 2020: A year in review
The Riksbank’s e-krona project Report 2
Corda_Spunta_Case_Study_R3_Nov2020

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