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100年続くレストランを目指して vol.9

東京・港区白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ柴田秀之が日々考えていることを綴っているnoteです。2020年10月「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」からスタートし、「クレリエールの料理」を経て、連載第3弾は「クレリエールを今から100年続くレストランにする」をテーマに食材や生産者さんとクレリエールのお話をしていきたいと思います。
★過去の連載は文末にリンクがございます。ご一読いただけたら嬉しいです。

Vol.9 オキオリーブ×クレリエール「オリーブ収穫イベント」レポート

2022年9月29日(木)香川県高松市のオキオリーブと初のコラボイベントを開催しました。今回のnoteでは、僕目線でそのイベントの様子をお伝えしようと思います!

当日は、僕を含めたクレリエールメンバー全員で朝7:45羽田発の飛行機に乗り香川へ。前夜も通常営業だったので、中には寝坊しないようにスタッフ同士で夜通しカラオケボックスで過ごして来た強者もいました (笑)。空港からオタクシーに乗り、10分ほどでオキオリーブに到着。澳さんが笑顔で出迎えくれました。イベント参加者の皆さんとも合流し、大きな荷物はゲストハウスに置いて、いざオリーブ畑へ。丘の上に広がる20,000坪のオリーブ畑の中を、収穫する木々の場所まで登っていきました。9月末とは思えない陽気で、日向にいると暑いくらい!時おり吹く秋の風がとても心地良かったです。

先ずは、澳さんが「収穫の仕方」をレクチャー、摘む時のコツや不適果の見分け方などを教えていただきました。オリーブは摘んだ瞬間から劣化が始まるため、収穫は時間との勝負です。傷つけないよう一粒ずつ丁寧に、しかし雑味になる軸は残さないよう、キレイに手早く!

始めの内は皆おっかなびっくりでしたが、程なく慣れて手際も良くなり、快晴の空の下、美しい緑と自然の香りに囲まれて無心で摘んでいるうちにどんどん楽しくなっていって、自然と互いにフォローしあいながら夢中で摘んでいました。事前に僕は澳さんから「機械の性質上、搾油するのに最低60kgの実が必要」と言われていて、一日で採り切れるか心配していたのですが、午前中だけで60kgを達成していました。すごい!

畑の中にあるガーデンカフェに移動し、ランチタイムです。香川の食材を使ったクレリエール特製パスタは、仕上げに澳Oliveを数滴タラリ。メニューの説明をしつつ澳さんと談笑していた僕ですが、実は内心かなりドキドキしていました。というのも、このランチはスーシェフに全て任せ、僕は手を出さずにいたからです。お店では僕の手を経ずに料理が出ることなんて絶対にありません。だから召し上がっている皆さんの表情を見てホッとしました。もちろんスーシェフの実力は知っていますし信頼しています!だからこそ任せたのですし。頭ではわかっていても・・・というところでしょうか。

デザートはオリーブの葉のパウダーをかけたカヌレ

午前中で目標に達していたので澳さんからは「午後はほどほどで良いよ」と言われたのですが、すでにオリーブの実を目の前にしたら摘まずにはいられなくなっていた参加者一同(笑)。予定より少し早めに切り上げながらも、最終的に90kgほど収穫しました。収穫後、クレリエールチームはガーデンカフェのキッチンでディナーの準備です。一方、参加者の皆さんはゲストハウスでしばし休憩した後、今日摘んだオリーブからオイルを搾るところを見学していただきました。僕も参加しましたが、搾油所に一歩入ったとたんにオリーブの香りがブワッと身を包みこんでくるんです。収穫した時点では香りは殆ど感じないので、ここで改めて「オキオリーブにいるんだ!」と実感しました。

成熟前の青い実のみを搾るため、採れるのは果実量のたったの3%!

場所を再びガーデンカフェに移し、程よく暮れて良い雰囲気の中、澳さんの「オリーブオイル講座」から夜の部がスタート。

オリーブの品種やオリーブオイルの特性、澳Olive独特の色合いの話など、さすが澳さん、とても分かりやすく興味深かったです。澳Oliveのテイスティングでは、爽やかで豊かな香りと味わい、舌触りに参加者の皆さんから驚きの声が上がっていました。澳オリーブだけを味わう機会はなかなかないので、貴重な体験になったのではないでしょうか。

18:00ディナースタート。その頃には日もすっかり暮れキャンドルの灯が料理を美しく彩り、ムード抜群。ご用意したメニューはこちら。
<お食事>
・オリーブハマチのカルパッチョ
・香川の魚介類のブイヤベース
・ラムのロースト
・ブイヤベースのリゾット
・澳Oliveのデザート
<お飲み物>
・ワイン
・オリーブの葉のお茶

オリーブハマチは、オリーブの葉を混ぜ込んだエサで育てたハマチで、通常のハマチよりもうま味や鮮度維持に優れ魚臭さがないのが特長。澳さん曰く「オリーブハマチの出回る時期になると香川県内のスーパーの鮮魚コーナーではオリーブハマチ以外のハマチは(買われないので)姿を消してしまう」そうで、香川県の特産品にもなっています。

オリーブハマチのカルパッチョ

澳Oliveのデザートは、生クリームの代わりにオリーブオイルを使って仕上げたアイスクリームにライムでマリネしたセロリと青リンゴのスープを合わせ、澳Oliveを数滴たらした一皿。お客様に大変好評をいただいてシェフパティシエールの野田も嬉しそうでした。

澳Oliveのデザート

食後の歓談も盛り上がり、イベントは20:00に終了。ご挨拶では、収穫も料理作りも頑張ってくれたクレリエールスタッフを一人ずつ紹介させていただけたことはもちろん、それぞれに温かい拍手や「美味しかった!」という言葉をかけていただいて、とても嬉しかったです。

参加者の皆さんをお見送りした後、オキオリーブスタッフとクレリエールスタッフとでお疲れさまの乾杯!ざっくばらんに飲んで食べて、気づけばもう日付が変わりつつある時刻・・・(と言っても、僕は早々に寝落ちしていたんですが。)その夜はゲストハウスに泊まり、翌日午後一番の飛行機で帰京。次の日からいつも通りにお客様をお迎えしました。

クレリエールの皆にとっては色んな意味でハードな2日間だったと思います。僕としては、自分たちが使っているものがどんな物からどんな風にどんな人の想いで作られているのかを身をもって知ることは料理人として大きな財産になると考えて「全員参加」としましたが、彼らにとって負担となっていた部分もあったでしょう。でも僕はイベントを終えた彼らの表情に僕自身とても力づけられましたし、きっとそれらの表情は、今後クレリエールにも彼らの料理人人生の中にも、何かしらの形で生きてくるだろと期待しています。
改めて、ご参加くださった皆さま、貴重な機会を共に作ってくれた澳さん始めオキオキオリーブの皆さまに心より御礼申し上げます。

そして、よりいっそう豊かで幸せな「レストランでのひと時」をお客様にお届けできるようチームクレリエールとして励んでいきたいと思っています!
来月には6周年のアニバーサリーも予定しています。今後共クレリエールをよろしくお願いいたします!

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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。

★過去の連載はコチラからご覧ください。

最初の連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」はコチラからどうぞ

 → 第一章 レストランのシェフになる
 → 第二章 プロの世界へ
 → 第三章 「料理長」を見据えて
 → 第四章 レストラン ラ クレリエール
 → 第五章 オーナーシェフの「仕事」
 → 第六章 ミシュラン三つ星を目指す

2つ目の連載「料理集」はコチラからどうぞ

 → 「ラ クレリエールの料理集1(第一皿~第五皿)」
 → 「ラ クレリエールの料理集1(第六皿~第十皿)」

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