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ラ クレリエールの料理集 vol.9

東京・港区白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。
2020年10月にスタートした連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」では、柴田の料理人人生を振り返りつつ、なぜ今ミシュラン三つ星に挑戦するのかを綴りました。そして今度は「クレリエールの料理」を切り口に料理人として、シェフあるいは経営者として、考えていることや思っていることをお伝えしたいと思っています。

今までの連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」はコチラからどうぞ
 → 第一章 レストランのシェフになる
 → 第二章 プロの世界へ
 → 第三章 「料理長」を見据えて
 → 第四章 レストラン ラ クレリエール
 → 第五章 オーナーシェフの「仕事」
 → 第六章 ミシュラン三つ星を目指す

「料理集」のバックナンバーです。
 → vol.1 第一皿(résumé) キスとジャガイモのクレープ トリュフとバニラのソース
 → vol.2 第一皿(recette) キスとジャガイモのクレープ トリュフとバニラのソース
 → vol.3 第二皿(résumé) 桃のガスパチョ
 → vol.4 第二皿(recette) 桃のガスパチョ
 → vol.5 第三皿(résumé) 鹿モモ肉のロースト ソースポワブラード パリパリアーモンド
 → vol.6 第三皿(recette) 鹿モモ肉のロースト ソースポワブラード パリパリアーモンド
 → vol.7 第四皿(résumé) 雷鳥のロースト
 → vol.8 第五皿(résumé) 青首鴨のロースト

第5皿(recette) 青首鴨のロースト

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【材料】(2人分)

青首鴨 :1羽

<1erサーヴィス>
青首鴨胸肉:半身
根まがりネギ:60g(3cmカット×6本)
そばの実:40g
大麦:20g
青首鴨のジュ:適量

<2erサーヴィス>
青首鴨胸肉:半身
フルールドセル:適量
黒コショウ(ミニョネット):適量
◆サルミソース
・青首鴨の肝臓:1羽分
・ジュ・ド・ヴォライユ:適量
・赤ワイン:適量
・コニャック:適量
・白コショウ:適量
・黒トリュフ:適量

<3erサーヴィス>
青首鴨手羽元、ぼんじり、心臓、砂肝:1羽分
藁:適量
ソースポワブラード:適量

<4erサーヴィス>
青首鴨ササミ:1羽分
青首鴨の骨:1羽分
鴨のコンソメ:適量
フルールドセル:適量
柚子:適量

【作り方】

<青首鴨の準備>
1.青首鴨の羽を取り、内臓を抜いて程よく熟成させる
 ★取り出した内臓で使うのは、肝臓、心臓、砂肝
  捌いた時に使うのは、ぼんじり、手羽先
2.オーダーが入ったら、たこ糸で縛り、表面の皮を香ばしく焼く
 ★オーブンを使って優しく火を通す。
  程よい焼き加減になったらオーブンから出し、温かいところで休ませる
◆◆◆4皿仕立て◆◆◆
*1erサーヴィス:胸肉の半身とそばの実のシンプルな一皿
*2erサーヴィス:胸肉半身のサルミソース
*3erサーヴィス:もも肉、内臓、手羽元のグリエ
*4erサーヴィス:捌いた骨を焼いて香りをつけたコンソメとササミの一皿

◆1erサーヴィス 青首鴨のロースト そばの実添え
1胸肉をロゼに焼き上げる
 ★胸肉の厚みのある部分を使う
2.青首鴨の脂を使ってネギを香ばしく焼く
 ★下処理の際に出た皮や脂をとっておく
 ★長ネギの品種は「根まがりネギ」を使用
3.上下をきれいに焼き上げたら、鴨のジュを加えて長ネギと一緒にコトコトと煮込む
 ★あらかじめ鴨のジュをソースのベースとしてとっておく
4.長ネギが柔らかくなったら取り出してガルニチュールにする
 ★残った鴨のジュには焼いたネギの風味が移っている状態(A)
5.塩ゆでしたそばの実と大麦を2:1の割合で盛っておき、鴨のジュで温めてガルニチュールにする
 ★そばの実と大麦は仕込みの時間に茹でておく
6.捌いた鴨の胸肉をもう1度焼き上げて、ネギ、そばの実をお皿に盛り、胸肉を盛り付ける
7.Aのジュを胸肉全体を覆うようにかけて仕上げる

◆2erサーヴィス 青首鴨のロースト サルミソース
1.鴨胸肉の表面をフライパンでもう1度焼いて余分な脂を出し、香ばしく仕上げる
2.1.を2mmくらいの厚さにスライスし、重ならないようにお皿に盛り付ける
3.フルールドセルと黒コショウのミニョネットをふる
<ソース>
4.青首鴨の肝臓をあらかじめ仕込んでおいたジュ・ド・ヴォライユと共にハンドミキサーの高速でよくまわし、目の細かいシノワで濾す
5.4.に黒トリュフのみじん切り、赤ワイン、コニャック、細かくひいた白コショウを加えて温めるように火をいれる
6.5.を2.にたっぷりと流して仕上げる

◆3erサーヴィス 青首鴨のもも肉と内臓、手羽元のグリエ
1.もも肉と手羽元の骨を外してグリエする
 ★藁で焼き上げて香りを移す
 ★内臓=心臓、砂肝、ぼんじり
2.ソースポワブラードを用意する
3.ガルニチュールとして菊芋のピューレ、ハーブ入りサラダ、キノコのソテーを用意する
4.お皿に菊芋のピューレを敷いてハーブ入りサラダを盛り、季節のキノコのソテー、もも肉、内臓、手羽元のグリエを乗せ、ソースポワブラードをかけて仕上げる
 ★ソースは、お客様に合わせて赤ワインソースやジュのソースに替えることもある

◆4erサーヴィス 青首鴨のコンソメとササミのゆず風味
1.捌いた青首鴨の骨をオーブンで焼き上げ、鴨のコンソメに入れて味わいと香りを移す
 ★鴨のコンソメは常備してあるものを使う
2.器にササミを乗せ、フルールドセルをかける
3.2.に柚子を振り、お客様のテーブルでコンソメを注いで仕上げる

柴田の工夫

ルセットの中の★は、その工程でのポイントです。一般的なものもあれば、僕自身の経験の中で見出したものもあります。お料理はちょっとした工夫で仕上がりがガラッと変わったりするので、参考にしてみてください。

最も気をつけている点の一つは下処理です。まずは内臓を抜くタイミングを見極めます。そして、水分をどこまで抜くか?熟成はどのくらいさせるか?などを考えながら、その後の管理を決めます。
クレリエールでは、召し上がるお客様に合わせて熟成度合いを調整しています。特にフレッシュな状態が好きな方には仕入れて3日以内くらいを目安に、大抵は1週間~10日くらい熟成させた状態で調理します。初めていらしたお客様の場合は、熟成の異なる2~3羽をお見せして、味わいの違いなどを伝えた上で選んでいただきます。お店の混雑状況にもよるので常に出来る訳ではありませんが、状況が許す限りやるようにしています。ジビエの場合は特に出会いの印象が大事で、その時に「ダメ」と思ってしまったら、その後ずっと苦手になってしまうのは残念に思うからです。
もう一つは、やはり火入れですね。青首鴨は皮がとても厚くて脂がのっているため、火入れでどこまで脂を残すかが非常に大事になります。焼き方はセニャンでも、お肉の味わい、噛み応えやジューシーさ、余韻など、お客様にどこまで、どのように楽しんでいただきたいかを考えて仕上げます。

今回ご紹介した「青首鴨のロースト」は、11月20日くらいから年内いっぱいお出しする予定です。年明けもお出しできますが、年内に仕入れた鴨になるので熟成が浅い方がお好みの方は、年内の方がよろしいかと思います。また前回お伝えしたように、12月になると鴨は自身のパワーを越冬のために使うようになるため、徐々に痩せていきます。ですので、常連のお客様の中には、11月15日の猟解禁から2便か3便目の鴨を目指して来店される方もいらっしゃるほどです。また、ご予約の際にお好みをお伝えいただければ、熟成度合いも調整してお出しすることも可能です。
お値段は張りますが、それだけの魅力のある素材であり、お料理だと僕自身は思っています。ご興味のある方は、ぜひ召し上がってみてください。
※仕入れの関係でご提供できない場合もございます。
 お召し上がりご希望の際は、ご予約の折にその旨をお伝えいただけると幸いです。

次回の料理集では、パロンプのお料理をご紹介する予定です。

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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。

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