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一人二役の時代:人口減少と働き手不足の克服に向けて

皆さんは、人手不足を身近に感じていますか?
人手不足倒産が増加してきている。

日本経済にとって、人手不足は深刻な制約となってきました。
都内の繁華街を歩けば、飲食店の窓に掲げられた「従業員不足のため、営業時間を短縮します」という張り紙が目につくことでしょう。
バス業界でも運転手不足により、都市部を含む多くの地域で減便が進行しています。
需要はあるのに、人手不足により商品やサービスを提供できない、というのが現在の状況です。

帝国データバンクのデータによれば、必要な人材を確保できずに経営が行き詰まった「人手不足倒産」は、2023年の上半期だけで110件も発生しました。
これは前年同期の約1.8倍に上り、通年で見ても過去最多のペースで増加していることを示しています。

待ち受ける加速度的な減少

しかし、これには深刻な問題が潜んでいます。実は、働き手の総数は女性と高齢者の就業拡大により、今でも過去最多圏にあるのです。
総務省の労働力調査によれば、日本の就業者数は2023年7月に6772万人に達しました。
これは新型コロナウイルス禍の影響から回復し、通年ベースで見ても、過去最多だった2019年の6750万人を上回る数字です。

なぜなら、働き盛りの25〜44歳の就業者数が大幅に減少したからです。
約10年間で、大阪市の人口を上回る290万人もの人々が減少しました。
育児中の女性は時間に制約を抱えて働く人が多く、高齢者はフルタイムの就業を避ける傾向があります。
さらに、75歳以上の後期高齢者に達した「団塊の世代」は労働市場から退場し始めています。
このため、若年労働力の不足を、女性と高齢者の労働参加で補うモデルがいよいよ限界に近づいているのです。これが日本の現在地です。

未来の課題:人口爆縮

ここから先の課題は、担い手の加速度的な減少が待ち受けています。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2020年に7509万人だった15〜64歳の生産年齢人口は2040年には6213万人まで減少すると予測されています。
2020年から2030年までの10年間の減少ペースは年平均で約43万人ですが、
2030年以降の10年間は年平均で約86万人に倍速で増加するでしょう。つまり、わずか10年足らずで、政令指定都市の人口に匹敵する担い手が毎年減少する時代に突入するということです。

世界の人口は18世紀から20世紀まで「人口爆発」と呼ばれるほどのスピードで増加しました。
しかし、人口は減少トレンドが定着すると、そのペースが加速する傾向があります。
少子化の傾向が定着した日本では、爆発的スピードで人口が縮小する「人口爆縮」と呼ばれる社会局面が迫っています。

課題の克服に向けて

日本の総人口は2056年に1億人を割ると予測されていますが、深刻なのは人口規模ではなく、その縮小スピードです。
労働供給が急速に減る一方、高齢化率は上昇するため、介護や看護などのサービスを中心に労働需要は高止まりするでしょう。
リクルートワークス研究所の試算によれば、2030年には341万人、2040年には1100万人もの労働供給不足が発生するとされています。

この危機を乗り越えるためには、あらゆる組織で省人化を徹底し、人材の無駄づかいを許さない社会に転換する必要があります。
賃上げ競争とそれについていけない企業の淘汰は、貴重な労働力を安易に使うことを防ぐ一つのメカニズムとなるでしょう。
ただし、自由競争に委ねるだけでは社会に不可欠なエッセンシャルワークの人材難は解消できないかもしれません。
特に介護や看護、公共交通などは賃上げについていけず、深刻な機能不全が起こりかねません。

この問題に対処するためには、競争を阻害しない対策も必要です。
山田久法政大学教授は「消費者の利用状況に応じて、一定の業種に賃上げに充てられる資金を渡すなど競争を阻害しないかたちの対策を検討すべきだ」と指摘しています。
つまり、ある業種や職種においては、賃金を上げる余地があるときには、それを積極的に行うことで、人材確保に貢献できる可能性があるということです。

そして、もう一つのキーワードが「一人二役」です。
これは個人が複数の役割を担うことを指します。
自分の専門分野で努力するだけでなく、企業の内外で別の職務を兼ねたり、勤務時間外に社会活動で能力を生かしたりすることです。
このアプローチは、人手不足の克服に向けて非常に有望です。

一人二役の時代の事例

一人二役のアプローチは既に日本の一部地域で実施されています。
例えば、岐阜県東白川村では、住民が様々な仕事を持つ労働者協同組合が設立されました。
彼らは本業の合間に茶畑の草刈りを代行し、空き家の管理、高齢者の送迎なども行う予定です。
このような協同組合は、地域社会の持続可能性を高める一助となっています。

また、神奈川県の老舗旅館、陣屋が、職場でのマルチタスクを追求する一例です。
この旅館では、客の迎え入れから食事の提供、浴場や客室の管理清掃といった多様な業務を、わずか4人のスタッフが相乗りでこなしています。
テクノロジーも活用され、スマートフォンを使ったチェックインや決済、客室のキーの配布などが行われ、省人化とサービス向上が同時に実現されています。

結論:未来への展望

人口減少と働き手不足は、日本の将来にとって深刻な課題です。
しかし、一人二役のアプローチや効果的な賃上げ政策など、適切な対策を講じることで、この課題に立ち向かうことは可能です。
日本は、その経済と社会構造を再構築し、人手不足を克服する方法を見つけ出す必要があります。
そして、この取り組みが成功すれば、そのノウハウは他国にも広まり、国際的なベストプラクティスとなるでしょう。

未来は明るい展望を秘めています。
競争を阻害しない対策、一人二役の活用、テクノロジーの進化などが、新たな時代を切り開く鍵となるでしょう。
そして、人口爆縮という課題を克服すれば、その経験とノウハウは他国にも影響を及ぼし、共に未来を築く手助けとなることでしょう。


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