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「レンタル」「シェア」という購買行動から考える、農機具のこれから

まだ日本でも珍しい?農機具(農業機械)の宅配レンタルサイトを運営している者です。「レンタル担当バイヤーのナオト」でGoogle検索すると普段掲載しているブログが大量に出てきました。ちょっと照れますね。

ブログでは商品やサービスの紹介をメインにしているのですが、ここでは少し個人的な考えというか、「レンタル」や「シェア」の観点から、ニッチな世界である農機具について色々な方に知って頂けたらなぁと思います。

まず農機具ってどこで買うの?

レンタルを含めたシェアリングエコノミーに興味がある方は多いと思いますが、それと同じくらい、そもそも「農機具」ってどこで売ってるの?どんなもの?という方も多いはず。こういう時はGoogle検索で調べましょう。

震えるぐらいシンプルな説明ですね。
「農業機械(トラクター・草刈機とか)+農具(クワ・鎌とか)」が合体した言葉と考えるとイメージしやすいです。

ちなみに僕が普段仕事をしているのはこんなお店です。ある時はバイヤー、ある時はWeb担当、ある時は店頭販売員、ある時はサービスエンジニア・・・なかなか色々な仕事をさせてもらってます。

一般の方向けに多くの農機具が流通するのはホームセンターで、農家の方はJAで機械を購入するケースが多いと思うのですが、おそらく皆さんの町にも、「●●農機」とか「●●機械」という屋号でトラクター・草刈機・チェンソーなどを修理販売しているお店があると思います。

このお店がいわゆる農機具の「プロショップ」と呼ばれるお店ですね。ホームセンターの商品に比べて耐久性や性能などが高く、価格も高いことが多いです。

エンジン式の刈払機(草刈機)であればホームセンターで19,800円ぐらいで買えますが、プロ向け商品だと40,000円~50,000円ぐらいが相場でしょうか。その分、性能や使いやすさも桁違いで、最近はネット通販を利用される方も増えてきました。(アパレルなどに比べると全く普及率が違いますが)

農機具の「レンタル」「リース」って?

僕が運営しているサービスはいわゆる「宅配レンタル」と呼ばれるサービスで、GEOさんやTSUTAYAさんがやっているような業態に近いのですが、(少なくとも農機具業界では)あまり一般的ではありません。

色々と定義はあるのですが、「レンタル」というと、「定額料金を支払って、他の人や会社から機械を借りて使用できるサービス」のことです。

価格は自由に設定でき、だいたい1日●円~という価格設定のところが多いですね。また、無償で草刈機を貸してくれる自治体などもあるようで、各地でローカルなレンタルサービスが展開されています。

弊社のレンタルサービスでは(送料別ですが)1日2,500円から、プロ向けのいわゆるハイブランドの機械(通常50,000円ぐらいするもの)を出品しています。

最近の業界紙などを見ていると、JAさんが「リース」「共同購入」に取り組んでいるようで、これらは少し異なる購買行動になります。
※細かく言えば、リースという定義にレンタルという定義が内包されている感じ

リースの場合、「ファイナンス・リース」という形式が一般的なのですが、これは会社の事務所に置かれているプリンターや社用車のイメージです。

リース会社が自分の代わりに商品を買ってくれる代わりに、3年~5年かけて、分割で商品代+金利をリース会社にお支払いするという契約で、与信さえ通れば好きな商品を購入できますし、期間終了後に返却することも、所有権を自分に移動することも可能です。

共同購入はタイトルで触れた「シェア」の考え方に近いですね。農機具業界では昔から一般的なのですが、「トラクターがほしいけど、高いしそんな頻繁に使うわけでもないから地域のみんなで割り勘しようぜ」という考え方です。

世間のイメージとは違うかもしれませんが、農業に従事する方は基本的に集落単位の繋がりや関係性・コミュニティをすごく大事にしていると僕は考えています。そういうプラットフォームの中から、「シェア」という考え方が自然発生するのはある意味必然と言ってもいいかもしれませんね。

農機具における「レンタル」「リース」「シェア」の現状

上記で言う「レンタル」「リース」「共同購入」は、「買うのは高い」という”お金”に対する価値観からスタートしていますよね。

ここが実はポイントだと考えています。

レンタルの場合だと、あらかじめお店や個人が用意したものを使いますので、商品は選べませんが、(相手が許す限り)いくらでも借り続けることが可能です。もちろんその分費用は発生しますが、期間によっては「買ったほうが安い」という場合も考えられます。

リースの場合だと金利が発生する分、分割決済にこだわりがなければ購入よりは必ず「買ったほうが安い」になります。

共同購入は支払いも修理もシェアする分、「買うよりも安い」になります。
ここで「じゃあ全部シェアすりゃいいじゃん」という価値観が生まれるのですが、意外とそこがシェアリングエコノミーのはじまりだったのかもしれません。

しかし、農機具の場合は「じゃあ全部シェアすりゃいいじゃん」で解決できない部分がでてきます。シーズン性の問題ですね。

草刈りはそうでもありませんが、田植え・消毒・稲刈りなどの作業はタイミング命で一刻を争う大事な作業なので、集落や地域ベースで共同購入した場合、「使いたいときにすぐ使えない」んです。

更に、ゆるやかなCtoCの場合は責任の所在もシェアされますので、機械の整備や管理についても一定のルール整備が大事で、ひとつ間違えれば殆ど使っていない人が費用を大きく負担してしまうようなモデルになってしまいます。

地域のコミュニティでこういった争いが発生すると。。。好きな言葉ではありませんが「めんどくさい」ですよね。”お金”という経済的な制約に加えて、”すぐ使える”という自由に対する制約の有無も大事になります。

▼経済的な制約
(安い)レンタル>>>>共同購入>>リース(高い)
※レンタルは期間による

▼自由に対する制約
(すぐ使える)リース>>>>レンタル=共同購入(すぐ使えない)

何が言いたいかというと、短期的なコストだけでなく使用頻度なども考えて計画的に利用しましょうということですね。

農機具において「購入」が最もベターな購買行動と考えられてしまう理由

少し攻めた見出しですが、ここまでの流れを見てみると、レンタルやシェアというものがすごく面倒なものに感じます。

そこで、一周して「どうせ使うんだからお金のあるときに買えばいいじゃん」という結論になるわけですよね。いつでも使えて安く買える、中古農機が人気の理由はそこです。

少なくとも農機具業界においてはレンタルよりも中古購入のほうがマーケットは広いです。「中古トラクターの買い取りなら~」というラジオCM、一度は聞いたことありませんか?

要するに、「経済的な制約」「自由に対する制約」から抜け出せない限り、「買ったほうが楽」という結論から抜け出せないのです。

僕の場合はひとつの手段として「宅配」や「ハイブランド」を掲げていますが、制約からいかにして解放されるかはレンタル業界やCtoCサービスの課題だと思います。

他の業界を見ると色々な取り組みをされている方がいて参考にしているのですが、他の意見とかも色々聞きたいな・・・とか考えながら、長くなるので初回はこのあたりにしておきたいと思います。

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