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Ep19 リチャードと甘い汁

その昔、ロシアがかつてUSSR(あるいはCCCP)と呼ばれていた時代。アイツらときたら低級もいいところのワイン、それこそ皮や絞りカスが混ざった、そんな粗悪品をルーマニアからタダ当然で仕入れては、ベトナムに米と交換させていたんだ。まぁ、ベトナムの農夫たちはワインなんて飲んだことなかっただろうから、そんなものでも美味いもんだと、ありがたく頂戴していたんだろうけどな。搾取とはそういうことだ、ワインだけに・・・

リチャードは続けた。養女をもらった話を以前したろう?実は大変だったんだ。何がって?養子縁組がさ。タイの裁判所で彼女を実子にするための手続きに、ものすごい金がかかったんだ。タイの支配層には正義なんて存在しない。金でしか動かないやつらなんだ。手続きする相手にワイフが「袖の下」を渡す。すると待てど暮らせど進展しなかった物事が、とたん、スルスルと前に動き始める。悲しいだろ。けど、これが実態だ。

ペプシコーラがあるだろ?ペプシ社、通称ペプシコは、かつてタイでのビジネスパートナーに製造を任せていた。ひともうけして、タイに市場性を見出したペプシコは、彼らを見切って自らタイに進出し、自前の工場を造る道を選んだのだが・・・その結果がこれだ。リチャードは、タイのローカルドリンクである「est(エスト)コーラ」のボトルを取り出して見せた。タイのビジネスパートナーは、ペプシコの突然の裏切りに怒った。そして、ペプシコーラとまったく同じ原料、製造法で自分たちのブランド、estコーラをつくってしまったのさ。ぐびぐびぐびーー、ふぅーー。ほら、同じ味だ!

人間の欲深さは主義や思想を超えていく。誰かが誰かの甘い汁を吸い、そうやって私腹を肥やしている。リチャードは、そういえば、いつもコーラばっかり飲んでいる。甘い汁を、いつもいつも・・・

画:久保雅子 www.masakokubo.com/

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