「与信管理」って知ってますか?

  「与信管理」という用語は、経営者や営業、経理、債権管理担当などの実務者にはよく知られている。しかし大学生には殆ど知られていない。筆者が確認したのは経営学部の4年生であるが、与信管理は知らなくても、リスクマネジメントはよく知られている。
 
 与信管理は、与信リスクのマネジメントを行うものであり、リスクマネジメントの一施策である。販売や融資を行う企業にとっては必要不可欠の業務であり、内部統制の一施策としてのリスクマネジメントは、経営管理に於いて極めて重要な位置を占めている。
 歴史的にも「与信管理」は「リスクマネジメント」より遥かに古くから使用されている(起源は会計・記帳の発生からとの説がある)にも関わらず、この知名度の低さは何なのか? その理由を考察してみた。

①金融機関の用語だった
 「与信」という用語は元々金融機関が融資先に対して「信用を供与する」を略して「与信」と表現していたものである。これが一般企業の販売先に対する売上債権について用いられるようになったのである。

②消極的な外部へ公開
 与信管理について、金融機関は積極的に外部に公表することなく、自社のノウハウとして蓄積していた、業種柄当然のことと言える。一方、一般企業の多くは自社で独自の管理手法を開発し、独自で運営し、敢えて外部に公表することはなかった。なぜなら、債権管理は業種や業態、業容、置かれた立場によって区々であり、一企業では一般的・普遍的な管理手法として形成し得なかったのである。

③社内の管理手法の公開
 唯一、商社は与信管理部や信用管理部、審査部などの専門部署を持ち、極めて多くの債権を管理することによって、研究のレベルを高め、一般的・普遍的と言えるだけの管理手法を構築していた。そして、その部員または出身者が、その管理手法を著書等出版物で公表するようになった。これが我が国に「与信管理」という用語を知らしめることになったのである。

④大学では講義が難しい
 与信管理は、販売管理と財務管理にまたがり、その深度は深く、大学4年間の授業では経営学部でも到達できるものではない。また、リスクの把握および評価に於いては、経営学、経済学、会計学、財務分析、商品知識、業界知識、景気動向、法的背景など極めて幅広い知識が必要とされる。さらに実務経験に基づく経験と勘に頼るところが大きいため、実務経験のない教授には荷が重く、授業できる教授は極少数に限られることとなった。このため全国的に「与信管理」の授業を持つ大学はごく僅かに止まっている。

 以上の通り、与信管理の知名度は低いが、認識する、しないを別にして、殆どの企業が実施し、経営上極めて重要な役割を果たしながらも、空気の存在の如く、敢えて言うまでもない、当たり前の業務として認識、存在しているのである。

                           以上


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