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東京都小学校教員採用試験倍率1.1倍が招く危機

東京都教員採用にて、小学校の受験倍率が1.1倍という衝撃のニュースがありました。この記事では、なぜ採用試験が低倍率だと危機的なのか、教員採用制度と教員不足の点から解説します。


採用試験倍率が脅威の1.1倍

東京都教育委員会が実施した2024年度の教員採用試験について、小学校の受験倍率が1.1倍という低水準を記録しました。一時期は高倍率で難関と言われていた教員採用試験ですが、今やほぼ全員の受験者が合格する試験となってしまっています。

教員全入時代の到来です。『希望する人ほぼ全員が教員になることができて良いではないか』と感じる人もいるかもしれません。しかし、今の教員採用のシステムにおいて、この低倍率は教育崩壊に直結する危険性があります。

採用試験低倍率だと危険な理由

教員の質の担保ができなくなる

倍率を3倍切ると、教員の質の担保ができなくなるなどと言われます。しかし、この際、教員が足りてさえいれば質は二の次といえる危機的状況です。質の担保など気にしていられない、もっと深刻な問題があります。以下で説明します。

講師が確保できなくなる

教員定数には、講師(非正規雇用)の教員の枠が一定数あります。自治体によりますが、5〜10%程度です*1。つまり、教員採用試験の募集枠が全てではないということです。

教員採用試験の募集枠外でも、一定数の教員(非正規雇用)が最初から必要になっています。このシステムは、雇用の調整弁や人件費の削減などの様々な理由のためです。講師は採用試験不採用者から選ばれます。つまり、ほぼ全員が合格してしまっては、講師が足りなくなるのです。それは、学校の先生が足りなくなる、担任の先生がいない、教科を教える先生がいない、などの事態を意味します。

代替教員が確保できなくなる

代替教員というのは、正規雇用の教員が病気休職や産休などで働けなくなった場合の代わりの先生のことです。この代替教員も、『先生になりたがったが採用試験に受かっていない』人から採用されます。講師の場合と同様に、ほぼ全員が採用試験に受かってしまっては、正規教員が精神を病んで休んだ場合に、代わりの先生に来てもらうことができなくなります。結果、先生がいなくなるという事態が起こるのです。

これからの学校はどうなる?

4月に学校の先生がいない、年度途中で学校の先生がお休みして代わりの先生も来ない、授業がずっと自習、などということが今後は当たり前になるでしょう。講師や代替教員のなり手がいないのですから仕方ありません。既にいる先生は、授業、校務、部活などで一杯一杯で、それ以上の業務負担を担うことは困難です。

まとめ

採用試験低倍率が教育崩壊へ直結する危険性をはらんでいることを説明しました。これから、東京都教育委員会採用担当者は、講師探しに奔走することになるでしょう。しかし、採用試験に受からなかった人は他自治体で合格し採用されてしまっていたり、民間へ就職内定が決まっていたりなど、講師として採用できないことが多々あります。結果、先生がいない、足りないという事態が頻発する懸念があるのです。

参考文献

*1 文科省 非正規教員の任用状況について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/084/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2012/06/28/1322908_2.pdf


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