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一人の男がバーのオーナーになるまで【懐古録】~カフェ&バー経営の生き残り論~ #2

え? ワタクシ開業した理由ですか? それは

止むにやまれず

……なんて言うと各方面から怒られそうなのですが事実なんスわ。
世間的には夢や希望を持って店を持たれる方が多いのではなかろうかと思います。
ですがワタクシ団塊ジュニア世代、世の流れ的なものとしては良い高校、良い大学、安定した企業に入って結婚、40代でマイホームを持ち、2人の子供の成長を見守る……そうなると信じて疑わなかったんですよね。

ですが、

世の中と言うものは残酷なもので就職浪人をした上に慌てて見つけた就職先は福利厚生ナニソレおいしいの? みたいな会社。
挙句の果てには人間関係がうまくゆかず転職を繰り返した先にまっていたのが30代半ばまでフリーター生活という老後は何も保証もないお先真っ暗というのが現実。
んで、思ったのが

老後も食い扶持は自分で稼がにゃ野垂れ死んでしまう!

じゃあどうするか?
頭を捻るワタクシ、辿り着いた答えが当時アルバイトをしていた酒屋の業務の中に眠っておりました。

そうだ、夜の店をやろう。

この『夜の店』というものに憧れがあったとか、楽しそうだからと思ったわけではありません。
なぜ、このジャンルを選んだか? それは

70歳超えてもバリバリ現役。

そういった方が多かったからです。
しかも配達先として関わる方のほとんどが元気でパワフル、昼夜逆転、飲酒、喫煙という三大不健康のフラグを全て回収しているにも関わらず年齢を一切感じさせない立ち振る舞いをされておりました。
人生を終えるギリギリまで経済的に自分のことは自分で面倒を見ないといけないのなら、この道しか残されていない、そう思ったからですね。

10年持てば後は惰性

他の界隈は知りませんがススキノではそう言われております。
これはワタクシが身を置く酒屋や、それに伴い関わっている飲食店のオーナーさんからもそういった声を聞きます。
だた、そういった傾向があるというだけで確約されたものではありませんが、自身も肌感でそれがあながち間違いではないんじゃないか、そんなことを思ったわけですね。
それもあって開業するにあたりワタクシが目標としたのは

いかに店を長持ちさせるという戦略を取るか

ということです。
自身の中で開業とは将来のための年金みたいな位置付けですね。
細々と夫婦で食ってゆけるだけの余剰金があればそれでよし。
国がくれないのであれば自分で稼ぐしかないわけです。
それに伴い店の規模を大きくしたり、二号店、三号店と多店舗展開には

興味ありません。

必要な分だけパパっと稼いでハイ終わり。
それじゃあ店を大きくしても一緒じゃん? と、思われるかもしれませんが、ワタクシがそちらに舵を切らなかった理由、それは

ダメになった時のダメージがデカい

大きなお金を動かそうとすると、どうしても従業員の確保が必要となりますね。
うまくいけばそれで良いのですが、多店舗展開や規模が大きい店がダメになっている姿というのを多々、見てきました。

そもそも、

自身はお金持ちになりたいとか、良い暮らしをしようなんて興味ありません。
最低限、食うに困らなければそれでよし、ローリスクローリターンが性に合っているわけですよ。
将来的にダメになったとしても己の力で立て直しがきく、自身が店を運営する上で最初に決めたことでした。

家賃分の確保

店をやろう! と、決めた日からワタクシが決めていたのは、半年経ったらバイトしようということでした。
お客さんを全く持っていない状態でバーを開業したのもあり、そもそも最初から店一本で食ってゆけるなんて思っていませんでしたしね。
自身の予想では半年で運転資金が底を尽きるとも思っていました。
そして案の定、オープンして二か月、三か月と過ぎてゆくうち資金が乏しくなり、計算上では半年後には運転資金が底を尽きる、という事実でした。

うん、予想通り。

こんなこともあろうかと店の経営の傍ら、アルバイトを探しておりました。
複数の方からは『経営者がアルバイトなんてみっともない』なんて声をいただいたことがありますが、あくまで自身は

とにかく10年持たせる

という目標なので、そんなこと知ったこっちゃありません。
仮にアルバイトを辞めました、店を潰しました、そんなことになった時、食わせてくれるのか? 

ハイ、食わせてくれません。

言いたい人には言わせておけば良いのです。
泥臭くても店が残りさえすればそれが正義、経営にあたっては正解なんじゃないか? そんなことを思ってます。

カネがあるのは心の余裕

そんなわけで出来きつつある自身の店の経過を、Facebookに投稿した記事コチラ
ちょっと時間が経った後がコチラ

いやー、何もありませんね。

この頃にはもう、経営一本で続けてゆけるなんて微塵も思っておりません。
いや、ムリだから。
その後、無事開業に漕ぎつけ半年後、いつものようにそれまで勤めていた酒屋(現在は出戻りしてます)に顔を出すと社長から言われました。

「実際経営厳しいだろ? どうだ? ウチで働いていかないか?」

まぁ、バレてますわな。
続けて

「ウチで家賃分だけ稼いでけ、そうしたらな、余裕が出てくるから」

渡りに船とはこのこと、酒屋に戻れは店舗の家賃分は出る。
後は店で生活費分だけ稼げば良いわけなので、グっとラクになります。
そして10年逃げ切れば何とかなだろうし、ならない時は経営のセンスが無かったんだと畳んでしまえばよい。
ここから急に心に余裕が出来たのか、壊滅的だった経営状況は少しずつお客さんも獲得していった結果、上向きになり、一年後には夫婦でギリギリ食ってゆけるだけの資金が確保できるようになったわけです。

これは、

一人の力ではどうしようもない大きな店舗を持ってしまったら出来なかったことです。
小さい店舗で固定費があまりかからなかったからこそ、アルバイトさえすれば店を続けられたんですよね。

まぁ実際

経営が苦しいからと客からボッタクる店というのは存在します、というか存在しました。という表現が正しいのかな。
ではなぜ『存在しました』という表現になっているのかというと、そういった店は見事に

潰れていったから

何故知っているのかって? そりゃあワタクシ現役の酒屋ですもの。
地域に根差した酒屋ってのはね、身を置く繁華街の状況は色々と知っているものなのですよ。
特に注文を受けた酒を持って直接オーナーとやり取りする立場だと尚更です。

あ、あと、

飲料メーカーさんからも聞くことがあります。
営業さんが店に顔を出す時があるのですが、経費で落とすでしょ? と知っている方には料金を上乗せするオーナーさんもいらっしゃるそうですよ。
まーぁ、そんな店も

漏れなく潰れれゆくんですけどね

経営が苦しくなると経営者としてよろしくないことをしだす。
んで、バレる。
客が離れる、そして潰れる。
こうならないように最低限生き残るためのアルバイト、ワタクシに限っての話かもしれませんが今現在店が続いているので正解だったのかな、そんなことを思ってます。

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