マガジンのカバー画像

読書記録

42
私が読んだ本の記録です。
運営しているクリエイター

#小説

薬丸岳 著『Aではない君と』

この本は、息子が殺人事件の容疑者となってしまった父親の話です。以前読んだ窪美澄さんの『さよなら、ニルヴァーナ』も少年犯罪を扱った小説で、加害者・被害者の親・加害者に恋をする少女・それらを取材する小説家の視点でリアルに描かれていましたが、息子が加害者かもしれないと思う親の視点もまた、自分にはとても想像が及ばなかった心理だと、深く感じました。 昔、『「少年A」この子を生んで』という、神戸連続児童殺傷事件の加害者少年Aの両親の手記を読んで、自分の子どもが加害者となってしまったとき

小説の効能

最近小説をよく読むようになった。ここ2年くらいは、エッセイやビジネス書や自己啓発書を読むことが多かったし、フィクションより現実世界で起こっていることが知りたいという気持ちがあったのだと思う。 でも、先日ラジオで落合恵子さんの講演を聞いたときに、落合さんは、ノンフィクションで書ききれない事実を小説なら詳細に表現できるという趣旨のことを仰っていた。同じようなことを、はあちゅうさんも最近ツイートか何かで書いていたと思う。 小説は時に、事実を我々が手に入れられる情報以上に、目を覆

辻村深月 著『盲目的な恋と友情』

自分が長く深く抱えていた悩みは、その深刻さは異なれど、多くの人が同様に抱えていたものなんだなということは、年齢を重ねるにつれてだんだん判明してくることだ。でもそういった苦悩の沼みたいなものに、はまり続けてしまう人と、いずれ通り過ぎることができる人の差はなんなんだろうということを考え続けてきて、だんだん分かるような気にもなってきた。 苦しい恋から永遠に抜け出せない蘭花と、コンプレックスに苛まれ、友人との距離感がうまくつかめず、理想の人間関係が築けない留利絵。その「イタさ」が、