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【ブルーロック×人的資本経営(×HBR) 第二章】どうしたらメンバーが"FLOW"状態に入り、組織は最高の結果を出せるのか

サッカー漫画であるにも拘らず、人的資本経営のエッセンスが沢山詰まっている、『ブルーロック』。

今回のテーマは「FLOW」。「ゾーン」と呼ばれることもあるこの状態ですが、これについてのブルーロックの解説と、Harvard Business Reviewにて紹介されている論文の内容がかなり関連していました。

どうやったら社員がFLOW状態に入り、生産性を爆上げしてくれるのか。漫画と論文を起点に考えてみました。

ブルーロックでの解説

「挑戦的集中」

ブルーロックを作った奇才:絵心甚八は『FLOW状態』を以下のように定義します。

人間が自らの"最適経験"により獲得する、精神の『没頭状態』である。

ブルーロック 第111話より

そして、そのFLOW状態に入るための最も重要な条件を『挑戦的集中であるか』、即ち『自分にとって適度な難しさの目標であるか』と定義。

「自分の能力>>挑戦」であれば、ヒトは「退屈」になり、「挑戦>>自分の能力」であれば、人は「不安」になる。その間の「挑戦的集中」の状態に入らなければ、FLOW状態には入れないとします。

ブルーロック掲載の図を参考にして、筆者自作

「自分だけの」夢中、「自分だけの」挑戦か

絵心は「挑戦的集中」を迎えるためのもう一つの条件として、「自分自身のオリジナルなものであるか」を置いています。

つまり、例えばドラマやTikTokを見たり、ゲームをしてもたらされる「夢中」は、確かに没頭出来るかもしれません。ですが、それはあくまで「受動的であり、コモディティな夢中」です。

そんな夢中からはどんな成長も集中も生まれません。

今立ち向かおうとしている「適度な挑戦」は「自分だけのオリジナルなものか?「自分の人生のストーリーが生み出したものか」?この問いに対してYES、と答えられて初めて、その先にFLOWが待っている、とします。

ブルーロック第111話より

ハーバードビジネスレビューでの解説

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー23年5月号に掲載された「部下と上司の職務を正しく設計する方法(Designing Jobs Right)」が、絵心が言ったことを、よりビジネスに落とし込む形で解説してくれています。

高すぎる難度、低すぎる難度の職務設定は、全体最適にならない

低すぎる難度の職務では成長は実感できず、「気乗りしない職務」になり、高すぎる難度の職務は、「達成不可能な職務」になります。

その結果、いずれのケースでも社員は職務を勝手に定義しなおし、「自分にとって達成可能でやりがいのある職務」になるように努力をしてしまう。

そうすると、全体最適を目的に職務を差配したにも拘らず、各自が勝手に職務を変更することで、期待した結果が全く得られなくなる、と本書は述べます。

具体例①:既存PJと新規PJを同一人物にアサインすると、新規PJが進まない

殆どの場合、既存PJに関連する職務は難度が低く、新規PJは「どこから手を付けてよいかすら分からない」難しさがあります。

そうすると、新規PJに対する「不安・恐怖」が勝ち、より既存PJにリソースを費やし、結局全く新規PJが進まない、というケースが世界中で起きている、と筆者は述べます。

なお、本書にはそのような記載はありませんが、私は「既存PJの方が業務範囲の再設定が容易である」という点も挙げられると思います。

つまり、既存PJであれば、良くわかっていますし、自由度も高いので、「自分にとってベストな難易度の職務を自分で作れる」。一方、新規PJは上記の通り、何したらいいかわからないし、自分では設計できない。

だから、自分のコンフォートゾーンを既存PJで作り上げてしまう、ということがあると思います。

具体例②:リブキンのケース

筆者の勤務先でずば抜けた成果を残した「ジャン・リブキン」というリーダーがいました。

彼がやっていたことは極めてシンプルで、「メンバー各人がどのような役割を果たしたいかを、プロジェクト中に何度も話し合った」というもの。

他のリーダーは「リーダーがタスクの割り振りを決定していた」のに対し、リブキンは極力各人の希望を実現してタスクを差配したのです。

そしてさらに、その後も対話を通じて以下の対応を取りました。

不安が続くメンバーに対して:
腰を据えて支援を行い、メンバーが選択肢を見つけるためのタスクを構成する。

やりがいを感じられていないメンバーに対して:
タスクの再設計を通じて、十分にやりがいのあるタスクに変える方法を見出す。

つまり、常に「全てのタスクが、各人にとって"やりがいのある達成可能なもの"になるように、部下一人ひとりと話し合いながら共同で設計する」ことを第一においてプロジェクトマネジメントを行った、ということです。

この二つを融合させることで得られる3つのTips

どうでしょう。「不安」と「退屈」という二極設定をしたブルーロックと、言い方は違えどかなり同じ考え方ではなかったでしょうか。

私はこの2つを融合させることで、3つのTipsを得たと思っています。

①各人がその会社で働く「理由・目的」を共有する

こちらのnoteでも書きましたが、改めて「各人がなぜその会社で働いているのか」を言語化し、それが共有されることは非常に重要だと確信しました。

何故かというと、「オリジナルな挑戦」=「その人の目的に沿った挑戦」であり、目的から大きく外れた職務に対してFLOW状態に入ることはまず無いと思うから。

なので、具体的な職務・タスクの話に入る前に、その前提となる目的(Purpose)を互いに理解しなければ、その先はありません。

②「各業務がどこにプロットされるか」を上司と部下で常に確認する

そして、「正確な現状把握」が肝心です。上司が「やりがいある仕事だ!」と思って渡しても、部下は「退屈な仕事キタ」と思ってるかもしれません(めちゃありそう。。。)。

例えば月に一度、このテーブル上に各業務をプロットしていき、「FLOW状態」から大きく離れた業務について、しっかり話し合うことが出来れば、かなり相互理解が進むでしょう。

仮に「退屈な業務」をお願いしなければならないときも、それが「退屈なものである」と相互に認識していることは非常に重要であると考えます。

③「全体最適<<個別最適」⇒「全体最適」

リブキンの「個別最適を追い求めたら、どこよりも高い生産性をチームが実現した」というケースが象徴していますが、リーダーは常に「メンバー個人の最適」をまず考える癖をつけないといけない、と強く感じました。

当社が導入しているOKRもそうですが、どうしても目標はトップダウンが強くなります。そして、それは間違っていないと思います。

が、「全社→各組織→メンバー」の全フローを全てトップダウンでやってしまうと、最終的にメンバーの生産性が上がらず、全社目標が達成されない、という誤謬が発生します。

各人の目標や職務、タスクまでトップダウンで決めるのではなく、「達成するべき目標に対して、各人は何をするか」を各人の「挑戦的集中率」が上がるように設計していく

これがメンバーが最高に成長し、組織が最高に目標を達成する仕組みである。そう確信出来ました。

おわりに

「トップダウンかボトムアップか」。

この神学論争は依然として世界中あらゆる所で議論されています。ですが、今回の「ブルーロック×HBR」から得られた示唆は、個人的にはこの問いに対する一つの解を導き出してくれたように感じています。

この「理論」を現実に落とし込むアプローチをセルソースで実現していこうとしているところであり、きっと障壁にもぶつかります。ですが、社長以下全てのメンバー全員が幸せで結果を出す組織にするべく、頑張ります。

では、また来週。

細田 薫

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