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性同一性障害 戸籍上の性別を原因とする「社会生活上不便なこと」って具体的に何?

ども、Hikaruです。
10代の頃 よく「パス度」という言葉を使っていました。「パス度」とは、例えば 私は生物学的性別が女性ですが、男性として見られたいために ホルモン治療に始まる色々な工夫をした結果、どれだけ 一般の人から男性と認識されるか 自己評価した度合い を言います。ネットで調べると「社会的指標」と出てきますが、相手から「あなたパス度高いですね」なんて言われることが ある筈ないですから、結局のところ 自己評価の話です。

で、現在で言うと 私は全く「パス度」という言葉を使わなくなったのですが、それが何故かと言うと パスできているか 考える必要が全くない、と言って過言でないくらい 誰が見ても男性に見えるようになった、ようです(これも自己評価)。
当時は コンビニで買い物をしてレジに向かうと その店員が腫れものに触るような視線を私に向けてくるので、外に出ることさえガチガチに緊張した時期もありました。それが今や 何もなくただ過ごせる、それだけのことが 幸せなことなんだ と最近 私は色々と過去を思い出す最中に気づきました。いつの間にか自分が 望んだ生活を実現できていました。

若い世代のGID当事者のポストを読むと 同じ言葉を使う方がいるので、まだ死語ではないな!と勝手に安心しております笑

一見して男性に見える私ですが、不便なことは 尽きないものです。その ほとんどを その都度 自力で突破してきたつもりですが、どうにもならない こともあります。

その1つである 戸籍上の性別は 自力では変えられません。裁判所に申立して審判にて許可を得る必要があります。
と言うわけで本題に移ります。

戸籍上の性別を理由とする不便なこと を考えてみて気づくこと

考えてみると、意外と 限定されます。先ほど出てきたパス度の話で言えば、 パス度が低いと それはそれで とても不便や困難がありますが、戸籍上の性別とは全く関係ない話です。あくまで戸籍上の性別は 戸籍、健康保険証等 書類上の性別表記の話であって、その書類を 表に出さない限り 相手には分かりません。

逆に言えば、見た目どうこう 頑張って、一見して男性にしか見えなかったとしても、戸籍上の性別が記載された 書類を見られれば、 その努力は水の泡となり  多くの当事者が それにより様々なハンデを負ったり 何かをやる前から諦めてきたりしてきたのではないでしょうか。
戸籍上の性別が問題となる場面は少ないにも関わらず、性別表記された書類は その特性上 人生の大事な場面で必要となり そこで不都合が発生する訳ですから、たまったもんじゃありません。

このnoteを読んで 非当事者の方には GID当事者が日々どんなことに不便を感じているか 知って欲しいです。そして、当事者の方にも考えてほしいことがあります。それは最後に書きます。

戸籍上の性別を理由とする 社会生活上不便なこと 7つ

例えば 私の場合ですが、実例として下記7つ 列挙します。

その① : 誤って事務処理される
戸籍上の性別通りに契約書類に自署、申告しているにも関わらず、携帯電話の契約やクレジットカード等の顧客情報の登録、勤め先での健康診断の予約等において、誤った性別で登録事務処理され、後日不備として電話がかかってきたり、窓口で混乱を招くことがある。

その② : 賃貸を借りるのに困難がある
個人オーナーとの賃貸借契約において、戸籍上の性別と外見が異なるために、後で仲介会社に「先ほど内見した人は誰だったのか。」と連絡があり、収入等 信用に全く問題ないにも関わらず 一悶着あったことがある。

その③ : 仕事で不都合がある
仕事上 本人確認を必須とする取引(不動産取引)において、大手業者を相手にする場合に、取引担当者として 運転免許証の他に 念のため の措置として健康保険証の提示を求められることがあり、性別欄を見た取引業者が顔をしかめる。

その④ : 場面に応じて嘘をつかなければいけない
接待等でゴルフ等に やむを得ず行く場合に、戸籍上の性別によって渡される更衣室の鍵やシャワールームの案内が異なることから、更衣室•シャワールームを利用しないことを前提として、混乱を招かないように 便宜上「男」と窓口で申告する等 嘘をつかなければならないこと。

その⑤ : 人として与えられた権利を行使するのも一苦労
戸籍上の性別の問題かは分からないが、選挙の投票時の本人確認において、明らかに 他の人より時間がかかる

その⑥ : 落とし物あるある
性別が記載された書類を落とし、落とし物(健康保険証)の確認の電話を駅や交番にした際に、戸籍上の性別表記と声色が一致しないために、本人ではないもの疑われる。

その⑦ : 人と同じ幸せを享受できない
女性と結婚する場合、戸籍上の性別を理由に同性婚に該当し婚姻することができない。

上記は実際に 私が申立した際に 裁判官宛に送った手紙に記した 不便なことです。

戸籍上の性別を理由とする 社会生活上不便なことを読んで 皆さんはどのように感じましたか

GID当事者の方だったら、あるある と思う方もいれば、不便なことはそれだけじゃ無いよ と思う方いるでしょう。他にも思い浮かぶ方は 教えていただけると嬉しいです。
非当事者の方は 読んでどのように感じましたか。
上記 不便なことを、申立時に 裁判官宛に メッセージ含め書面にしたものを 先に同僚に読んで もらったところ 下記のような返信がありました。

「(Hikaru)は男性として生活していて、傍からはそれが成立しているように見えていて
これだけ生活で不便に思うことがあるんだなあとリストを見て考えさせられた。
他人から嫌悪感を示されて嫌な気持ちにならない人はいないよね。
それをこの申し立てでなくすことができるってのはとっても意味のある事、誰も損しないもん。
てか契約ごととか大きな出来事に際して、性別でひっかかんの、ストレス計り知れんな???
わしなら叫ぶ
(中略)

(⑦について)
当たり前に享受しているこの幸せを、求めることすらできないのかと。
(中略)
わたしは私が好きな人にはみんな幸せになってほしいし、幸せに貪欲でいてほしいと心から思っていて
(Hikaru)が今回自分の手でそれをつかみに行くと聞いて、とても嬉しかったよ

生きていくうえで大多数の人がしなくてもいい苦労も努力もしていると思う
これが差別になったらマジごめんだけど、
自分の生き方とか考え方とか、たくさん考えて苦労してそれでもやり抜いて、
そういう経験をしているLGBTQ当事者の人たちはとっても強くて賢くて、尊敬してる
強く生きなきゃ生きていけない世界にはしたくないけどね。」

こちらのコメントは 本人の許可を得て掲載しています。当事者の中には「埋没」と言って、誰にも告げないまま 生きている方々がいます。そういった場合に 周囲の人から 客観的な感想等聞く機会が ありませんので、このように考える 同僚•友人•協力者等が きっと身近にいますよ ということをお伝えしたくて掲載しました。

不便なことについて 個人的に思うこと

①〜⑦思い浮かぶ限り 書き出しましたが、正直 ⑦以外は 不便であれ なんとかなりますよね。私にとっては軽微なことです。銀行口座は数行作ればそれきりですし、その賃貸が借りられなくても 他を あたれば いずれ借りられます。可能性はゼロではない。繰り返せば、いずれ実現できます。ただし⑦だけは 申立をして戸籍上の性別を変えない限りは 実現できません。これだけ不便なんですよ感を出すためのに、主旨としては⑦だけだったんですが、ダメ押しで①〜⑥書いた と言うのが実のところです。

婚姻の問題を除くと 当事者からすると この程度しか挙げられない程度に、「戸籍上の」性別が問題となる場面は 少ないです。少ないですが、非当事者から見れば 大変だな と思う場面があるでしょう。
これだけのこと のために申立しているんです。だからこそ、どうして 手術までしないと認めてもらえないんだろう、上記の不便が解消されることと 引き換えに 求められる負担は あまりに過大だと 私は思います。
戸籍上の問題のみならず、さまざまな場面で 色々と不便があるのに。
先ほど ありました同僚の返信に書いてあって 確かにそうだ と私も思いましたが、例えば私の 上記の不便なことが解消されて 一体誰が損をすると言うのでしょうか。誰も損をしないですよね。私1人を認めたら、当事者 全員を認めなければいけない とはなりません。裁判官が審議する時点で、その審判結果は その人 個人のものになります。
トイレや公衆浴場など 女性スペースの問題を 声高に叫ぶ方がいますが、身体的な 生物学的性別の話と書類上の 戸籍上の性別を分けて考える 理性があれば 全く別の問題の話であると分かる筈です(女性スペースの問題については 別のnoteに書きますので、ここでは触れません)。

私がいちいち 不便なことをnoteに書いて発信する理由

私は別に お涙ちょうだいを やりたいとか、苦労を認めてほしいとか、悲劇のヒロイン等を演じたくて このnoteを書いている訳ではありません。私の勝手な思い込みですが、今まで GID当事者は社会に溶け込むことに必死だった(今だってそうかもしれません)と思うんですよね。弱音なんて吐けないし、弱さにつけ込まれたくもないし、理解されるとも思わないから 言いたくもない。
でも今や 手術要らずで性別変更できる よう世の中が変わろうとする中で、逆に 何も苦労してこなかったんだろうとか、楽をしているとか、権利ばかり主張していると ナメられている部分があると思うんですね。そして トランスヘイトに強い関心を持って、当事者に寄り添って闘う方々も現れました。私達 GID当事者は協力者も必要です。
もう強がらないで 何に不便で困っているのか、素直に書いて 理解を求める時期だと思うんです。正しく理解されないことは かえってGID当事者達の首を絞めてしまう と私は考えますのでnoteに起こすことにしました。
そして note に書く理由は もう1つあります。

GID当事者の皆さんへ : やりもせず諦めていませんか

先ほどの 社会生活上不便なことに 例えば「就職活動で不利だ、不便だ」と言う方がいます。
確かに 書類選考で落ちて面接にたどり着けない ほどになると 戸籍上の性別を理由にする気にもなりますが、面接に行き着いて 落ちた場合に、それは本当に 戸籍上の性別が原因だったか よく考えてみてください。
書類上の性別表記の問題であって、先ほど 言いました通り 一見して分かりません。定められた面接時間内で ご自身の魅力を 本当に伝えきれましたか。
たしかに 戸籍上の性別表記を理由に 色々なことが付随して 上手くいかないことが往々にしてあります。特に気持ちの問題が大きいです。こんな自分なんて 上手くいく筈がない、受け入れて貰えないに決まっている。
それでも そう思う気持ちそのものが 色々なことを立ち行かなくさせていると思いませんか。やる前から諦めている、結局自分の気持ちのせいじゃないかと思いませんか。そこに 戸籍上の性別は関係ないと気付きませんか。

私は2020年卒、四大卒で、就職活動時は コロナ前でしたので、 職業体験ができるインターンシップは 現在のようにリモートではなく実際に事務所まで出向きました。不動産•建設業を中心に40社、業界のヒエラルキーを上から下まで網羅するように 計画を立てて取り組みました。選考は15社受け、3社内定で終えました。
当初面接時は 失礼な質問も沢山されました。私は履歴書の性別欄に「女」と隠さず書き、他には何も書かないで 面接に臨みました。気づいた担当者は 私に投げかけますが「異性装の人と性同一性障害の違いを説明して」とか「あなたが健常者と同じように働ける証明をして」とか「同性愛者と何が違うの」とか色々質問されたものです。皆 面接時間は同じなのに そうこうしているうちに 面接は終わり、本来すべきPRをする 機会を与えられず、当然 お祈りメールが届き あまりの徒労に気が狂いそうでした。

しかし 1社目の内定が出たときから 面接担当者から質問される内容が 大幅に変わりました。
質問内容は 周りの人と変わりません。GID系の質問は一切なくなりました。
不思議で不思議で仕方がありませんでした。

2社目。
最終面接にきて 役員に このように質問されました。
「言うだけ意味がないとは 思いますが、私たちの会社 というより業界は 非常に女性の進出率が低く、多様な考え方や 生き方が認められないところがあります。想像を絶するほど、苦しい経験を将来することもあると思います。ただ あなたの自信ある顔を見たら、大丈夫かなと思ったんです。特別な配慮は なかなか難しいのですが それだけの辛さを受け入れられるほどの 覚悟が ありますか。」
もちろんあります、と答えたら 内定が出ました。

3社目では
役員「40社。凄いね。1番良いと思った企業のインターンシップの内容と その企業の良いと思ったところを1分で私にプレゼンしなさい。始め。」

私「(頑張ってプレゼンしながら、次に来る質問を予測)」

役「そうか。ではなぜ その企業に行かない?ウチを受ける必要はないでしょう。」

私「面接は受けて、既に落ちました。縁はなかったんです。加えて その会社の面接を受けて気づいたことがありまして〜(…)」

役「正直な姿勢が良いと思った。不利になると思うだろうに、履歴書に偽りもなかった。営業職は このように誠実であらねばならない。その素質があると思いました。頑張ってください。」

戸籍上の性別の他に、身体的な事情、迷惑をかけることがあるだろうに、そういったことは何も訊かずに内定を出してくれました。私が 自信のある顔をしていた、ただそれだけなのに です。

戸籍上の性別を変更したところで 生物学的性別が変わることはありませんし、ただ日々は過ぎていきます。
だからこそ、もし踏み出せないことが あるのであれば一刻も早く 行動に移しませんか。思ったよりも、行動した 後の将来は明るいです。私はそう信じています。

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