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算数的探究「数と論理Ⅱ」春・夏

ヒロック2年目、2期生が新たに加わったということもあり、今年度からクラスを2展開することにしました。
「数と論理Ⅰ」と「数と論理Ⅱ」。
学年で分けるのではなく、Ⅰは楽しみながら基礎を固めたい子、Ⅱは発展的に応用しながら深めたい子向けといった感じでしょうか。
子どもたちは自分でⅠかⅡを選び、途中で移動することもOKとなっています。
今回のnoteでは、新設された「数と論理Ⅱ」の実践についてご紹介していきます。


1時間目「単位を作るのも単位」

3月からの続きなので、スルッとスタート。
(特に期末試験もないので、年度で単元を無理やり終える必要もないのです)
前回が重さの授業だったので、今回は重さと水の量の関係を学びます。
<前の記事はこちら>
「1kgってどれくらい?」
「牛乳パックの重さなんだ!今日の朝飲んだよ。」
実際に水を入れたものを全員体感。
「え!これがちょうど1Lなの!?1kgが1Lなんて、すごい偶然!」
ここで、1kgは1Lをもとに作られた単位であることを説明。
単位を作るのも単位なんだね。
後半は、お風呂の水の量を想像しました。
水槽に、実際に牛乳パックで水を移し替えながら、何本分かを考える子どもたち。
平均200Lという事実を知り、改めて水の使用量に目が行くとともに、
「てことは200kgもするのかぁ…」
と、早速重さと関連付けて考えられた子もいました。

2時間目「面積を知るのにかけ算って便利」

単位シリーズはまだまだ続きます。
続いてのテーマは「面積」!
今回もヒロック名物、タイムスリップ!
みんなは畑で野菜を育てています。
毎年、洪水が起こるんだったよね?(時間が生まれた授業参照!)
洪水のあとって、どうなっちゃうと思う?
「どこが自分の畑かわからなくなっちゃう!」
「勝手に自分の畑を広くする人いそうw」
そうそう、だから毎回広さを測る必要があったんだって。(諸説あり)
スクールのマット4枚分が1㎡であることを確認し、マットがないスペースも含め、ヒロックが何㎡かをみんなで調べました。
これがなかなか難しい!友達と協力して数える子、かけ算を使う子、地道に足で稼ぐ子…。
出てきた答えはバラバラだけど、近いものも中にはありました。
「面積っていちいち数えるの大変だー!」
ここで、かけ算でも求められることを紹介。
「かけ算って、便利!」
最後に、毎日行ってる砧公園の広さを予想してもらいました。
「数えてたら夜になっちゃうよねw」
「1000㎡くらい?」
答えは…1000000㎡!
これを1k㎡っていうことも補足。
「1k㎡って、1のくせにめっちゃ広いなぁ。。」
実感をともなって単位を考えられたようです。

3時間目「世界は長方形だらけ」

前時の最後に登場したk㎡と㎡の関係を表で確認。
さらに㌃や㌶に関しても表に書き込みました。
聞いたことある子は少数。
「何坪っていう言い方もあるよね!?」
「何ヘーベーなら聞いたことある!」
子どもたちは生活の中で、いろいろな単位を自然に使っていることを実感。
今回は、いろいろな四角形を提示し、グループ分けしました。
すべての辺が同じ長さの四角形を正方形、それ以外のものを長方形と呼ぶことを確認(さらに細かい分類はここでは出さず)。
ヒロックにある「正方形のもの」をみんなで探しました。
「床のマット以外に見つからない!」
「これって正方形かなぁ?」
定規をあてながら、1つ1つ確認していきます。
確認していくうちに、徐々に正方形を見極める目が育っていきます。
「いや、それは微妙に正方形じゃないな。」
と、匠の目利き!
改めて、長方形のものに囲まれて暮らしていることを実感した子どもたちでした。

4時間目「立体は体感するしかない!」

まだまだ単位の旅は続きます。
続いては立体!
2D(平面)と3D(立体)の違いを、絵やアニメで説明するもピンと来ない様子の子どもたち。
最近の動画やゲームも立体的ですからねー。
これはやはり、体感するしかない!
ということで、1㎥の大きさについて説明した上で。
新聞紙を丸めて1m測り、組み合わせて1㎥の空間を作りました!
「何本必要?」
「どうやって作る?」
「これ、ちょっと長すぎない?」
素材から作ることで、大きな気付きが生まれます。
役割分担しつつ、声をかけながら、できた時には思わず「おー」の声。
中に入って、1㎥を体感しました!
面の数、頂点の数を内側からも確認します。
「家みたい!」
ちょうどテーマ学習も「家」。教科横断的につながります。

5時間目「数字の力で無駄を省く」

子どもたちの要望で、ヒロックお泊まり会をすることに。
お泊まり会と言えば料理!
今回は焼肉となりました。ワイルド。
「お米ってどれくらい買えばいいの?」
「そもそも、1杯って何kgなの?」
「お米って1合とか言わない?」
普段食べていても、わからないことはたくさん!
インターネットで調べながら、人数分で計算して、何kg買うかを求めました。
炊き始める時間も、逆算して求めます。
「46分だから、6時半に炊けるようにするには…あれれ?」
時計の計算はなかなか厄介ですよね。
みんなで具体的に時計を使いながら考えました。
野菜や卵、肉についても、スーパーでのラベルの読み方から説明。
身の回りに数字はたくさんあるんだね。
時間もお金も、無駄なく使うには、どれくらい必要かを計算で求めました。
実生活において、算数が有効に使える場面を実体験する。生きた学び!

6時間目「算数で食品ロス問題を解決する」

ヒロックお泊り会は無事終了!
…ですが、ちゃんと振り返ることも大切な学び。
買った量、使った量、食べきれなかった量を確認し、次回につなげることが目標です。
「肉はちょっと多すぎたねー。なんでだろ?」
「ご飯はちょうどよかった!」
最初に立てた計画や計算を見比べながら、そもそもインターネットの情報は適切だったのか?自分たちは一般と同じくらい食べているのか?誤差の理由を探りました。
余った食材から、平均どれくらいの量を食べるか考えて次に生かすことが、食品ロスも減らすことにも繋がります。
算数は世界を救う!
ちなみに余った食材は、シェルパが美味しく調理していただきました。w

7時間目「数で地震対策せよ」

今日のテーマは「震度とマグニチュード」。
数日前に起きた大きな地震を題材に、地震にまつわる数字と単位について探究しました。
身近に起こる出来事は、関心も高まっているので絶好の学びの機会。
教科書通り進めていては、せっかくの機会も逃してしまいますよね。
まずはインターネットで、地震情報をみんなで探します。
分かったことをどんどん出してね、と伝えると、
「震度5強って書いてある!」
「え?こっちは3って書いてあるよ?」
「こっちにはマグニチュード4.4ってあるけど」
「深さは50kmだって!」
多くの数字が出てきます。
次第に、
「じゃあ俺、こっち調べるね!」
と分業していくのも協働的な学びの面白さ。
北緯や東経など、地理的な学びももたらされました。
まとめとして、震度とマグニチュードの違いについて動画で学習。
数値化されることで、危険を予知したり回避したりできることを学びました。

8時間目「距離も速さも予測できる」

今回は、ある子が「どうしても行きたい!」ということで、水のアスレチックについて調べることに。
まずはマップで場所を確認し、最寄駅からの実際の距離を考えます。
ここで縮尺の考え方が登場。
一人一人が、紙に印刷した地図に物差しを当てて長さを測ります。
「7cm!」
「っていうことは…」
計算できる子を中心に、そのプロセスを丁寧に考えていきました。
次に、おおよその時間について。
自分たちがならんで歩く速度は、インターネットで調べても出てきません。
実際に自分たちでならんで歩いてみるしかない。
ストップウォッチを数人が持ち、2.2㎞先の図書館まで実際に歩いてみました。
この距離と時間を参考にして、最寄駅から水のアスレチックまでの時間を求めます。
距離や速さは数値化して、応用できる。
行ったことのない場所でも、正確に考えられる。
「数字って便利だなぁ…」
ある子のつぶやきが、この授業の一番のねらいでもあります。

9時間目「運動会のシミュレーション」

「ヒロックで運動会をやったらおもしろそう!」
そんな一人の願いから始まった運動会プロジェクト。
やりたい種目を挙げたり、そもそも運動会って何?みたいなところから、別の時間でディスカッションを重ねてきました。
初の運動会。
「砧公園でやることは決定として、どこの広場を使う?」
「リレーはやりたいよね。でも、そんな広さとれるの?」
「走りやすさは?そもそも線ってどうやって引く?」
前例もない、大人もリーダーシップをとらないwので、課題山積。
とりあえず、やりながら考えてみない?
簡単な作戦だけ立てて、みんなで実際に公園に行き、青空の下で話し合い。
そしてシミュレーション!そして再度話し合い。
長さや時間、場所など、シミュレーションしてデータをとる。
数字を使うと未来が見えて、大失敗が防げることを体感しました。

10時間目「会場図や道具作りに、数学が隠れてる」

今回も運動会企画。
準備に数字を使うと便利なことを、体験的に学びます。
「50mの半分は?」
「二分の一ってどれくらい?」
みんなで会場図を作っていきます。
これ、普通は全部大人がやってしまうもの。
子どもたちが、計算の有用性を実感する機会を奪ってしまっているのかもしれません。
「玉入れの箱の容積は?」
「新聞丸めると、密度によって大きさが変わるね。」
「パン食い競争の棒は何m?」
「これが四分の一かぁ。」
あらゆるところに、数学が隠れてる。
運動会を作ることで、自然と数や論理について学べます。

11時間目「パン食い競争を数学する」

今回も数字を操って、運動会の準備中。
今回は目玉の「パン食い競争」!
「パン食い競争っていう競技が、昔あったらしいよ…」
いやいや、今もありますがな。
そんな、見たこともない都市伝説のような競技を数学の力で具現化します。
身長+腕が高さになり、紐の長さ+パンが場所になる。
計算して求めたら、早速やってみる!
「うわ!全然とれない!」
「パンが低すぎる!」
シミュレーションには数字がとても有効。
これぞ生きた学び!

そんなこんなで、夏休みに突入しました。
改めてこの「数と論理」の時間で大切にしたいことが明確になってきた2年目。
演算能力や暗記ではなく、数字の魅力や面白さに気付く時間。
「あぁ、数字って便利だなぁ。」
「自分も数字を操る力がほしいなぁ。」
そんな風に思えるための、扉のようなものは全員に見ておいてほしい。
好きな子はどんどん突き詰めていけばいい。
もちろん、その環境はしっかりこちらから提供する。
これからも、子どもたちの身近にある数や論理に気付けるような時間を作っていこうと思います。

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